【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第四章 西からの迷い人

48 最後の晩餐 4  一二三

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 気丈に挨拶をした母が、真っ青な顔をしてふらついた。

「おい、そこの二人、これを連れて横にずれてくれるか。」

 私たちの連れてきた護衛へ緋色ひいろ殿下が声をかけて、二人が弾かれたように動き、母を抱えるようにして移動する。
 成人なるひとさまが、緋色ひいろ殿下に跳びついた。

「おかえりー。」
「ただいま。」

 抱き上げる緋色ひいろ殿下の頬が緩む。その瞳は、ただ一人だけを映して優しく細められた。

「お客様のお相手、ご苦労。」
「おもてなし、した。」

 成人なるひとさまはそう言って、殿下の腕の中から弐角にかくを振り返る。

「はい。楽しゅう過ごさせて頂きました。」
「それは、何より。着替えてくるから、もうしばらく待っていてくれ。堅苦しい挨拶は終わりだ。もうすぐ酒がくる。いける口か?」
「いえ、まだ若輩で。お手柔らかにお願いします。」

 弐角にかくと機嫌良く言葉を交わして、緋色ひいろ殿下は踵を返した。
 
「あ、殿下。なるを連れていったら駄目よ。」
「少しだけだ。」
「お客様のお相手係って言ったでしょ。」
「約束を守ってここでしなかったのに、いいのか、乙羽おとわ。俺は今すぐキスしたいのを我慢してるんだぞ。」
「もうっ。分かりました。早く着替えてきてくださいませ。」
「頼んだ。」
「ずりぃ、俺たちも一回部屋に戻ろう、乙羽おとわ。」
「私がなるの代わりにお茶を持って行くから、常陸丸ひたちまるは早く着替えてきて。」
「ただいまの抱擁は?」
「お客様が来てるって言ってるでしょ。」
「やだ。殿下だけずるいだろ、五分でいいから。」
「全部聞こえてるっての。俺がお茶を出すから、兄上たちも一回部屋へ行って来いよ。」

 力丸りきまるが廊下に向かって歩きながら話すのが聞こえた。部屋の中には、弐角にかくと私と母上、私たちの護衛二人が取り残される。

「ぶっ。あはははは。」

 足を崩した弐角にかくが、楽しそうに笑い声を上げた。そういえば護衛が見当たらない。まさか、一人で来たのだろうか。

「あ、うちの兄と義姉あねがすみませんでした。」

 すぐにお茶を運んできた力丸りきまるが、笑っている弐角にかくに声をかけた。

「あの美しい女性は既婚者やったのですね。仲がよろしいようで羨ましい。殿下と成人なるひとさまも、とても想いあっていらっしゃるのがよう分かりました。」
「あれで、お客様の前だから我慢してます。」
「あはははは。羨ましい。」
「あんなのばっかりですよ。」
「くっ、くくっ。おみもずいぶんと半助はんすけに懐いたようや。」
「あの二人のことも、成人なるひとが自分たちとおんなじ夫夫ふうふとして扱うからそう見えてきてしまうんですよ、まったく。そういえば、弐角にかくさまは、お相手は?」
「俺はまだ捕まえられてへんので。」
「意中の相手が?」
「ははっ。」
一二三ひふみさまは?」
「あ、いえ、私もまだ……。」

 急に話しかけられて慌てるが、力丸りきまるに気にした様子は無かった。

「そういう力丸りきまるくんは?」
「俺もさっぱりですよ。」
「ははあ。好きなタイプはどんな感じです?」

 ぽんぽんと話す二人に交ぜてもらうのは、とても心地好い。同年代との気のおけない会話という感じがして、思わず力が抜けた。
 楽しかった……。
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