【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第四章 西からの迷い人

73 お土産はお品書き  成人

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 たから朱可しゅかさんと離宮おうちに帰った。生松いくまつは、もう少し病人の様子を見てから帰るらしい。朱実あけみ殿下とお話してたから、野花のばなはやっぱり、だいぶ具合が悪かったんだろう。
 
「殿下!夕食の人数が増えるなら、早目に教えてください、といつも言ってるでしょ!」
「悪い。急に決まったんだ。まあ、夕食前に帰るんじゃないか?」
「こんな時間に呼んでおいて、夕食前に帰れって言えるもんですか!」

 緋色ひいろに文句を垂れている広末ひろすえの横で、村次むらつぐがお客様のお茶を淹れている。
 俺が運ぶね。
 ワゴンを取ってくると、村次むらつぐがその上にお茶を乗せてくれた。紙に包まれたお饅頭も、お皿に乗せてワゴンの上に。

「疲れてない?」
「うん。ちょっと寝た。」
「どうだった?結婚式。」
寧子やすこさん、綺麗だった。」
「そっか。晴れてて良かったよなあ。あれは?持ってきた?」

 そうそう。広末ひろすえ村次むらつぐに頼まれてたもの、持って帰ってきたよ!

「はい。お品書き。」

 たたんで入れていた紙をポケットから取り出す。俺の服は、手で持てない時のために少し大きめのポケットが付いているから、助かるんだよね。
 披露宴で座った席に、料理名が書かれた紙が置いてあるはずだから、それを持って帰ってきて、と頼まれていたのだ。きれいに見事な字で書かれているみたいだけど、いつも読んでいる字と少し形が違ってて、俺にはよく読めない。漢字も多いし。でも、広末ひろすえたちには、大事なものらしい。

「おお、ありがとう。」

 村次むらつぐが、本当に嬉しそうにその紙を開いて読み始めた。

「おお。美味しそうだなあ。なる坊、いっぱい食べれたか?」
「いっぱい食べた。もう今日は入らない。」

 あ、そうだ。俺の分の夜ご飯をたからにあげたらどうかな?
 いいこと思いついたので、そう言おうと顔を上げたら、二人が怖い顔でこちらを睨んでた。

「食べたのは、昼だよな?」
「なんか、いっぱいあったから、さっきまで食べてた。」
「昼寝したって言ったじゃん。」
「あー、えと、寝る前までずっと食べてた。」
「おやつ食ってないんだぞ。」
「ぶどうのゼリーが綺麗でねえ。美味しくて。」
「そりゃ、デザートだ。おやつじゃねえ。」

 でも、本当にお腹いっぱいなんだけど。
 俺が、まだ着てる赤い軍服をめくってお腹を見せようとすると、緋色ひいろの手がそれを押さえて元に戻した。

「俺以外に見せない。約束。」
「んー?生松いくまつは?」
「医者の診察は仕方ない。」
「んー?うん、約束。」

 お腹は緋色ひいろにしか見せないのね。覚えとく。

「茶が冷めるから行くぞ。」

 緋色ひいろに言われて、慌ててワゴンを押す。

「ちょっと行ってくるね。」
「はいはい。茶菓子が足りなければ、また取りに来て。お茶も。」
「はーい。」

 うーん。食べ過ぎてお腹が重い……。
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