【本編完結】人形と皇子

かずえ

文字の大きさ
40 / 1,325
第二章 人として生きる

22 成人 15

しおりを挟む
「おい。そろそろ目を覚ませ」

 揺さぶられて、目を開けた。いつの間に寝てたっけ? 布団の感触に頬を擦り付ける。気持ちいい。
 うつ伏せにしてもらっていて、背中も痛くなかった。右手と両足には鎖が繋がっていて裸のままだけど、布団を掛けてくれている。

「おいっ、聞こえているか」

 ほっとして、うとうとしかけたら、また揺さぶられた。
 さっきもいた白衣の人だ。忍部しのぶべ博士と、もう一人。

「みず……」

 喉が乾いたので、言ってみる。掠れた声だけど聞こえたようで、二人が顔を見合わせた。

「やっぱり。意志疎通できますよ、博士」
「これは興味深いな」

 水、くれないのかー。
 ま、布団だから寝れる。

「寝るな。熱は下がっているだろう」

 うるさい人だな、と思っていたら、ストローを口に付けてくれた。水が美味しい。

「名前はあるのか」

 ベッドの横に椅子を置いて、話し始めた。あるよ。言わないけど。

「年齢は?」

 知らん。

「喋れるだろう。知らん顔するな」

 いやいや、年齢は本当に知らないんだって。
 ……何だか常陸丸ひたちまるとのやり取りと似てる。懐かしいな。

「何を笑っているんだ」

 苛々した声。
 ごめん。
 楽しいことを思い出してた。『帰りたい』

「博士。どうします?」
「焦るな、睦峯むつみね。まだ今、挨拶の段階だろう」
「しかし」
「とりあえず、血液の採取と皮膚を少し貰おう。それを調べながら、話しかけてみたらどうだ?」

 カチャカチャと、注射器やメスが用意されていく。ぼんやり見てたら、切実な問題が。

「トイレ」

 大きめの声を出してみる。鎖を外さないといけないとしたら、時間がかかる。そして薬打たれてるから、歩けない。間に合うかな。

「え? え?」

 睦峯むつみねが驚いた顔をしている。

「トイレ!」
「あ、ああ。トイレね」

 大慌てで手枷と足枷を外してくれた。早く、早く。足に力が全く入らないので、横抱きにしてトイレに運んでくれる。
 ま、間に合った……。

「終わった」

 と言うとトイレの扉の向こうから、あー、って叫び声が。何、なに?

「尿も採取すれば良かった」

 ああ、そう。
 睦峯むつみねは、また横抱きで運んでくれながら、軽いな、お前、と呟いた。

「あ、もしかして」
「今度はなんだ」

 忍部しのぶべ博士が採血の準備をしながら聞いた。

「お昼ご飯がいるんじゃないですか」
「……確かに」
「おにぎり一つ残ってましたよね。食べるかな」

 俺をベッドにそっと下ろしてうつ伏せにし、睦峯が出ていく。賑やかだな。
 忍部博士は棚をあさって見つけた、病人用のワンピースみたいな服を着せてくれた。
 部屋の隅には赤虎せきとらが残していった軍人二人が、怖い顔をしてずっと銃を構えていたけれど、忍部博士と睦峯は、手枷足枷をもう一度俺に付ける気は無さそうだった。

 
しおりを挟む
感想 2,500

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *不定期連載です。

嫌われ者の長男

りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

そばかす糸目はのんびりしたい

楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。 母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。 ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。 ユージンは、のんびりするのが好きだった。 いつでも、のんびりしたいと思っている。 でも何故か忙しい。 ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。 いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。 果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。 懐かれ体質が好きな方向けです。

【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。 BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑) 本編完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 きーちゃんと皆の動画をつくりました! もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。 インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら! 本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

処理中です...