【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第四章 西からの迷い人

59 かおの話  成人

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九鬼くき弐角にかくと申します。皇太子殿下に拝謁賜り、至極光栄でございます。」 

 弐角にかくが綺麗な包拳礼をしながら挨拶をする。才蔵さいぞうも、弐角にかくの後ろで包拳礼をして固まっていた。

「ああ、楽にしてくれて構わないよ。先日の晩餐会の時は、緋色ひいろが先に招待したとの話を聞いたからね。重なると、どちらを断るかで悩むだろうと招待しなかったんだ。私に招待されていないからと、何か不都合があったりはしていないかな?」
「ご温情、感謝致します。緋色ひいろ殿下に本日もお声掛け頂き、大変嬉しく思っておりました。特に不都合はございません。」
「それなら良かった。緋色ひいろは、なかなかの人見知りでね。こうして共にいるということは、楽しい晩餐だったようだね。」
「ははっ。ええ、そうですね……。」

 緋色ひいろ朱実あけみ殿下とそっくりな顔で立っている。
 ああ。この顔、好きじゃない。
 緋色ひいろの方に手を伸ばそうとしたら、なる、なる、と声がした。赤璃あかりさまが、おいでおいで、と手招きしている。
 わ、赤璃あかりさま、今日もきれい。落ち着いた赤地の着物に、足の方に金の綺麗なお花が咲いている。俺には何のお花か分からないけど、とってもきれいだ。金の帯も、落ち着いた赤地によく似合っていた。
 
「今日もきれいね。」
「ありがと。なるも格好いいよ。」
「ふふ。格好いい?でも、緋色ひいろの方が格好いいよ。」
「あらま。」

 ふふ、と赤璃あかりさまは楽しそうに笑った。

朱実あけみも素敵でしょ?」

 うんうん、と俺たちは頷き合う。

「ね、力丸りきまるのおでこ、どうしたの?」
「ふふ。常陸丸ひたちまると黙って入れ替わってたから、緋色ひいろにばちん、てされた。」
「あら、見たかったわ。」

 ふふふ。面白かったよ。

「あの子はどう?」

 赤璃あかりさまは声を潜めて、弐角にかくを見る。周りに気付かれないようにほんの少し視線を流して。
 内緒のお話?

「さっき飴あげた。頑張ってるから疲れたって。才蔵さいぞうも、飴食べてた。」
才蔵さいぞう?」
「強くなったよ。力丸りきまると仲良し。」
「ああ。護衛の子ね。ふーん。」

 赤璃あかりさまは、満足したように頷くと朱実あけみ殿下や緋色ひいろと同じような顔つきになって、すい、と前を見た。
 周りにいる着飾った人達の視線が集まっている。

「その顔、好きじゃない。」
「何言ってんの。」
 
 赤璃あかりさまは、その表情かおのまま、俺の左頬を少し引っ張る。
 
「心の中を見せないように、仮面を被るの。これは皇族の仕事。」

 仕事なら仕方ないね。
 好きじゃないけど。
 考えてたら、赤璃あかりさまが少し笑った。

「なると居ると仮面が剥がれちゃうわ。なるは、色んな気持ちが今、心にたまっていってるのね。」

 よく分からない。
 俺は、どんな表情かおでいればいい?
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