【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第五章 それは日々の話

84 公園  成人

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 十月生まれの人のお誕生日会に、末良すえよしを連れてくるよ、と広末ひろすえが約束してくれた。広末ひろすえたちは住む場所を変えたから、あんまり会えなくて寂しかったんだ。嬉しい。
 なんで離宮にずっといられないのか。
 離宮はお城で、帝やお妃様、皇子様と皇女様が住む場所だから、らしい。
 今までは、住み込みで働いていたから離宮にいたけれど、末良すえよしは働いていないでしょう?と斑鹿乃むらかのは言った。
 働けるわけないじゃん。まだ、お話もできないし、立って歩けない。でも、そういうことなんだって。
 吉野よしのは年をとって働くのがしんどくなってきたし、斑鹿乃むらかのは少なくとも、末良すえよしが学校に行く年になるまでは、末良すえよしを育てることが仕事だ。だから、お城には住めないんだって。
 引っ越したおうちに遊びに行った時に聞いたら、斑鹿乃むらかのが教えてくれた。
 俺は、皇子様の伴侶だから、仕事をしててもしてなくても、皇子様と一緒に住んでいいんだって。

「離宮にいては、同じくらいの年の子どもと遊べませんしね」
「赤ちゃんっていっぱいいるの?」
「いますよー。もう少し大きくなって、公園というところに出かけると、遊び相手に事欠きません」
「公園」
「遊具が置いてあって、子ども達が集まって遊べる場所です」

 へええ?
 遊具?
 俺があんまりにも、分からないって顔をしたからか、少しだけ、と斑鹿乃むらかのが公園に連れていってくれた。斑鹿乃むらかのたちの新しいお家から、少し歩いた所に公園はあった。
 末良すえよしはまだ歩けないし、何でもお口に入れて食べてしまうから、公園では遊べない。だから、斑鹿乃むらかのに抱っこされてる末良すえよしも公園に来るのは初めてらしい。俺たち、一緒だな。
 何人かの小さな子どもが、それぞれ女の人と一緒に来て遊んでいた。
 こんにちは、と挨拶をすると、皆びっくりした顔で俺の肘までしかない左手を見る。フードを被ってるから、顔の傷は見えにくいと思うんだけど。
 斑鹿乃むらかのが、こんにちは、って言うと皆、にっこり笑って、こんにちは、と返してくれた。

「近くに越して来たので、よろしくお願いします。子どもはまだ小さいんですが、もう少ししたら、ここで遊ぶつもりなんです」
「そう。よろしくね」
「すぐに一緒に遊べるようになるわよー」
「はい。楽しみです」

斑鹿乃むらかのはそんな風に、挨拶で顔見知りになっていく。俺は、公園にある色んなものが珍しくて、きょろきょろと見た。
 遊具ってのが、思ってたより大きい。
 
「これはブランコ」
 
 遊んでいる子どもを手本に、空いている席に座って、吊ってある鎖を持つ。片手なので不安定だけど、座ってるから平気。

「押しますよ」

 斑鹿乃むらかのが、末良すえよしを抱いたまま俺の背中をぐっと押した。
 ゆらり、と揺れて前に出たら、今度は後ろに揺れる。
 おお。
 ゆらゆらと揺れるのが気持ちいい。
 後ろに行った所で、また斑鹿乃むらかのが背中を押してくれた。

「あは」

 楽しい。
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