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其々の思惑
黄昏の国家15
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アメリカは、今回のニュートリノ・レーザーが核に対して確実に有効と判断し、日本政府とオーイックスにその時のデータを提出するよう迫った。
日本政府はオーイックスにアメリカに提供するよう懇願したが、それを阻んだ。
まず、世界で初のデータで有り、隠密性の強い極めて重要性の高い情報であり、それをやすやすと渡す訳にはいかなかった。
この決定はリュクスタと十二人査問官の決定事項である。
これにより日本政府との関係がぎくしゃくする事となったが、角安が中越総理に面会し、流れを説明した。
しかし、中越総理にもメンツがある。
アメリカは最重要な同盟国である。その中でも強硬派で知られる、メッサー・カイドル第二副国防官が直接来日し、提供を迫った。
外務省に外部公安自署という部署があり、そこに川田吉宗という男がいる。彼が直接に対応に当たる事となった。
メッサーが単刀直入に伝える。
「今回の案件において、我が合衆国も日本の為に働いた。これは称えられるべき事実だ」
川田は少しはにかみ、メッサーの目を凝視して、こう答えた。
「我が日本国は独立しております。メッサー第二副国防官が仰る『日本の為に働いた』という文言は我々を侮辱しております」
歯に衣を着せぬ言動に、メッサーは顔を紅潮させ抗議した。
「わが合衆国を苔にするつもりか?もし、我が方が日本に再び…」
そこまで感情のまま伝えて我に返った。今これ以上反論すれば政治的に困難な状況を生み出す。
川田は続けてこう答えた。「貴国に対しては、一定の情報を共有しておりました。衛星の位置確認と、破壊行程のデータです。ニュートリノ・レーザーについては、我が国としましては最重要案件としまして、データを取り扱っております『ビッグフロート』の責任者に問い合わせておる処ですが、応答がありません。我が国としましては、政府の責任として、問い続けている最中なのですよ」
人を食ったような対応に、メッサー第二副国防官は歯ぎしりをしたが、これ以上の問いは意味がないと判断したのだろう。
駐日大使のブラウン・フォンデに、その後会う事を告げて部屋を出て行った。
功績は間違いなく、ギークたちにあるのだが、川田はそんな『ビッグフロート』面々に対して、恩を売った大意に打ち震えた。
事態はゆっくりと新たな動きを見せながら、外部公安自署の次の一手を濃厚にしていく。
高沢はギークたちに三日間、休暇を与えた。それだけではない。
好きな食べ物も用意させた。
結果において相応しい対価を払ったのだ。勿論金銭的においても…。
日本政府から幾度のニュートリノ・レーザーにおけるデータの提出を再三通知されたが、全てがアメリカに筒抜けになるのは判っている。
幾ら川田のような人物がいたにしろ、殆どが自国の情報を真剣に対応した者が少ない事に嫌気が差しているのは、どの時代も同じなのだろう。
今回の事件で、中国共産党に世界から非難の嵐を受けたが、執行部はどこ吹く風である。
外郭は可成り混乱をきたしていたが、中央部は平然としている。
しかし、中国民主改革党が表に出て来ている通り、共産党の今までの勢いはなくなっており、原子力衛星を操作したのも権限を取り戻すためのパフォーマンスに過ぎないのだろう。
それでも、もし地上に落下していたら、関西地区が広範囲に渡って汚染されることになり、大変な事態になっていた。
この事実をとぼけるのも、中国共産党の形なのだろう。
その事態から一週間が過ぎた。
日本政府は、今回の活躍を補ったオーイックス総裁、高沢を”国家菊紋逸史賞”の授賞式に招くとの連絡を角安から直接連絡を受けとった。
だが、今回の表彰されるべき人物は、ギークの子供たちだ。
しかしながら日本政府はギークの件を了承していない。
取り分け世間で名が挙がった高沢のみを表彰することに、些か不満があった。
そして考えに変えて、表彰を辞退することを角安に伝えた。
その態度に鋭利なものは感じなかったが、政府の命を受けて伝えた角安の顔に泥を塗る形になっていまう。
それでも頑なに高沢は拒絶した。
角安も高沢とは付き合いが長い。それだけに三度説得してダメならばと抜こうとした刃を収める事となったのである。
その後、高沢はオーイックスのビッグ・フロートの更なる建造に力を入れていった。
