【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第三章 幸せの行方

70 広末 4

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 やっと成人なるひとが帰ってきた。おやつの時間に不在だったのが気になって、ずっと帰りを待っていたのだ。
 食べていないなら、また今日の食事量が少なくなってしまうし、食べてきたなら、何を食べたのかチェックしないと、腹を壊してもいけない。夜ご飯が入る程度ですんでいるのかも調べないと。
 荘重むらしげさまがミックスジュースを取りに来たので、それは飲んでいるはず。城の厨房の食べ物を、俺は信用していない。

「なる坊、おかえり。」

 すぐに捕まえて、厨房に引きずり込んだ。夕食の準備は、もう少し後でも間に合うだろう。椅子に座らせて、冷たい水を出す。
 歩いて帰ってきた成人なるひとは、勢いよくそれを飲んだ。

「あれ?そういえば一人か?殿下は?」

 一緒に行った筈なのに、夕方に一人で帰ってくるなんておかしいと思い、聞いてみると、くつくつと笑い出す。

「あのね、朱実あけみ殿下がね、父さまが休憩し過ぎだって怒って、部屋に迎えに来て、俺たちがアイスクリームを四人で食べてたのが見つかって、また怒って。」

 ふふふふふ、と笑っている。言ってることはよく分からないが、元気そうだな。機嫌も良い。

「それで、お仕置きだーとか言って、緋色ひいろも連れて行っちゃった。だからね、」
「ちょっと待て。」
「ん?」
「何を食べたって?」
「アイスクリーム。」
「あいすくりーむ……だって?」
「うん。あのねえ、美味しくて美味しくて、美味しすぎな味だった。」
「…………。」

 待て待て待て。あいすくりーむ、だと?二条の屋敷に居たときに、聞いたことがある、あれか?お城の晩餐会でしか出ない、幻のデザートか?
 製法はもちろん、どんなものかも大して伝わってこないんだよな。お城でしか食べられない、持ち出そうとしても不可能、食べた人も、美味しかったとしか言わないっていう、あの?

「あ、あいすくりーむは、ど、どんな色だった?」

 俺は震える声で尋ねた。

「白くて、ほんのちょっとだけ黄色い。」
「お前も、食べられたってことは、柔らかいのか。プ、プリンみたい、とか?」
「プリンより固いけど、お口に入れると、とろとろになる。すごく冷たいのが、溶ける。」
「と、溶ける?プリンより固いのに?冷たいのは、どんくらい冷たい?」
「氷くらい。」
「……!!」
 
 あいすくりーむは、氷菓子なのか!だから、持ち出し不可能なんだ!こっそり持って帰ろうとしても、溶けてしまうんだ!
 すごい、すごいぞ。そうか。凍らせて、口で溶ける。なるほど!

「あ、味は、甘いのか。好きだったんだよな。」
「すごく好き。一番好き。」

 成人なるひとが、うっとりと言う。成人が好きな味。濃すぎない甘いものだな。冷たいから、濃いく感じないのかもな。
 ああ、作ってみたい。
 頭のなかで、あいすくりーむを想像して、作り方を模索していると、肩をとんとんと叩かれた。
 自分の考えに浸りすぎてたので、びくり、と肩を震わせてしまう。

「ひろさん。そろそろ夕飯を作らないと、間に合いませんよ。」

 斑鹿乃むらかの、あいすくりーむから、呼び戻してくれて助かったよ。
 
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