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第二章 人として生きる
67 緋色 35
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「誕生日は、生まれた日だ。この世に出てきて生き始めた記念すべき日だな。毎年その日に歳を一つずつ重ねていくんだ。一歳、二歳ってな」
「生まれた日は、知らない」
「いつにするかな。今日でいいか? 今日が誕生日」
「今日? 今日、お団子パーティーするの?」
「お団子パーティー?」
「広末が誕生日にしてくれるって」
それは、流石に準備が間に合わないな。
「あー、それじゃもう少し後にしよう。さすがの広末も今日は無理だ。プレゼントも準備してやるよ」
「プレゼントって何?」
「贈り物」
「贈り物? 何で贈り物するの?」
「目出度いからだろ?」
「何でめでたいの?」
「……」
青葉、助けてくれ。
困り果てて青葉の方を向くと、横を向いて笑いを堪えている。
「後は青葉に教えてもらえ。勉強の時間じゃないのか?」
「今日はしない」
「え?」
俺の膝の上でこちらを向いていた成人は、ぎゅう、と抱きつきながら青葉から殊更に顔を背ける。
「勉強、好きだろ?」
「今日はしないの」
青葉が堪えきれなくなったようだ。ふふっ、ふふふっ、と笑い声がこぼれた。
「これは、どうしたことでしょう、殿下」
くすくす笑いながら青葉が言う。
「知恵熱だったみたいだな」
「ちえねつって何?」
「……。成人、青葉と勉強してこい」
成人は首をふるふる横に振った。
「なるちゃん、青葉と遊びましょう。それならいい?」
遊ぶと聞いて、少し迷う素振りを見せている。
「殿下と斎さまはお仕事中ですから、私たちは違うお部屋で楽しいことをしましょうか」
「楽しいこと?」
「皆の誕生日を教えてもらって、書いてみる?」
「なんで?」
突然、轟音が響いた。屋敷がぐらぐらと揺れて、直後に爆発音がする。
成人を抱いたまま立ち上がり、青葉と斎を見た。二人も素早く動く。窓から外へ。
屋敷に戦闘機が突っ込んでいた。1人乗りの戦闘機は、爆弾も積めない偵察用の小さなものである。妨害電波で簡単に墜ちるので、開発されたが使われなかった飛行機。
今回の戦争が長引いたのは、空からの攻撃ができなかったことも大きかった。
それが屋敷に突き刺さっている。
何だ、こりゃ。
素早く屋敷から離れながら周囲を見回す。
常陸丸は乙羽を連れて、利胤は生松と泊まっていた白衣の二人も連れて、広末は斑鹿乃と吉野を連れて屋敷から出ている。
「全員、いるか! 車は出せそうか。」
「います。無理です」
常陸丸が答えた。
「では、少しでも離れるか」
小さな爆発音が戦闘機からしているので、乗組員が手榴弾でも投げているのか、自爆用の爆弾を体に付けていたのかもしれない。すぐに屋敷に火がつきそうだった。
誰も、戦闘機の真下に居なくて良かった……。
「生まれた日は、知らない」
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