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第三章 幸せの行方
29 成人 52
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じいやに部屋の前で下ろしてもらった。足に力が上手く入らないけど、自分で歩いて斎の部屋に入りたかった。じいやは、周りに分かりにくいように歩くのを手伝ってくれる。
「斎、おかえり」
「成人……」
斎は、俺が扉からベッドの横までゆっくり歩くのを、寝た姿勢のまま黙って見ていた。ベッドの横に着いたら、俺の名前を呼んで目に涙を浮かべた。
どこか辛いのかな?
部屋にいた睦峯が、背もたれのある椅子を持ってきた。
「成人、座るか?」
俺は首を横に振る。座るともう、立てそうにない。斎の顔をよく見たいし。
「頭、痛い?」
少し泣いている斎に声をかける。頭の帽子は吉野手作りのお揃いで、俺のは赤色、斎のは濃い青色だった。俺が、赤色がいいって選んだ。緋色の服とお揃いになるから。斎は、青が好き?
斎は、そっと頭を横に振る。
「ただいま、成人。もうどこも痛くないです。成人は?」
「元気」
斎は、とても嬉しそうに笑った。目の端から、涙がぽろりと零れた。
「悲しい?」
「人は、嬉しくても泣くのです」
へえ! 知らなかった。
「嬉しい?」
「成人が元気で、とても嬉しい」
「うん。元気」
今はちょっと、立つ姿勢に疲れてきてるんだけど。ベッドに右手をついてもたれてみる。
「満足です。成人が元気になれた。私の生きた意味は、ここにありました」
斎は、ふんわりと笑って目を閉じてしまう。
「夜ご飯、一緒に食べようね」
と言うと、びっくりしたようにまた目を開けた。
「みんなで食べるから」
「成人も?」
「うん。いっぱい食べてる」
「というほどでもない」
ずっと黙って横にいた睦峯が口を挟む。
「黄色いのは美味しいから」
「なんだよ、それ」
「みんなで食べると美味しいから」
そうですか、と言って斎はまた目を閉じた。
疲れたのかな。
俺も、疲れた。
「またね」
離れて待ってたのに、いつの間にか側に来ていたじいやに支えてもらって、部屋を出る。
部屋を出るとすぐに、じいやが抱き上げてくれた。疲れてたから、ありがたくもたれかかる。
斎は、あまり元気じゃなかった。早く元気になるといいな。
揺れの少ない快適なじいやの腕の中で、そんなことを思った。
斎は、夜ご飯を食べに来なかった。
「斎、おかえり」
「成人……」
斎は、俺が扉からベッドの横までゆっくり歩くのを、寝た姿勢のまま黙って見ていた。ベッドの横に着いたら、俺の名前を呼んで目に涙を浮かべた。
どこか辛いのかな?
部屋にいた睦峯が、背もたれのある椅子を持ってきた。
「成人、座るか?」
俺は首を横に振る。座るともう、立てそうにない。斎の顔をよく見たいし。
「頭、痛い?」
少し泣いている斎に声をかける。頭の帽子は吉野手作りのお揃いで、俺のは赤色、斎のは濃い青色だった。俺が、赤色がいいって選んだ。緋色の服とお揃いになるから。斎は、青が好き?
斎は、そっと頭を横に振る。
「ただいま、成人。もうどこも痛くないです。成人は?」
「元気」
斎は、とても嬉しそうに笑った。目の端から、涙がぽろりと零れた。
「悲しい?」
「人は、嬉しくても泣くのです」
へえ! 知らなかった。
「嬉しい?」
「成人が元気で、とても嬉しい」
「うん。元気」
今はちょっと、立つ姿勢に疲れてきてるんだけど。ベッドに右手をついてもたれてみる。
「満足です。成人が元気になれた。私の生きた意味は、ここにありました」
斎は、ふんわりと笑って目を閉じてしまう。
「夜ご飯、一緒に食べようね」
と言うと、びっくりしたようにまた目を開けた。
「みんなで食べるから」
「成人も?」
「うん。いっぱい食べてる」
「というほどでもない」
ずっと黙って横にいた睦峯が口を挟む。
「黄色いのは美味しいから」
「なんだよ、それ」
「みんなで食べると美味しいから」
そうですか、と言って斎はまた目を閉じた。
疲れたのかな。
俺も、疲れた。
「またね」
離れて待ってたのに、いつの間にか側に来ていたじいやに支えてもらって、部屋を出る。
部屋を出るとすぐに、じいやが抱き上げてくれた。疲れてたから、ありがたくもたれかかる。
斎は、あまり元気じゃなかった。早く元気になるといいな。
揺れの少ない快適なじいやの腕の中で、そんなことを思った。
斎は、夜ご飯を食べに来なかった。
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