【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第四章 西からの迷い人

72 はじめまして  成人

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「帰るか。」

 緋色ひいろは、俺を抱えたまま立ち上がろうとする。
 俺、もう起きたから歩けるけど?

緋色ひいろ殿下、お待ちください。成人なるひとさまにご挨拶をさせて頂きたい。」

 元気な声が聞こえて、緋色ひいろが椅子に座り直す。
 目の前に立ったのは、若い小柄な男の人。

「はじめまして、成人なるひとさま。私は八条たからと申します。七条緋椀ひまりの友達です。」
「はじめまして。成人なるひとです。」

 ぺこりと頭を下げてから、しっかりと顔を見る。緋椀ひまりの友達かあ。字を書いたりする仕事をする人達と、同じ雰囲気の人。緋椀ひまりは強いからちょっと違う感じだけど、友達なんだね。

「あいつが戦争から帰ってから、お互いに忙しかったこともあって会えていないんですよ。結婚したのも知らなかったので、ショックです。」

 八条たからは、にこにこと話す。俺は、少し緊張して掴んでいた緋色ひいろの服から手を離した。はじめましての人は、どんな人か分からなくてどきどきする。……前は、そんなこと無かったんだけど。そんなに人と会うことも無かったからかなあ。

緋椀ひまり、元気です。えと、三雲みくもと仲良しです。」
「そうですか。ありがとうございます。緋椀ひまりのお相手は三雲みくもさんと仰るんですね。」

 俺が、うんうんと頷くと、八条たからは俺の方に手を伸ばしかけて慌てて引っ込めた。
 ん?何?

「あ、いや。あまりに可愛いので、つい頭を撫でそうになってしまった。殿下、すみません。」

 頭、撫でてもらうの好きだよ。気持ちいいし。
 
「いいよー。」

 と頭を出そうとしたら、緋色ひいろの大きな手が優しく俺の頭を包んで、胸にくっ付けてしまった。
 ん?これは何?

緋椀ひまりに会いたいなら、うちに寄ってから帰ればいい。この後の予定が無ければ、だが。」

 緋色ひいろ離宮うちに呼んだ。この人は、うちに来てもいい人なんだな。

「嬉しいです。是非。」
緋色ひいろ殿下、私も寄りたいです。」

 朱可しゅかさんの声がする。俺は、緋色ひいろの胸しか見えてないよー。

「ははっ。緋椀ひまりの厄日だな。」

 緋色ひいろが楽しそうに笑っている。
 今日は、朝からずっと楽しい良い日だな。
 
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