ビッグ・フロート2建造の構想を建て、場所の選定として、四国は高知県、約百五十キロ沖に設定している。
勿論こちらでも漁業組合や地元の反対があったが、ビッグ・ワンの成功を盾に押し切った面がある。それが今後の日本の防衛を補うに対する形となっていく。
日本政府はオーイックスにアメリカに提供するよう懇願したが、それを阻んだ。
まず、世界で初のデータで有り、隠密性の強い極めて重要性の高い情報であり、それをやすやすと渡す訳にはいかなかった。
この決定はリュクスタと十二人査問官の決定事項である。
これにより日本政府との関係がぎくしゃくする事となったが、角安が中越総理に面会し、流れを説明した。
しかし、中越総理にもメンツがある。
アメリカは最重要な同盟国である。その中でも強硬派で知られる、メッサー・カイドル第二副国防官が直接来日し、提供を迫った。
外務省に外部公安自署という部署があり、そこに川田吉宗という男がいる。彼が直接に対応に当たる事となった。
メッサーが単刀直入に伝える。
「今回の案件において、我が合衆国も日本の為に働いた。これは称えられるべき事実だ」
川田は少しはにかみ、メッサーの目を凝視して、こう答えた。
「我が日本国は独立しております。メッサー第二副国防官が仰る『日本の為に働いた』という文言は我々を侮辱しております」
歯に衣を着せぬ言動に、メッサーは顔を紅潮させ抗議した。
「わが合衆国を苔にするつもりか?もし、我が方が日本に再び…」
そこまで感情のまま伝えて我に返った。今これ以上反論すれば政治的に困難な状況を生み出す。
川田は続けてこう答えた。「貴国に対しては、一定の情報を共有しておりました。衛星の位置確認と、破壊行程のデータです。ニュートリノ・レーザーについては、我が国としましては最重要案件としまして、データを取り扱っております『ビッグフロート』の責任者に問い合わせておる処ですが、応答がありません。我が国としましては、政府の責任として、問い続けている最中なのですよ」
人を食ったような対応に、メッサー第二副国防官は歯ぎしりをしたが、これ以上の問いは意味がないと判断したのだろう。
駐日大使のブラウン・フォンデに、その後会う事を告げて部屋を出て行った。
功績は間違いなく、ギークたちにあるのだが、川田はそんな『ビッグフロート』面々に対して、恩を売った大意に打ち震えた。
事態はゆっくりと新たな動きを見せながら、外部公安自署の次の一手を濃厚にしていく。
高沢はギークたちに三日間、休暇を与えた。それだけではない。
好きな食べ物も用意させた。
結果において相応しい対価を払ったのだ。勿論金銭的においても…。
日本政府から幾度のニュートリノ・レーザーにおけるデータの提出を再三通知されたが、全てがアメリカに筒抜けになるのは判っている。
幾ら川田のような人物がいたにしろ、殆どが自国の情報を真剣に対応した者が少ない事に嫌気が差しているのは、どの時代も同じなのだろう。
今回の事件で、中国共産党に世界から非難の嵐を受けたが、執行部はどこ吹く風である。
外郭は可成り混乱をきたしていたが、中央部は平然としている。
しかし、中国民主改革党が表に出て来ている通り、共産党の今までの勢いはなくなっており、原子力衛星を操作したのも権限を取り戻すためのパフォーマンスに過ぎないのだろう。
それでも、もし地上に落下していたら、関西地区が広範囲に渡って汚染されることになり、大変な事態になっていた。
この事実をとぼけるのも、中国共産党の形なのだろう。
その事態から一週間が過ぎた。
日本政府は、今回の活躍を補ったオーイックス総裁、高沢を”国家菊紋逸史賞”の授賞式に招くとの連絡を角安から直接連絡を受けとった。
だが、今回の表彰されるべき人物は、ギークの子供たちだ。
しかしながら日本政府はギークの件を了承していない。
取り分け世間で名が挙がった高沢のみを表彰することに、些か不満があった。
そして考えに変えて、表彰を辞退することを角安に伝えた。
その態度に鋭利なものは感じなかったが、政府の命を受けて伝えた角安の顔に泥を塗る形になっていまう。
それでも頑なに高沢は拒絶した。
角安も高沢とは付き合いが長い。それだけに三度説得してダメならばと抜こうとした刃を収める事となったのである。
その後、高沢はオーイックスのビッグ・フロートの更なる建造に力を入れていった。
ビッグ・フロート2建造の構想を建て、場所の選定として、四国は高知県、約百五十キロ沖に設定している。
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