【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第三章 幸せの行方

69 成人 71

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 食べていいのかな?と緋色ひいろを見てるうちに、雫石しずくさんがスプーンですくって俺の口に入れてくれた。
 冷たい!
 きゅっと口を閉じたら、甘いのがとろとろと溶けた。
 ひんやりして、ほんのり甘くてとろとろ。
 美味しい!美味しい!これ、美味しい!
 とろとろして口の中にあるのが、ぬるくなってきても、ごっくんするのがもったいなかった。
 ずっと口の中に持っていたい!

「なるひとちゃん。アイスクリーム、美味しい?」

 雫石しずくさんに聞かれて、首を縦にぶんぶん振る。
 美味しいです。今、一位です。
 口が開けなくて言えないけど、美味しいです。

「そう。それは、良かった。」

 そう言って、雫石しずくさんは俺の手にスプーンを握らせてくれる。

「早く食べないと、溶けて無くなっちゃうからね。」

 いつまでも、ごっくんしてないのを気付いたのか、雫石しずくさんは、笑ってそんなことを言った。氷とおんなじなの?溶けちゃうの?
 それは、いけない。こんな美味しいもの、無くなっちゃったら大変。
 俺は慌てて、ごっくんする。ああ、美味しい。
 自分でスプーンですくってみた。ほんとだ。溶けてきてる。
 自分で口に入れる。ああ、冷たい。冷たくて美味しい。これは、神様の食べ物に違いない。俺が食べてていいのかな?
 ほんとはゆっくり食べたいけど、溶けてしまうのは困るのでさっきよりは早めに、ごっくんした。
 雫石しずくさんのお部屋は、すごい!お布団は最高に寝心地好いし、金魚がいるし、アイスクリームがある。
 夢中になっていたら、緋色ひいろがアイスクリームを持って立ち上がって、扉の向こうへ出ていった。

緋色ひいろさんは、あまり甘いものは召し上がらないから、常陸丸ひたちまるさんにあげるのね。アイスクリームは、ここでしか食べられないのよ。お城の料理人の秘伝なの。大切なお客様が来たら出してあげたりする、内緒のお菓子なのよ。」

 そんなすごいものを、俺が食べて良かったのかな。スプーンをすくう手が止まると、雫石しずくさんの手が添えられて、また口に美味しいのが広がった。

「そんなすごいものが、うちはいつでも食べられちゃう。いいでしょ?なるひとちゃんも、うちの子だから食べていいのよ。」

 うちの子?
 首を傾げていると、赤石あかしさんが俺の頭を撫でた。

「そんなに美味しかったのなら、父さまのもあげよう。ほら、溶けないうちにたくさん食べて。」

 差し出されたアイスクリームの器。半分残って、とろりと溶けかけている。
 びっくりとしていたら、空の器を持って戻ってきた緋色ひいろが、赤石あかしさんに器を返した。

「誰が父さまだ、誰が。あと、成人なるひとは、腹が弱いから食べ物はたくさん渡したら駄目だからな。気をつけてくれよ、冷たいものは、特に。」

 少し残念。俺は、自分の分の残りを食べながら、緋色ひいろを見る。食べ物をたくさん渡したら駄目って、俺、金魚と一緒……?

「旨いか?」

 うん。
 優しく笑った緋色ひいろに頷くと、雫石しずくさんと赤石あかしさんが、びっくりした顔で緋色ひいろを見ていた。
 
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