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第五章 それは日々の話
76 お風呂には緋色がいる 成人
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目を覚ましたら、緋色の腕の中だった。浴衣を着て、ちゃんと布団で寝ている。
昨日の夜、外のお風呂で気持ちいいことした後のことを覚えていない。うん。眠かったから、気持ちよくなって体の力が抜けたらそのまま寝ちゃったんだな。疲れた後に気持ちよく寝ると、深く深く眠れるから、今は何だかすっきりしてる。体は、ちょっと怠いけど、今日は車で帰るだけだからすぐに治りそう。
緋色の匂いを嗅いで、好きだなあ、と思う。同じ石鹸や洗剤を使ってても、皆それぞれの匂いがするんだよね。好きな匂いもあれば、苦手な匂いもある。離宮につけてる人はいないけど、香水の匂いはとても苦手。髪の美容液も、きつい匂いのものをつけている人の側に長いこといると、胸の辺りがむかむかしてくる。
戦場の臭いの方が、耐えられたよなあ。血と硝煙、肉や草や鉄の焦げた臭い。お腹が空いてると、美味しそうな匂いに思えてくる。あれは、感覚が麻痺していたんだろうか。そうかもな。そんなことを気にしてる余裕なんて、誰にも無かった。苦手なにおいだと思えるなら、それを気にすることができるなら、それはすごく余裕があるってことだ。
布団から抜け出して、座卓に置かれたお茶をありがたく飲む。ふたをして置いてあるし、俺にちょうどいい熱さだから、きっとじいやが淹れておいてくれたんだろう。
トイレに行ってから浴衣を脱いで、外のお風呂に出た。
うー、寒い。
外に置いてある桶を持って、ばしゃばしゃと足からお湯をかける。いきなりお風呂に入ると、よくないからな。……何でだろ?緋色が言ってたからそうしてるけど、何でかは知らない。
ゆっくりと足から湯に浸かりながら、一気に湯に入るなよ、ゆっくり入れ、という緋色の言葉が思い浮かぶ。俺は熱い湯に入れないから、いつもゆっくり、湯の温度を確かめながら入ってるのに。
ふふふ、と笑いがこぼれた。
緋色が側にいなくても、俺の中の緋色がずっとしゃべってる。それが何だか嬉しくて、体の中からも、ぽかぽか温まるみたいだ。お外じゃなければ、のぼせてたなあ。
お風呂は緋色としか入らないから、お風呂での全てのことは、緋色に繋がっていく。
お風呂は怖かった。お風呂に入って綺麗にされると、痛くて気持ち悪いことをされる合図だったから。
でももう、俺のお風呂には緋色しかいない。一人で、こうして入っていても緋色の声が聞こえてきて、うるさいくらいだ。
「ふふ。ふふふ」
緋色を思い浮かべて笑っていると、がらがらと扉が開いた。眠そうな緋色の姿が見える。俺の中の格好いい緋色が、寝ぼけた顔の緋色に変わっちゃった。
「何笑ってんだ?」
「あはは、はははは」
「なんだ?楽しいことするなら起こせよ」
「ふふ。うん」
眠そうな声が近付いてきて、桶で湯をかぶるとすぐに隣に入ってくる。俺にはゆっくり入れって言うくせに、自分はざぶんと入るんだよ。
また笑えてきた俺を膝に乗せて、あー、と緋色が気の抜けた声を上げた。
「うちにも露天風呂欲しいな」
緋色なら、そのうち作っちゃいそうだ。
昨日の夜、外のお風呂で気持ちいいことした後のことを覚えていない。うん。眠かったから、気持ちよくなって体の力が抜けたらそのまま寝ちゃったんだな。疲れた後に気持ちよく寝ると、深く深く眠れるから、今は何だかすっきりしてる。体は、ちょっと怠いけど、今日は車で帰るだけだからすぐに治りそう。
緋色の匂いを嗅いで、好きだなあ、と思う。同じ石鹸や洗剤を使ってても、皆それぞれの匂いがするんだよね。好きな匂いもあれば、苦手な匂いもある。離宮につけてる人はいないけど、香水の匂いはとても苦手。髪の美容液も、きつい匂いのものをつけている人の側に長いこといると、胸の辺りがむかむかしてくる。
戦場の臭いの方が、耐えられたよなあ。血と硝煙、肉や草や鉄の焦げた臭い。お腹が空いてると、美味しそうな匂いに思えてくる。あれは、感覚が麻痺していたんだろうか。そうかもな。そんなことを気にしてる余裕なんて、誰にも無かった。苦手なにおいだと思えるなら、それを気にすることができるなら、それはすごく余裕があるってことだ。
布団から抜け出して、座卓に置かれたお茶をありがたく飲む。ふたをして置いてあるし、俺にちょうどいい熱さだから、きっとじいやが淹れておいてくれたんだろう。
トイレに行ってから浴衣を脱いで、外のお風呂に出た。
うー、寒い。
外に置いてある桶を持って、ばしゃばしゃと足からお湯をかける。いきなりお風呂に入ると、よくないからな。……何でだろ?緋色が言ってたからそうしてるけど、何でかは知らない。
ゆっくりと足から湯に浸かりながら、一気に湯に入るなよ、ゆっくり入れ、という緋色の言葉が思い浮かぶ。俺は熱い湯に入れないから、いつもゆっくり、湯の温度を確かめながら入ってるのに。
ふふふ、と笑いがこぼれた。
緋色が側にいなくても、俺の中の緋色がずっとしゃべってる。それが何だか嬉しくて、体の中からも、ぽかぽか温まるみたいだ。お外じゃなければ、のぼせてたなあ。
お風呂は緋色としか入らないから、お風呂での全てのことは、緋色に繋がっていく。
お風呂は怖かった。お風呂に入って綺麗にされると、痛くて気持ち悪いことをされる合図だったから。
でももう、俺のお風呂には緋色しかいない。一人で、こうして入っていても緋色の声が聞こえてきて、うるさいくらいだ。
「ふふ。ふふふ」
緋色を思い浮かべて笑っていると、がらがらと扉が開いた。眠そうな緋色の姿が見える。俺の中の格好いい緋色が、寝ぼけた顔の緋色に変わっちゃった。
「何笑ってんだ?」
「あはは、はははは」
「なんだ?楽しいことするなら起こせよ」
「ふふ。うん」
眠そうな声が近付いてきて、桶で湯をかぶるとすぐに隣に入ってくる。俺にはゆっくり入れって言うくせに、自分はざぶんと入るんだよ。
また笑えてきた俺を膝に乗せて、あー、と緋色が気の抜けた声を上げた。
「うちにも露天風呂欲しいな」
緋色なら、そのうち作っちゃいそうだ。
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