【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第四章 西からの迷い人

57 寧子さんの結婚式 成人

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 寧子やすこさんの結婚式の日、俺も緋色ひいろとおそろいの赤い軍服を着せてもらって、黒地に金魚の付いた靴下を履いている。
 俺はこの格好がかなり好きなので嬉しい。たまに着るのがいいんだよね。隣の緋色ひいろを見上げる。
 うん。
 今日も格好良い。
 すぐに目が合った。
 緋色ひいろが、にやって笑う。
 ああ、緋色ひいろは格好良いねえ。

「主役はあっちだぞ。」

 うん。
 寧子やすこさんの白い着物姿も、とても綺麗。赤虎せきとらは、着物を着てきりっとしてると、父さまによく似ていた。お酒を小さな器に入れて二人で口を付ける。これが誓いの儀式。
 俺も前に、緋色ひいろとしたから知ってる。お酒は、どうしても臭いが嫌で、代わりにお水を入れてもらったけど。あと、白い着物が重たかった。見てた皆が、おめでとうって嬉しそうだったから、俺も嬉しかった。何の意味があるか分からないけど、やって良かったなあって思ってる。
 寧子やすこさんも、そう思ってたらいいな。
 少ない人数で見てた誓いの式が終わったら、大勢の人がいる披露宴の会場に歩いた。まだ、席に着くには早い時間で、あちらこちらで立ち話をしている姿が見える。それぞれが護衛を一人連れているので、ものすごい人数になっていた。
 緋色ひいろは、挨拶をされても、ああと頷いて終わり。俺も横で、ぺこりと頭を下げる。そうすると皆、話しかけることができずに、包拳礼で軽く頭を下げたまま通り過ぎるのを待つしかないんだ。
 うん。
 これなら俺でもできる。

「あ。」

 挨拶をしてる人の中に弐角にかくを見つけた。後ろに才蔵さいぞうもいる。話してもいいかな?と思っていたら、緋色ひいろから声をかけた。

弐角にかく、調子はどうだ?」
「疲れてます。」

 顔を上げて弐角にかくが返事をする。目の下が少し窪んだ感じになってる。

「ははっ。まあ、頑張れ。」
「これ、あげる。」

 俺は、ポケットから飴を出した。

「ああ。ありがたい。そうやね。甘いもの、いいかも。」
才蔵さいぞうもあげる。」

 弐角にかくの後ろで黙って立ってる才蔵さいぞうも、ちょっと気配が尖りすぎてて他所の護衛を威嚇しちゃってるよ。
 ぱちぱち、と瞬きした才蔵さいぞうが手を出した。疲れてるねえ。

「もう食べる?」

 そう言いながら飴の包装の端を片手でほどいていく。ふふっ。取り出すのも上手くなったんだよね、俺。

「はい、あーん。」

 と口に入れようとしたら、才蔵さいぞうの手が受け取って、自分で口に入れた。

成人なるひとさま。うまいっす。ありがとうございます。でも、あーんは旦那さま以外にしちゃ駄目です。」

 え?
 そうだったの?
 し、知らなかった。

緋色ひいろ、ごめん。」

 弐角にかくと話してたはずの緋色ひいろが、こっちを見てた。

「いや。まあ、そうだな。他の奴にはするな。」
「うん。」

 弐角にかく才蔵さいぞうの雰囲気が柔らかくなる。

「これが終われば、すぐ帰るのか?」
「ええ。綾女あやめの父親に動かれないうちに、と。」
離宮うちで飯を食いたければ、食って帰ればいいぞ。」
「是非……!」
「俺、アイスクリーム食べたいっす。」

 才蔵さいぞうは、披露宴でご飯食べれないから、アイスクリームだけじゃなくちゃんと食べて帰るといいよ!
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