【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第二章 人として生きる

46 成人 27

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 青葉あおばさんは次の日もやって来た。

「母上という呼び名は、主に自分を生んでくれた女の人に使う呼び名です」

 机の前に座らされて、説明が始まる。

「生んでくれた?」
「赤ちゃんが生まれるのは、知ってる?」

 知ってる。昨日読んだ絵本にあったよ。
 俺は喜んでそれを見せる。桃から赤ちゃんが出てくるのだ。

「母上!」

 桃を指差して言うと、起き上がれるようになってベッドから覗きこんでいた力丸りきまる青葉あおばさんも頭を抱えた。

「赤ちゃん生まれとる……」
「いや、女の人って言ったはず……」

 このお話に出てくる団子が食べたくて広末ひろすえにお願いに行ったんだよねー。だって、見ただけで食べたくなって、くださいってお願いしちゃうくらい美味しいものなんでしょ? 食べたら仲間になっちゃうくらい美味しいものなんでしょ? もう、物語はどうでも良くなって、団子しか頭に残らなかった。

「団子なあ、作れるよ、作れるんだけど……」

 おおー、さすが広末ひろすえ。絵本に出てくるような美味しいものも作れるのか。わくわくしてたら、

「なる坊、食えねえだろ……」

 って言われた。え? 硬いの?

「この前、大福を喉に詰まらせたって聞いたぞ。団子はあれに似てる」

 もちもちしてるやつね。あれね。あれか……。
 すごく落ち込んだけど、広末ひろすえは食べられるように考えてみるって約束してくれた。
 その団子の話に赤ちゃんが出てきてたのを覚えていたのだ。桃が母上ね。

「桃は母上とは呼ばないです。この場合は、育ててくれたおばあさんが母上」

 おばあさんが母上。

「ん? それもおかしいな。そうなるとおばあさんの説明が難しくなるのか。力丸りきまる、何か他に赤ちゃんの生まれる絵本は無いかい?」
「駄目だ、母上。こっちは竹から生まれてる」
「桃と竹とわたしが母上……」

 二人はうんうん唸った後、この話はまた今度にしよう、と言った。俺は、いつでもいいです。
 じゃあ、字の練習でもしようか、と青葉さんが鉛筆を出す。俺は、読めるけど書けない。指令書が読めないと困るから読み方は習うんだよね。書く必要はないので、書いたこと無かったなあ。まずは名前から、と教えてもらっていると、ノックもなく扉が開いた。

「よお、力丸。俺が留守の間に成人なるひとを危険な目に合わせたらしいな?」
緋色ひいろ、おかえり」

 嬉しくて立ち上がった俺とは逆に力丸が真っ青になった。

「そういえば魔王にまだ怒られてなかった……」
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