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第四章 西からの迷い人
43 九鬼を継ぐもの 3 一二三
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結婚披露宴の招待状が、九鬼家宛に二枚届いた。最近は重要な書類は叔父の屋敷に届けているらしいのに、何故か城に届いたので、招待状が二枚であることを知ることができた。
弐角には伴侶どころか婚約者もいない。
で、あれば、この一枚は私の招待状ということで良いのだろうか。
二枚ともを隠してしまおうとする母を説得し、一枚を抜き取ってから叔父の屋敷へ届けさせた。
軍服なんてあかん、紋付き袴を誂えると息巻く母にすべてを任せて、不安だけが募る。これは本当に、自分の招待状なのか。何故、父も弐角も赤虎さまも、何も言ってこないのか。
時々、何か報告の文を読んだ母とお祖父様が、またしくじったのか、と苛々している。何か?と聞いても、あなたは知らなくていい、と教えてはもらえなかった。
弐角より大勢の家臣を引き連れ、先に領地を出た。土産や祝いの品も、何やら大荷物で車に積んである。
あなたもいよいよ中央にデビューするのね、とはしゃぐ母は、新調した着物姿で隣に座っている。
不安を抱えながら、皇都の宿で、到着の知らせと謁見の願い出の文を皇城宛に届けた。その後は、新しくできたというデパートへ買い物に行きたい、名物の建造物が見たい、という母に付き合って観光のようなことをする。数日過ごした頃に、晩餐会の招待状が届いて安堵した。
同伴者は一人可、との文面に、母が張り切って準備をしている。気楽な服装でお越しください、と書いてあるのに、披露宴で着る予定の着物を着込み、私には紋付き袴を着せた。
「文面のまま受け取って、恥をかいたらかなんやろ。」
逆に気合いの入った服装で恥をかいたりはしないのだろうか。
長い髪を高い位置にまとめてもらいながら、それでも何も言うことはできなかった。
車は門をすんなりくぐったが、歩いて進んだ皇城の入り口で止められる。晩餐会とのことで他にも大勢招かれているらしく、招待状を見せては正装をした人々が中へ招かれるというのに、私の招待状を手にした入り口の使用人は、
「これは、皇城の晩餐会の招待状ではありません。」
と言う。
どういうことなのだろう。貴色である赤の模様をふんだんに使用したこの招待状が、皇城からのものではない、とは。
正装をした人々を見て、ほら、この服装で正解よ、と胸を張っていた母が、苛々と使用人へ声を上げた。
「門は、この招待状で通れたのです。他にどこへ行けと言うの?」
「これは、緋色殿下のお印です。離宮だと思います。場所を書き忘れておられたようですね。」
「離宮……?」
「離宮ですって?まさか、あれが何か……。」
その時、人の流れに逆らうように皇城の中から出てきた者がいた。とても若い、自分と変わらない年齢に見える軍服の人は、軽い感じで、どうした?と使用人に聞く。私たちの所為で入り口が一つふさがり、列ができはじめていた。
「これは力丸さま。お帰りでしょうか?」
力丸さまと呼ばれた兵士が使用人の言葉に頷くと、ほっとした様子が伺える。
「離宮のお客様です。ご案内をお願いしてもよろしいでしょうか?」
「はいよ。」
笑って答えた力丸が、私たちの招待状を受け取り歩き出す。
「お待ちなさい。」
母が声を上げるが、彼はすたすたと歩いていってしまう。付いていかないと場所も分からないし、招待状も持っていかれてしまった。
「母上。行きましょう。」
「一二三さん。こんなんおかしい。罠や。」
「晩餐会の場所が違ただけですよ。皇族に招かれていることに代わりはない。」
「そやけど、離宮には……。」
ええ、知ってますよ。あなたが言ったのだ。
兄が、住んでいる、と。
弐角には伴侶どころか婚約者もいない。
で、あれば、この一枚は私の招待状ということで良いのだろうか。
二枚ともを隠してしまおうとする母を説得し、一枚を抜き取ってから叔父の屋敷へ届けさせた。
軍服なんてあかん、紋付き袴を誂えると息巻く母にすべてを任せて、不安だけが募る。これは本当に、自分の招待状なのか。何故、父も弐角も赤虎さまも、何も言ってこないのか。
時々、何か報告の文を読んだ母とお祖父様が、またしくじったのか、と苛々している。何か?と聞いても、あなたは知らなくていい、と教えてはもらえなかった。
弐角より大勢の家臣を引き連れ、先に領地を出た。土産や祝いの品も、何やら大荷物で車に積んである。
あなたもいよいよ中央にデビューするのね、とはしゃぐ母は、新調した着物姿で隣に座っている。
不安を抱えながら、皇都の宿で、到着の知らせと謁見の願い出の文を皇城宛に届けた。その後は、新しくできたというデパートへ買い物に行きたい、名物の建造物が見たい、という母に付き合って観光のようなことをする。数日過ごした頃に、晩餐会の招待状が届いて安堵した。
同伴者は一人可、との文面に、母が張り切って準備をしている。気楽な服装でお越しください、と書いてあるのに、披露宴で着る予定の着物を着込み、私には紋付き袴を着せた。
「文面のまま受け取って、恥をかいたらかなんやろ。」
逆に気合いの入った服装で恥をかいたりはしないのだろうか。
長い髪を高い位置にまとめてもらいながら、それでも何も言うことはできなかった。
車は門をすんなりくぐったが、歩いて進んだ皇城の入り口で止められる。晩餐会とのことで他にも大勢招かれているらしく、招待状を見せては正装をした人々が中へ招かれるというのに、私の招待状を手にした入り口の使用人は、
「これは、皇城の晩餐会の招待状ではありません。」
と言う。
どういうことなのだろう。貴色である赤の模様をふんだんに使用したこの招待状が、皇城からのものではない、とは。
正装をした人々を見て、ほら、この服装で正解よ、と胸を張っていた母が、苛々と使用人へ声を上げた。
「門は、この招待状で通れたのです。他にどこへ行けと言うの?」
「これは、緋色殿下のお印です。離宮だと思います。場所を書き忘れておられたようですね。」
「離宮……?」
「離宮ですって?まさか、あれが何か……。」
その時、人の流れに逆らうように皇城の中から出てきた者がいた。とても若い、自分と変わらない年齢に見える軍服の人は、軽い感じで、どうした?と使用人に聞く。私たちの所為で入り口が一つふさがり、列ができはじめていた。
「これは力丸さま。お帰りでしょうか?」
力丸さまと呼ばれた兵士が使用人の言葉に頷くと、ほっとした様子が伺える。
「離宮のお客様です。ご案内をお願いしてもよろしいでしょうか?」
「はいよ。」
笑って答えた力丸が、私たちの招待状を受け取り歩き出す。
「お待ちなさい。」
母が声を上げるが、彼はすたすたと歩いていってしまう。付いていかないと場所も分からないし、招待状も持っていかれてしまった。
「母上。行きましょう。」
「一二三さん。こんなんおかしい。罠や。」
「晩餐会の場所が違ただけですよ。皇族に招かれていることに代わりはない。」
「そやけど、離宮には……。」
ええ、知ってますよ。あなたが言ったのだ。
兄が、住んでいる、と。
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