推しを味方に付けたら最強だって知ってましたか?

●やきいもほくほく●

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番外編(本編の内容とは少し異なります。時系列バラバラです)

④ 美味しいクッキーの作り方(料理長side)

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(泣き腫らした後、手作りクッキーをゾイの元へ届ける前)




次の日、顔が風船のように真っ赤に腫れていた。
頬もそうだが、泣き腫らした目蓋はもっとひどかった。
それに喉も枯れて声が出なかった為、暫くは風邪を引いたと言う事にして、腫れが引くまで部屋に引き篭もっていた。

誰が来ても部屋に入れずに断る様にと、シンシアにお願いした。
だから誰が部屋に来たかは知らないし、知るつもりもない。
もしかしたら誰も部屋に来ていないかもしれない。
 
シンシアも何も言わないでくれた。
涙と共に心につっかえていたモノが取れて、妙にスッキリとした気分だった。


けれどずっと部屋に居ると流石に飽きてくる。
ふと、ゾイに会いたくて堪らなくなった。

シンシアに声を掛ける。


「シンシア、ゾイ様にこの間の御礼をしたいのだけど何が良いかしら」


御礼をしたくても、今の状態では何かを買うことも出来ないだろう。
あの日から父とは一度も顔を合わせていない。
となると、リオノーラの出来る事は限られてくる。


「そうですね……お花やお手紙、お菓子などは如何でしょうか?」

「シンシア、さすがだわ!お花とお菓子なら私でも出来そう」

「へ……?お嬢様、どちらへ」

「厨房を貸してもらって、クッキー作りましょう!」

「お、お嬢様が作るのですか!?」

「勿論!」

「あっ、お嬢様待ってください~!」


シンシアと共に厨房に入ると、料理人達は今までやっていた仕事を止めて、此方に釘付けになっていた。
そこら中から「我儘お嬢様だ」「最悪だ」という声が聞こえてくる。
以前まで料理にケチをつけ、偏食し放題だったリオノーラ。

(最近は残さず食べているし、料理の文句も言っていないのに……やっぱり悪い印象は中々消えないのね)

騒ぎを聞きつけて料理長が奥から出てくる。


「なんの騒ぎだ」

「リオノーラお嬢様が……」

「……ここは、お嬢様がくるところじゃないぞ」


これまた迫力のある大柄の男性が前に立ち塞がる。
シンシアは怯えたように「ひっ…」と声を上げた。
普通の子供が見たら泣き出しそうになるだろうが、普通の子供ではない為、平然と料理長の前に立っていた。


「お忙しいでしょうか?」

「…………」

「わたくし、クッキーが作りたいのです」

「……クッキーだと?」


後ろから「また我儘かよ…」と声が聞こえてくる。
確かに最近、我儘に拍車が掛かったと話題である。

クローゼットのドレスを全て入れ替えた。
高級ブティックに旦那様を連れてって、ドレスをおねだりした。
気に入らない侍女を追い出した……等々、事実ではあるがだいぶ脚色された噂話は出回っているらしい。

それでもリオノーラは否定しなかった。
事実が混じっているので下手に否定もできなかったのだ。
一番厄介なのは真実の後に積み上がっていく悪意のある嘘達だろう。
只、真っ直ぐに料理長を見ていた。


「クッキーを作って、どうするのですか?」

「お世話になった方にプレゼントしたいのです」

「……何故、クッキーを?」

「わたくしは、まだ自由に使えるお金を持っていないので何も買う事は出来ません」

「………」

「その方に、とても感謝をしています。御礼をしたくてもわたくしに出来る事は限られています。だからクッキーを作り、お花を摘んで行こうと思っています。それが今、わたくしに出来る精一杯のことなので」

「……!」


料理長は目を見開いて此方を見ている。
そしてそれを見てハッとする。

(しまったああああ!子供がこんなプレゼンじみた真似をするわけ無いのに!)



「と、どこかの本の主人公が言っていました……とさ」



無理があるだろ……と、みんなの心の声が揃った瞬間だった。
話を逸らそうと、料理の話題を振った。



「いっ、いつも美味しいご飯をありがとうございます!」

「…………」

「わたくしは玉ねぎのスープが一番好きです。あとチョコレートケーキも」

「……!」
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