379 / 1,325
第五章 それは日々の話
29 最初に倒れたのは 成人
しおりを挟む
「半助、あかん」
「臣。俺は大丈夫やから。まだ寝とる人もおるから静かにしぃ」
階段の側で、壱臣が半助の手を掴んで引き止めている。壱臣は、朝ご飯を作るために朝はいつも早起きだから、こんな時間に二階にいるなんて珍しい。
料理用の白衣を着て、頭に三角巾も巻いているから、仕事の途中だな。
「おはよ」
って言うと、二人ともぱっと姿勢を正した。でも、壱臣は半助の手を離さない。
「おはようございます」
「おはよう、成人くん。半助、熱があると思うんよ。やのに仕事に行こうとしよるから、止めてくれへん?」
「成人さま、自分のことは自分でよお分かります。臣が大げさなんですわ」
うわあ。半助の目の下にひどい隈。美人な顔が台無しだ。ん?美人って女の人に言うんだっけ?でも緋椀も美人さんだよね?緋椀と三雲は、違うお仕事するからと離宮からいなくなってしまった。寂しい。
「生松う」
俺は、階段の近くの生松の部屋の扉を叩いた。
「はい」
すぐに返事があって、寝ぐせがついている生松が顔を出す。起こしてごめんね。
「半助、お熱」
「成人さま、大したことないて言うてますやろ。生松先生、お騒がせしてすいません」
「把握しました」
すたすたと部屋着の生松が半助の近くまで歩く。生松は誰かの具合が悪くなった時に、いつ起こされてもすぐに駆けつけられるようにって、寝間着じゃなく部屋着を着て寝ている。
「この顔色で仕事に?ベッドに括りつけましょうか?」
生松、にっこり笑う顔が怖いよ?半助の首筋に手を当てて、ため息を吐く。俺も壱臣と一緒に、半助の一つしかない左手を捕まえた。わ、これは。
「ぬくい」
「そやろ?うちが起きたときには、手が冷とうてな。ちょっと震えとったんや。掛布を一枚足したら寝直したし、どうもおかしい思てたわ。仕事が一段落したから見に来たらしっかり着替えとるけど、今度はどこもかしこもぬくいやろ?」
「うん。お熱」
はあ、と半助もため息を吐く。
「こんなもんは、熱が上がるまでがしんどいのであって、上がってしまえば何とか動けるもんなんですよ」
「何とか動ける程度で朱実殿下の護衛を勤めようとは迷惑千万」
「じいや」
じいやが怖い顔で半助の後ろに立った。
「私に運ばれるか、自らベッドに戻るか選ばせてやろう」
じいやの本気の気迫に充てられて、半助がくらりと揺らいだ。半助より背の低いじいやに抱えられそうになって、踏ん張る。半助の小さな声が、吐く息と共に漏れた。
「じ、自分で……」
それがいいと思うよ?
「臣。俺は大丈夫やから。まだ寝とる人もおるから静かにしぃ」
階段の側で、壱臣が半助の手を掴んで引き止めている。壱臣は、朝ご飯を作るために朝はいつも早起きだから、こんな時間に二階にいるなんて珍しい。
料理用の白衣を着て、頭に三角巾も巻いているから、仕事の途中だな。
「おはよ」
って言うと、二人ともぱっと姿勢を正した。でも、壱臣は半助の手を離さない。
「おはようございます」
「おはよう、成人くん。半助、熱があると思うんよ。やのに仕事に行こうとしよるから、止めてくれへん?」
「成人さま、自分のことは自分でよお分かります。臣が大げさなんですわ」
うわあ。半助の目の下にひどい隈。美人な顔が台無しだ。ん?美人って女の人に言うんだっけ?でも緋椀も美人さんだよね?緋椀と三雲は、違うお仕事するからと離宮からいなくなってしまった。寂しい。
「生松う」
俺は、階段の近くの生松の部屋の扉を叩いた。
「はい」
すぐに返事があって、寝ぐせがついている生松が顔を出す。起こしてごめんね。
「半助、お熱」
「成人さま、大したことないて言うてますやろ。生松先生、お騒がせしてすいません」
「把握しました」
すたすたと部屋着の生松が半助の近くまで歩く。生松は誰かの具合が悪くなった時に、いつ起こされてもすぐに駆けつけられるようにって、寝間着じゃなく部屋着を着て寝ている。
「この顔色で仕事に?ベッドに括りつけましょうか?」
生松、にっこり笑う顔が怖いよ?半助の首筋に手を当てて、ため息を吐く。俺も壱臣と一緒に、半助の一つしかない左手を捕まえた。わ、これは。
「ぬくい」
「そやろ?うちが起きたときには、手が冷とうてな。ちょっと震えとったんや。掛布を一枚足したら寝直したし、どうもおかしい思てたわ。仕事が一段落したから見に来たらしっかり着替えとるけど、今度はどこもかしこもぬくいやろ?」
「うん。お熱」
はあ、と半助もため息を吐く。
「こんなもんは、熱が上がるまでがしんどいのであって、上がってしまえば何とか動けるもんなんですよ」
「何とか動ける程度で朱実殿下の護衛を勤めようとは迷惑千万」
「じいや」
じいやが怖い顔で半助の後ろに立った。
「私に運ばれるか、自らベッドに戻るか選ばせてやろう」
じいやの本気の気迫に充てられて、半助がくらりと揺らいだ。半助より背の低いじいやに抱えられそうになって、踏ん張る。半助の小さな声が、吐く息と共に漏れた。
「じ、自分で……」
それがいいと思うよ?
1,500
あなたにおすすめの小説
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*不定期連載です。
嫌われ者の長男
りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....
【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺
福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。
目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。
でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい…
……あれ…?
…やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ…
前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。
1万2000字前後です。
攻めのキャラがブレるし若干変態です。
無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形)
おまけ完結済み
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する幼少中高大院までの一貫校だ。しかし学校の規模に見合わず生徒数は一学年300人程の少人数の学院で、他とは少し違う校風の学院でもある。
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語
【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
* ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。
BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
本編完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
きーちゃんと皆の動画をつくりました!
もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます
プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら!
本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる