【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第三章 幸せの行方

28 成人 51

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 自分で動けるようになった。頭から包帯が取れたけど、剃った髪の毛がまだあまり生えてこないので、赤い編み帽子をかぶって、部屋から出る。
 階段の途中で座り込んで動けなくなった。ちょっと休憩のつもりだったんだけど。階段というのは、登るより降りる方が難しいし、疲れるよね。そして、この家は広すぎて困る。
 そのままぼんやりと、仕事をしている人達を見ていた。皆、足音を立てずに動く。無駄な動きが無い。男の人も女の人もきっと、武術の達人ばかりだ。強い人ばっかり。護衛とか兵士とか警備とかの仕事をするような動きの人々が、せっせと掃除中。……楽しそうだけど。
 部屋の前から付いてきてくれている護衛の人が、俺に声を掛けようか迷っているのも気配で分かる。どうしようかな。

「お手伝いは、いりますか?」

 いつの間にか、隣に人がいた。確かに、疲れてぼんやりとしていたけれど、この位置まで俺が気付かないなんて。

「強い」

 そう言って、じっと見てみる。
 あ。
 この家に帰って来た日に、何かうるさい女の人の護衛を一人、吹っ飛ばした人だね。速い、のもあるけど、気配とかそういうものが無いから、気付かないうちにやられちゃうんだよね。知らん顔で元の位置に戻ってたし。
 暗殺、とか向いてると思うよ。

「強い……ですか?」
「うん。強いね」
「……ありがとうございます。一ノ瀬いちのせ荘重むらしげと申します。成人なるひとさま、お手伝いはいりますか?」
「うん」

 荘重むらしげは、少し嬉しそうに笑った。

「素直に言って頂いてありがとうございます。荘重むらしげ、またはじいやとお呼びください」
「じいや?」

 じいじと似ててややこしくない? そして、じいじより若いと思うんだけど。

「はい」

 じいやは嬉しげに返事して、軽々と俺を横抱きで抱き上げた。ありがたくもたれかかる。
 
「どちらまで?」

 涼しい顔で階段を降りながら尋ねてくる。重くないのかな?

さいのとこ」
「畏まりました」
「重くない?」
「軽すぎて心配でございます。じいやが重いと困るくらいまで大きくなってくださいませ」

 うーん。最近、頑張って食べてるんだけど。力丸みたいにいっぱい食べてみたいなあ。

「ずっといる?」
「はい?」
「俺が大きくなるまで、待ってる?」

 すぐには大きくなれそうにないから、時間かかるけど、いいかな?
 ずっと優しい笑顔を作っていたじいやは、吃驚びっくりした顔をして俺を見てから、にっこりと笑った。

「じいやが死ぬまでに、きっと大きくなってくださいませ」

 それなら、いけそう。
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