【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第四章 西からの迷い人

44 九鬼を継ぐもの 4  一二三

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 離宮の方へ歩けば、人影はどんどん無くなっていった。

「お主、私たちを謀ろうとしておるんやないか?」

 母が甲高い声を上げる。

「ああ、そう言えば自己紹介をしておりませんでしたね。」

 足を止めて振り返った力丸りきまるが、礼儀正しく頭を下げた。夕暮れの空が、赤く染まっている。

「皇太子殿下の近衛隊に所属しております。泉門院せんもんいん力丸りきまると申します。」
「皇太子殿下の、近衛……。」

 よく見れば、軍服の縁取りに赤い色が使われ、首もとには皇太子である朱実あけみ殿下のお印であろうバッジが付けられている。
 私と同年代に見える兵士が、思っていたより身分の高い者であったために、母は口をつぐんだ。

「離宮を住まいとしており、仕事を終えて帰る所ですのでご安心ください。何の意図もごさいません。行く場所が同じだったので、ご案内しております。」

 そうして、人気ひとけの少ない離宮に着いた。扉の前に護衛もいない。皇城のように、受付のような使用人もいない。

「ただいまー。」

 本当に帰ってきただけの様子で力丸りきまるが扉を開ける。

「お客様をお連れしたぞ。」
「はーい。」

 上等そうな使用人服を着た小柄な女性が出てきた。その美しさに息を呑む。

「ようこそいらっしゃいました。一二三ひふみさまとお連れ様でいらっしゃいますね。どうぞ。」

 にこにこと笑って案内され、頭を軽く下げることしかできなかった。母も大人しく付いてくる。後ろから護衛として連れてきた二人も入れてもらっていた。特に武器を取り上げられることも無かったようだ。

「そのように素敵なお召し物で来ていただくような場所ではありませんのよ。気楽な服装で、などと曖昧なことを言わず、普段着でとお書きすればよろしかったわね。」
「いえ。皇族からの招待にそのような訳には……。」

 珍しく母からの横やりが入らないため、返事をする。
 一階の廊下を進むと、賑やかな声が聞こえてきた。

「うわあ、おんなじ顔だ。常陸丸ひたちまる力丸りきまるよりおんなじだ。」

 少し掠れた高めの男の子の声。

「双子ですからねえ。」
「双子ってなに?」
「同じ腹から同じ日に生まれた二人兄弟ですよ。」
「ええ!二人で入ってるの?お腹に?」
「そうですよ。生まれる前から一緒におるんです。」
「へええ。」

 聞いたことのある西の訛りの声が答えている。
 双子。誰と誰が?
 いや、私はこの声を知っている。

「でも、弐角にかくは筋肉むきむきー。強い。」
「お、分かります?鍛えとりますよー。」
壱臣いちおみは弱い。」
成人なるひとくん、ひどいなあ。ほんまやけど。」

 楽しそうな会話は、やはり弐角にかくと、そしてよく似た声の壱臣いちおみであるらしい。
 思わず足を止めると、母も足を止めて真っ青な顔をしていた。

「今日はもう一人お客様がいらっしゃるんです。賑やかですみません。もう、本当に普通に食事を共に摂るだけですからお気楽になさって。どうぞ。」

 にこやかな案内の女性に促されても私たちはしばらく動くことができなかった。
 

 



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