黄昏の国家

旅里 茂

文字の大きさ
14 / 48
感嘆の時

黄昏の国家14

しおりを挟む
「今この瞬間、照射を行うわ」
まだ衛星は大気圏には突入していない。
このタイミングで…。高沢たちには判断出来ない状況を飲み込んでの発言だろう。
ニュートリノ・レーザーの照準には靄しか見えない。
しかしサキナたちには、判断出来ているようだった。
微妙な操作を行いながら、最終調節を行う。
サキナが「照射!」と叫ぶ。
その瞬間、若干緑掛かった光の線が夜空に光った。
時刻は午前二時半過ぎ。この光景を目撃した人からは警察に何本かの電話が入った。まだ避難していない人が多くいる事に、警察内で困惑が広がっている。
照射から二分弱、経過した。モニターに映し出された極めて荒い映像を見ながら、オーイックスの面々は固唾を飲んでいる。
サキナがまた叫んだ。「次、照射!」距離、およそ十キロメートル離れた第二の
衛星に照射が行われる。
こちらは約三分、照射が行われた。
この時点で二機の衛星が大気圏に突破しつつある。
次に出た言葉は、「迎撃して!」
数十秒後に、日本海に展開するイージス艦二隻に情報が伝達された。
こちらも既に二機の衛星を捉えており、ミサイル発射のタイミングを待っていた。
「アプローチ!ミサイル発射!」
イージス艦からミサイルが夜空を焦がしながら、軌道上に飛んでいく。
昔のイージス艦の迎撃ミサイルとは距離数が恐ろしく違う。
大気圏上にある弾道ミサイルを迎撃する能力を保有しているのだ。
そして、それ程大きくない爆発光と鈍い破裂音が響く。
更にもう一隻のイージス艦から第二波のミサイルが発射される。
モニター上で迎撃出来たことが確認された。
全ての関連施設の人々は、安堵の溜息と歓声が上がった。
全て周囲を展開していた、放射線サーチエセットが濃度を確認する。
放射物は殆ど確認出来ず、僅かにトリチウムが検出されたが、全く人体に影響が出ない範囲のレベルだった。
オーイックスと日本政府のタッグで、困難な局面を絶対的なアプローチで乗り越えた。
軍需コントロール室、室長、多田は、ギークたちにお礼を言ったが、サキナたちは予想範囲内というしれっとした態度でモニターを眺めていた。
防衛ビッグ・マーカーの沢田は、今回の劇的な対応にギークたちに脱帽した。
「リュクスタ、今回の件、ギークたちは見事でした」そう賛辞した。
高沢はその言葉の通り、見事に懸念材料を正常処理したギークたちの超常的ともいえる判断に溜飲が下がった思いだ。
「多田室長、沢田室長、今回は本当にご苦労だった。私は良い部下を持ったよ」
その言葉と同時に、オーイックスがトップレベルの防衛構想をまさに確固たる地盤を構成したことが、全世界を通じて認めることになる。
日本政府から直電が入り、やはり同様の賛辞を贈られ、岩盤な礎を築くこととなった。
只、これらを静観してきた当事者の中国共産党とロシアは、最大級の警戒を伴った行動に出ようとする。
何故ならば、これら核兵器を保有する国にとって、完全無力化が出来る方法が見つかったからだ。
アメリカも例外ではなかった。
迎撃に備えての軍事行動を行っていたが、核ミサイルと同様、核爆発は共わないにしろ核パルスエンジンを搭載した軍事衛星二機を見事に落としたオーイックスに、若干にも脅威を感じていた。
しかし表立っては、引率した日本政府を褒め、オーイックスの行動と判断を大いに称えた。

原子力エンジンを搭載した衛星二基を、迎撃してから一日が経った。
国連では緊急会議を開き、中国政府に対して非難決議の採択を迫ったが、拒否権を発動した為、結局うやむやになる結果となった。
日本政府が事の真相を問い質したが、中国政府は一貫して否定を繰り返した。
只、日本の領土に万が一にも落ちていればと、いう前提でお見舞いの言葉が述べるに留まった。
しかし、これは国家間として非常に侮辱した言葉だった。
嘗て共産圏の大塔して君臨した組織は混乱をきたし、中国民主改革党が日本の意見に賛同し、大いに中国共産党を責めた。
内乱を過去に起こし、勢力としては同等の力を持つ程になった中国民主改革党は、ウイグル自治区、チベット自治区、内モンゴル自治区を見事に開放した。
日本と台湾との繋ぎとして大いに発展し、中国共産党を追い込んではいる。
しかし、長岐にわたり紡いできた、それらが簡単に瓦解する事ではなかったのだ。
核などの兵器は、まだ中国共産党の内にあると考えてよい。
いつ、また行動を起こすかは不明であった。
それでも、過去の悲惨さを呼び起こす力は残ってはいまい。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

処理中です...