【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第四章 西からの迷い人

こぼれ話 衣装部屋より 1

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 皇国の王城の衣装部は、最近活気づいている。仕事が楽しくて仕方ない。

「やっぱりこの、パーカーの帽子に、くまの耳を付けたものは渡してしまってもいいと思うんですよね。」
「色は、薄い茶色と白と二種類作ってみたんですけど、やはりお気に入りのぬいぐるみと同じ白がいいですかね?もちろん、目は赤にして背中の真ん中の裾の方にもさりげなく赤の模様を入れてあります。」
「寝るときに、上下で着たらどうかと思って、ズボンのお尻にしっぽを付けてみたんですけど。」
「ああ、しっぽはやめた方がいいわ。座っても寝てもちょっと邪魔でしょ。」
「そうですね。可愛いと思うんですけど。」
成人なるひとさまの服は、着心地と脱ぎ着のしやすさを忘れては駄目よ。いつ眠たくなられて寝てしまわれても心地好く寝られるように、緋色ひいろ殿下が抱き上げられた時に、殿下の手に不快感が無いように気を付けないとね。」
「そうですねえ。とにかく細いですから、柔らかく包んでおきたいですよね。」
「男の子なんだから、格好いいのもお好きだと思うのだが……。」

 今日は、赤虎せきとらさまと寧子やすこさまの結婚式を王城の敷地内の神社で執り行い、披露宴を王城の大広間で開かれたので、休日であるが、着付けの手伝いやほつれた衣装の直しのために出勤してきている。
 皇族の衣装と使用人たちの衣装を作るための部署であるので、本来なら五条となられた赤虎せきとらさまの衣装に関わることはないが、今回は、息子として送り出してやりたいとの陛下の意向で、王城での挙式、披露宴となったので、私たちも張り切って衣装を作らせて頂いた。赤虎せきとらさまは、扱いとしては皇族ではないため、赤を大っぴらには使えないが、薄桃色で黒の軍服の袖口に刺繍し、釦などにも薄桃色を使用した。寧子やすこさまの白無垢の裏地も薄桃色で、今後のお衣装にも取り入れてもらうつもりだ。五条なら公務をお手伝いなさることもあるだろうし。
 
「先日のパンツ、喜んで頂けたかしら?」
「あのぞうは、完璧よ。きっと大丈夫。」

 服や靴下は、身につけていらっしゃることが見えるから分かりやすいのだが、パンツだけは知りようがない。まあ、それも、王城で洗濯に出してくれれば分かる。洗濯係の知り合いに聞けば、使って頂けていることが分かるのだが、離宮ですべて済まされてしまうから、近寄ることもできない。
 成人なるひとさまは時々、王城内をご機嫌で歩いてらっしゃるから、お声をお掛けしたいのだが、まさか、パンツは気に入って頂けましたか?とは聞けないし。

「あなたたち、まだいたの?」
「部長!お疲れさまです。本日は、赤虎せきとらさまのご結婚、おめでとうございます!」

 呆れたような声が聞こえて、私たち四人は立ち上がる。
 衣装部の部長、五条涼乃絵すずのえさまは、花婿の母として本日の結婚式、披露宴に出られていた。黒の留袖の裾には、薄桃色の花が金の模様と共に散っていて、とても素敵だ。金の帯にも、薄桃色の小花を散らし、五条が皇家と繋がったことを示していた。
 
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