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第四章 西からの迷い人
30 洗濯係は訴える 成人
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「限界です。」
「ああ、うん。」
「無理です。」
「ああ。」
「私は本気で言ってます。」
水瀬が真剣な顔で訴えた。緋色がのらりくらりと返事をする。
「聞いてる。」
「なら行動してください。今すぐ!」
「いや、でもなあ。」
「では私に買いにいけと?」
「うーん。」
「分かりました。ええ、分かりましたとも。行きましょう。行きますよ。大量に買ってきて差し上げます。」
「いや、待て。今考えてる。」
「私が壱臣さんと半助さんのパンツを買ってくればよろしいんですね?ええ、ええ、分かりました。サイズを尋ねて参りますとも。」
「落ち着け。行く。自分たちで買いに行かせるから。」
ふー、ふー、と荒い息を吐く小柄な水瀬。主に離宮の皆の洗濯を担当する彼女は、結構前から訴えていた。壱臣と半助の服の状態が酷すぎる、と。
「洗濯機で回したら生地が薄すぎて破れたのですよ。その後からお二人の服は手洗いしておりましたが、もう無理です。支給の制服で普段の服装は何とかなるとして、下着は支給が無いでしょう。休みの日も支給の制服しか着ておられないから、少しでも天気が悪いともう着る服が無い。そうすると、あの方たち、洗濯に出さないで裏返して着るんです。料理する時は清潔でないと駄目だと言ったら、裸に白衣だけ身に付けて仕事して風邪引いたんですよ。」
半助は、病院では病人用の服を着ていた。俺もよく着たやつ。手当てしやすくて脱いだり着たりしやすい、ズボンもないあれ。めくるだけでトイレできるから、片手の俺たちに便利なやつ。
でも、退院して離宮に来たから服がいる。持ち物はほとんど無かったから、離宮の使用人の制服を渡したんだけど、それしかなくてずっとそれを着てる。壱臣もそんな感じ。下着は支給じゃないから、もう洗えないくらいになっちゃったんだって。破れてパンツじゃなくなった、らしい。
もう働いて二ヶ月は経つから壱臣のお給料もあるんだけど、一度も外に出ていない。
「分かった、買い物に行こう。下着と普段着だな。」
「今日は壱臣さんはお休みです。今すぐ、行ってください。」
「お、おお。」
「今すぐ、ですよ。」
「分かった、分かった。」
ふー、と一度深呼吸した水瀬が真顔で言った。
「もう無事なパンツはありません。」
「ああ、うん。」
「無理です。」
「ああ。」
「私は本気で言ってます。」
水瀬が真剣な顔で訴えた。緋色がのらりくらりと返事をする。
「聞いてる。」
「なら行動してください。今すぐ!」
「いや、でもなあ。」
「では私に買いにいけと?」
「うーん。」
「分かりました。ええ、分かりましたとも。行きましょう。行きますよ。大量に買ってきて差し上げます。」
「いや、待て。今考えてる。」
「私が壱臣さんと半助さんのパンツを買ってくればよろしいんですね?ええ、ええ、分かりました。サイズを尋ねて参りますとも。」
「落ち着け。行く。自分たちで買いに行かせるから。」
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「今日は壱臣さんはお休みです。今すぐ、行ってください。」
「お、おお。」
「今すぐ、ですよ。」
「分かった、分かった。」
ふー、と一度深呼吸した水瀬が真顔で言った。
「もう無事なパンツはありません。」
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