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第五章 それは日々の話
85 すべり台の滑りかた 成人
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すべり台も使ってみたい。小さな子どもがしていることを見て、真似してみることにする。かなり急勾配の階段をのぼって、高い位置から坂になっている面を滑り下りるのだ。子どもが、小さな体で一生懸命階段をのぼっているのが、とても可愛い。手もついて四つんばいで、ほっほっと上を目指す。上に着くと、立ち上がって楽しそうに辺りを見回している。下から見ている女の人は、とても心配そうな顔で、子どもが向きを変える度に移動して、手を差し伸べている。
「お母さん」
女の人を呼びながら、にこにこして滑り下りる子どもは、本当に楽しそうだ。
子どもが滑り下りた後で、のぼってみた。上からの景色は、確かに気持ちいい。俺は、受け身をとれるから、落ちても怪我をするくらいだろうが、あの子どもは、落ちたらひとたまりもないだろう。こんな高い場所でうろうろしてるあの子どもは、勇者だな。
後ろからもう一度のぼろうとしている子どもを、お母さんと呼ばれた女の人が止めていた。一人ずつしかできない遊具なのかな?俺は急いで滑り下りる。
おお。
いい気持ち。
何回もやりたくなるのが分かる。
いいよ、と言おうと思って振り返ったら、もっとしたいとぐずる子どもを抱いたお母さんが、俺のいるすべり台から距離を置こうとしている姿が見えた。
ああ。
そうか。
俺の見た目は、怖いのかもしれない。
いつも側にいる人達が気にしないでくれるから忘れがちだけど、商店街では、道行く人が距離をとって、それからじろじろと見られたりする。八百屋の清さんは、なる坊は戦争の被害者だろ、怖がるなんておかしい、と怒ってくれたりするけれど、俺の傷痕が、怖い人には怖いのだろうから仕方ない。
子どもが、いやいやと泣き出した。
申し訳ないことしたな、と少し悲しい気持ちで斑鹿乃の元へ向かう。ブランコに座って、膝の上に末良を抱いて、足でゆらゆらとブランコを揺らしていた。
「すべり台はもう、よろしいのですか?」
「うん……」
泣いていた子どもが、機嫌を直してすべり台の階段をのぼっている様子を見る。
斑鹿乃の隣のブランコにいた子どもと女の人も、すっと立ち上がって移動するところだった。
「帰りますか?」
「うん……」
砂の上に座り、一生懸命何かを制作している子どもも気になるけれど、俺が近寄ると逃げてしまうだろう。子どもじゃなく、大人が。
「いいお散歩になりましたねえ」
「うん……」
帰り道は、少し気分が落ち込んでいた。初めての遊具は、あんなに楽しかったのにな。
「公園は、あまり楽しくなかった?」
「んーん」
楽しかった。もっと滑りたかった。ブランコも、もっと大きく揺らしてみたかった。砂も、触ってみたかった。
でも、俺がいたら怖いみたいだから。
「末良が歩けるようになったら、一緒に公園で遊んでほしいのですが、付き合って頂けますか?」
「いいの?」
「成人さんは、ずっと末良のお兄ちゃんでしょう?」
「うん」
斑鹿乃の腕の中で、ご機嫌な末良が俺に手を伸ばす。にこにこ笑っている。
「ほらね。最近は、知らない人を見ると、いやーって泣くのに成人さんには、にこにこして遊ぼうって言ってます」
末良は、すぐ泣くからなあ。
「ふふ。いいよ」
俺が、すべり台の滑りかた、教えてあげる。
「お母さん」
女の人を呼びながら、にこにこして滑り下りる子どもは、本当に楽しそうだ。
子どもが滑り下りた後で、のぼってみた。上からの景色は、確かに気持ちいい。俺は、受け身をとれるから、落ちても怪我をするくらいだろうが、あの子どもは、落ちたらひとたまりもないだろう。こんな高い場所でうろうろしてるあの子どもは、勇者だな。
後ろからもう一度のぼろうとしている子どもを、お母さんと呼ばれた女の人が止めていた。一人ずつしかできない遊具なのかな?俺は急いで滑り下りる。
おお。
いい気持ち。
何回もやりたくなるのが分かる。
いいよ、と言おうと思って振り返ったら、もっとしたいとぐずる子どもを抱いたお母さんが、俺のいるすべり台から距離を置こうとしている姿が見えた。
ああ。
そうか。
俺の見た目は、怖いのかもしれない。
いつも側にいる人達が気にしないでくれるから忘れがちだけど、商店街では、道行く人が距離をとって、それからじろじろと見られたりする。八百屋の清さんは、なる坊は戦争の被害者だろ、怖がるなんておかしい、と怒ってくれたりするけれど、俺の傷痕が、怖い人には怖いのだろうから仕方ない。
子どもが、いやいやと泣き出した。
申し訳ないことしたな、と少し悲しい気持ちで斑鹿乃の元へ向かう。ブランコに座って、膝の上に末良を抱いて、足でゆらゆらとブランコを揺らしていた。
「すべり台はもう、よろしいのですか?」
「うん……」
泣いていた子どもが、機嫌を直してすべり台の階段をのぼっている様子を見る。
斑鹿乃の隣のブランコにいた子どもと女の人も、すっと立ち上がって移動するところだった。
「帰りますか?」
「うん……」
砂の上に座り、一生懸命何かを制作している子どもも気になるけれど、俺が近寄ると逃げてしまうだろう。子どもじゃなく、大人が。
「いいお散歩になりましたねえ」
「うん……」
帰り道は、少し気分が落ち込んでいた。初めての遊具は、あんなに楽しかったのにな。
「公園は、あまり楽しくなかった?」
「んーん」
楽しかった。もっと滑りたかった。ブランコも、もっと大きく揺らしてみたかった。砂も、触ってみたかった。
でも、俺がいたら怖いみたいだから。
「末良が歩けるようになったら、一緒に公園で遊んでほしいのですが、付き合って頂けますか?」
「いいの?」
「成人さんは、ずっと末良のお兄ちゃんでしょう?」
「うん」
斑鹿乃の腕の中で、ご機嫌な末良が俺に手を伸ばす。にこにこ笑っている。
「ほらね。最近は、知らない人を見ると、いやーって泣くのに成人さんには、にこにこして遊ぼうって言ってます」
末良は、すぐ泣くからなあ。
「ふふ。いいよ」
俺が、すべり台の滑りかた、教えてあげる。
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