黄昏の国家

旅里 茂

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駆け引きの夜

黄昏の国家19

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中国共産党とロシアにビッグ・フロートの情報が一部漏洩した事実も…。
深刻な状況には違いない。

その頃、日本政府、内閣緊急連絡会では角安が川崎達也内閣副総理より連絡を受け、事の真相を明確にするため、オーイックスとの関係を問い正した。
「角安副次官、今回の件で大変な事態に陥りましたな」
角安は少し考えてから、話を切り出した。
「副総理、今回の件ではオーイックスに入り込んだテロリストの仕業です。確かに高沢にも責任があります。しかしながら状況は極めて狡猾です。何年もの歳月をかけて信用を取り付けたのです。これを見破るのは並大抵ではありません」
川崎は少し上目で角安を見下ろしつつ、「例の木本という人物は君の塾生だったと報告書にあったが…。それとは関係ないのかね?」
流石に隠す通すことなど出来ないなと、内心舌打ちをしたが、ここは切り抜けなければならない。
「確かに私の塾生でした。しかし、出席が乏しくいまいち身に入ってなかったようで…。すぐにやめてしまいましたよ」
川崎はそれを聞いて「では、責任の所在は誰が為すべきと考えか?」
角安は自分はもちろん、今後、オーイックスを背負う高沢に及ぶことだけは避けたかった。
しばし、時間を頂くことになった角安は、以前、高沢からの命で角安の事務所に訪れた情報監視部の幹部、韮崎健斗を想起した。
一考した後、角安は自分の残酷さを感じていた。
そのことを川崎に伝えた。
「実はオーイックスの情報監視部の韮崎という人物が、木本の直属の部下でして、彼が常に連絡体制を取っていたのですよ」
まさに角安が取ったのは、人身御供だ。許されるものではない。
しかし、政治の、特に議員にとってはよく使われる手段であった。
直ぐにオーイックスに情報が向けられた。
普通では信じられないぐらいの早さで、韮崎は国会に招致されることとなる。
「リュクスタ!どういうことです?私が何故、国会招致されるんですか?」
この情報が入った時点で、高沢は角安が噛んでいる事に気付いていた。
「韮崎。多分、政治的な判断で何らかの取り組みが行われたに違いない」
この状況に置いて角安の取った行動に、憤りを感じずにはいられなかった。
政治塾での木本が災いを起こす事とは、この事だったのだ。
しかし、それだけで判断を得る事は、殆ど不可能な領域である。
兎に角、韮崎の身柄を国会招致することは、高沢にとって忌避するべき事態だ。
与党からの追及は軽い物だろう。しかし、野党側からは怒涛の行きよいで今回のテロをテロとして追及してくるだろう。
高沢は早急にビッグ・フロート総責任者の名目で、中越総理宛にデジタルノートを送付した。
受領して貰える率は非常に低いが、川崎以上の人物では、総理以外に居ない。
しかも今回の件で、角安が韮崎を盾に取った行動を中越総理が噛んでいれば、万事窮すだ。
何としてでも対応をお願いしなければならない。
角安には、それなりの恩義がある。木本の警告もその通りだった。しかし、韮崎を今回のテロの関連を持つというニュアンスは断ち切らねばならない。
中越総理がデジタルノートを開いたのは、その日の深夜だった.
既読が付くが、返信がこない。やはりダメか。そう思った。
しかし予想を反して川崎から直に連絡を貰った。これには驚かされた。
高沢は今回の件、つまりは角安が提示した内容を反故にする、云わば木本だけの犯行で有った事を伝えた。
角安とは、距離を置く覚悟も持たねばならない。
川崎は直通話を求めてきた。回線が繋がる。「高沢君かね、久しいな。元気そうで何よりだ」
高沢は不審に思った。川崎とは今回、話すのも初めてで会ったことなど、ない。
これには何か意味があるのだろうと推測した。
「はじめまして、川崎副総理。オーイックスを預かっております高沢です」
微妙な空気を感じながらも高沢は川崎がどう出るか、思案している。
まず、次に口を開いたのは川崎だった。
「高沢君、今回の情報漏洩と政府とオーイックスが共有する情報が、選りによって中国共産党とロシアに渡ったのは、痛かったね」
勿論、この責任は高沢にもある。知らぬことでは済まない。
現在、オーイックスでは、どれだけのどんな情報が漏れたのか、それらを虱潰しに捜査を行っている。しかし、全ての情報の部分、切り取られた内容など、バックアッププログラムとの照合に時間を要する。
「誠に忸怩たる思いであります。副総理。中国共産党とロシアの件は、我がオーイックスが責任を持ってして対処致します」
川崎は一瞬、鼻で笑った。高沢にはそう聞こえた。だが、それに憤慨する相手ではない。
これは大きな駆け引きだ。責任の所在をオーイックスが受け持つ。
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