【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第五章 それは日々の話

77 読めないお品書き  成人

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「はい、お土産」

 朝にもお風呂に入り、のんびりと朝ご飯を食べて出発しても、昼過ぎにおうちに着いた。朝ご飯をたくさん食べたし、時間も遅めだったので、昼ご飯は今から。乙羽おとわは移動の途中で食べるのはできないしね。緋色ひいろ常陸丸ひたちまるが、店屋に寄って何か買ってたから、後でそれを貰おう。
 昼の片付けも終わって、休憩していた広末ひろすえに、お品書きを渡す。休みの曜日だけど、ご飯は毎日いるからと、料理人は交代でお休みを取っている。

「おお。なる坊、おかえり」

 お品書きを受け取った広末ひろすえが、んん?と眉間にしわを寄せる。

「達筆だな……」
「たっぴつって何?」
「とても上手な字ってことだ」
「へええ」

 それ、上手なんだ?俺の知ってる文字と違いすぎて、ちっとも読めないけどね。

「ああ、多分な。上手すぎて俺には読めねえな」

 あ、広末ひろすえにも読めないんだ。あれ?じゃあ、文字の意味無くない?

「誰かに頼む?さい?」
「いや、さいさんは帝国の人だから、崩し文字は少し形が違うようなことを言っていたぞ。結婚式の時のお品書きを覗いて、興味深いとか言ってた。あれはまあ、一般的な軽い崩し文字だから俺でも読めんたんだが」
「崩し文字?」
「素早く書くためとか、筆の動きやすい方向に書くために、元の文字から崩した感じで書かれてるんだが、最近はほとんど使わないから、文官系の高等学校にでも行かなきゃ習わないんだよ。名字持ちの上等な家の子どもは皆、習うらしいけどな」

 そこまで言ってから、ははあ、と広末ひろすえは一人で納得してた。

「分かったぞ。なる坊の泊まった宿は、高級なとこだから、これが読めるような人しかお泊まりしねえんだな」

 うーん。ちょっと途中から言ってることがよく分からなくなってきたけど、つまり、誰なら読める?

三郎さぶろうは?」
「あいつ、いいとこのお坊ちゃんだったな。読めるんじゃねえか?」
「呼んでくる」

 今日は仕事はお休みの日だから、三郎さぶろう、お部屋にいるかな?
 俺が、広末ひろすえの休憩部屋を出ようとすると、待て、と呼び止められる。

「昼ごはんは何を食べた?」
「今からー」
「何だとお!今すぐ食べてこい。温かいお茶を淹れてやるから」
「ええ?お品書きは?」
「そんなんいつでもいい。飯を食うのが先」

 はーい……。
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