【本編完結】人形と皇子

かずえ

文字の大きさ
200 / 1,325
こぼれ話

ただいま  成人

しおりを挟む
 お宿では、朝もお風呂に入って、夜もお風呂に入って。外のお風呂は、息がしやすくて熱すぎなくて好き。ここの茶碗蒸しは、毎日食べても美味しい。
 でも。
 そろそろ広末ひろすえのご飯が食べたくなってきた。
 かばを見たら、帰ろう。
 そしてついに俺は、起きているかばを間近で見ることができた。大きな口を開けて餌を待っている。俺の手にあるかばのご飯は、そんなに大きくない。ぽい、と口に入れてやっても、口が閉じない。もしかして、餌が小さすぎて気付いてないんじゃない?口が閉じないので、俺の横にいた緋色ひいろも餌をもらって口に投げる。ばくん、と閉じた。
 おおー。ちょっと怖かった。俺の体の半分くらい入ってしまいそうだよね。乙羽おとわ、怖くなかったのかなあ。
 帰るまでに余った時間は、ぞうの所にいた。
 また車で移動して、夕方にお家に着いた。

「ただいまー。」
「おかえりなさいませ。」

 入り口付近で洗濯物を抱えた女の人が、頭を下げて答えてくれた。

水瀬みなせ、ただいま。」

 俺が言うと水瀬みなせはにっこり笑った。もう、ここで仕事をしている皆の名前を知っている。
 ただいまって言って、おかえりって言ってもらうのって、いいよね。どこに行ってても帰ってこれる場所。我が家が一番って、この前赤璃あかりさまが言ってた。確かに、そうかも。
 会う人会う人に、ただいまって言って、厨房にも一人で挨拶に行った。

「おう、おかえり。ちゃんと食ってきたか。」

 広末ひろすえが俺の頬をむにむにしながら聞く。食べたよー、すごくいっぱい食べた。

「宿はどんなご飯だった?何が美味しかった?」

 広末ひろすえは、色んなご飯の話を聞くのが好きだよね。

「すき焼き。すき焼き作って。」
「こりゃまた、豪勢な飯を食ってきたなあ。肉も食えたのか。」
「お肉、おいしー。」
「ってことは、かなりいい肉だな。良かったなあ。今度作ってやるよ。」
「うん。」
「他には?」

 俺は、厨房に座り込んで広末ひろすえとお話する。
 夜ご飯は、本当に色々出てきたからね。それで、美味しかったし、いっぱい食べたからね。
 大盛り上がりで話していたら、休憩してていなかった村次むらつぐが厨房に帰ってきた。

村次むらつぐ、ただいま。」
「おかえり。」

 ぼそっと返事をしてくれる。

「お土産、あるからね。」
「俺に?」
「うん。」
「どこ行ってたん?」
「動物園。」

 ぶはっと村次むらつぐが笑う。

「餓鬼かよ。」
「行ったことある?」
「皆行くだろ?遠足で。」
「ふーん。何が好き?」
「何って?」
「俺は、ぞうが好き。」
「何で?」
「なんか、好きだった。」
「強い方がいいだろ。やっぱ虎じゃね?」
「とら?」
「いなかったか?俺が遠足で行ったときはいたぞ。」

 うーん。いなかったような気がする。一応全部回った筈なんだよなあ。

「今回は、いなかったのかもなあ。」

 俺たちの話を、何か作業を始めながら聞いていた広末ひろすえが言った。

「また行ってきたらいいさ。飯が食えるのなら、どこでもお出かけして、そして帰ってこい。」

 そう。
 そうだね。
 いつでも行って、そして帰ってこよう。
しおりを挟む
感想 2,500

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *不定期連載です。

嫌われ者の長男

りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

そばかす糸目はのんびりしたい

楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。 母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。 ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。 ユージンは、のんびりするのが好きだった。 いつでも、のんびりしたいと思っている。 でも何故か忙しい。 ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。 いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。 果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。 懐かれ体質が好きな方向けです。

【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。 BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑) 本編完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 きーちゃんと皆の動画をつくりました! もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。 インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら! 本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

処理中です...