黄昏の国家

旅里 茂

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内なる抗争

黄昏の国家20

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そこで川崎にそれを認めさせて、韮崎の件を手放さす。
難易度は可なりのものだが、成し遂げなければいけない。
「今後の予定に航空部隊を設立させます。これには韮崎の知識が不可欠です。また、現在、日本政府の課題に挙がっているFー7戦闘機の青写真を既に作成しておりますが、国防省の内部で紛糾していると聞いております」
川崎は腹の中で、舌打ちをした。確かに内部争いが起こっている。それは予算と管轄の問題だった。
どうしても利権に走る事は昔からの事だが、川崎の系列が押されているのだ。
高沢はその意味を周知していた。「そこで情報監視に精通している韮崎を派遣したいと考えております。どうでしょうか?」
単純な単語の中に、鍔迫り合いする、そんな鋭い牙を互いに見せつけている。
その程度という意味合いで、川崎は高沢を軽く見ていた。
しかし、国防省の件を出されたことで、眼力のある事を認識した。
これは直ちに修正したい事案である。
慎重に言葉を選ぶ、川崎。「高沢君、君が言う様にFー7の内容はかなり複雑だ。どうだろう?一度、韮崎君には国防省に出向いて貰って、その知識とやらをお披露目して貰えないだろうかね?」
食いついた!高沢は内心ほっとした。しかし、まだ油断はならぬ。
「こちらこそ、是非とも韮崎がブレインとしての活躍をご期待頂きたく」
その内容から川崎は、韮崎を国会招致する件を収めた。
もし、国会招致されていれば、国家反逆罪を適用されかねなかった。
云わば冤罪に当たる事案を国が背負う事となりかねない。それを事前に塞げた事は、大変な重案であった。
直ぐに高沢は韮崎を呼び出した。
「韮崎、という訳だ。国会招致は回避された。その代わりではあるが、日本政府が企画しているFー7の中心的開発の流れを補ってほしい」
韮崎は国会招致がなくなったことにホッとしたようだが、「Fー7の開発への参加ですか?」
重要なシステムの変数的内訳やレーダーの所見には博識だが、韮崎はそれとの引き換えで自分の身が晴れて解放されたことを、悟った。
高沢には礼を言いたいが、現状、その事実上の上司である角安には不言の感情がある。
取り分け自分の身柄が本当に精神的に開放されているのか、複雑な感情が韮崎にはあった。
国防省に出向く日程は、高沢から直に通達されると聞いている。部下も三人同行を許された。
Fー7は日本独自の秘匿技術満載の品物である。その為、米国の関与も一切取り入れない態度を示している。
しかし、米国を始め英国も関心を寄せている。要はその秘匿技術の開示を求めているのだ。
それに従ってしまうと、嘗てのFー2、Fー3戦闘機のような事態を招きかねない。
それでもFー3は、ましな方だった。エンジンとレーダーとの共同開発で、ボディは純国産で製造出来たのだから…。
だが時代は幾ら過ぎても、米国や英国の影は付きまとった。
ここに来てようやく完全なる純国産機の製造にこぎ着けたのだ。
日本政府としては何としてでも、成し遂げたい。
それが悲願達成の項目で有った。
韮崎は来週に設定された、Fー7製造工程開発議会に出向する。
一報、川崎が韮崎への疑心を解いた事から、角安は苦しい立場に置かれていた。
内閣調査会の中で、角安は川崎の直属の新倉武次官補から対応を迫られていた。
「角安副次官、これは話がおかしなことになっておりますね」
無理もない。韮崎が木本の部下という云わば虚偽申請したような形になっている。
これを打開しないと、自分の地位までまずくなる。
高沢がどのように川崎を説き伏せたのかは知る由もなかったが、立場的に川崎ともう一度話の場を設ける必要があった。
只、川崎が角安から話を聞いたとしても、矛盾が生じるのではないか?その心配が頭を過った。
「新倉次官補、今一度、川崎副総理に御目通し願いないでしょうか?」
新倉としては川崎に角安を合わせても、意味がないと判断している。その為、角安の焦りと苛立ちが手に取るように分かる。
新倉は角安にある提案を持ちかけた。賄賂である。
「どうだろう、角安副次官、5で話を付けようではないですか」
川崎の口元が歪んで見える。
角安は一旦その話を持ち帰って、後日、参加人物と場所を指定する事を伝えた。
但し、今後一切この件においては口を紡ぐという約束を電子署名でチェックする旨を伝達した。

高沢は韮崎の件で安堵したが、木本が残した問題の蓄積に正直、頭を抱えていた。
今後のプランを大きく変更を余儀なくする可能性も出てきたからだ。
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