435 / 1,325
第五章 それは日々の話
85 すべり台の滑りかた 成人
しおりを挟む
すべり台も使ってみたい。小さな子どもがしていることを見て、真似してみることにする。かなり急勾配の階段をのぼって、高い位置から坂になっている面を滑り下りるのだ。子どもが、小さな体で一生懸命階段をのぼっているのが、とても可愛い。手もついて四つんばいで、ほっほっと上を目指す。上に着くと、立ち上がって楽しそうに辺りを見回している。下から見ている女の人は、とても心配そうな顔で、子どもが向きを変える度に移動して、手を差し伸べている。
「お母さん」
女の人を呼びながら、にこにこして滑り下りる子どもは、本当に楽しそうだ。
子どもが滑り下りた後で、のぼってみた。上からの景色は、確かに気持ちいい。俺は、受け身をとれるから、落ちても怪我をするくらいだろうが、あの子どもは、落ちたらひとたまりもないだろう。こんな高い場所でうろうろしてるあの子どもは、勇者だな。
後ろからもう一度のぼろうとしている子どもを、お母さんと呼ばれた女の人が止めていた。一人ずつしかできない遊具なのかな?俺は急いで滑り下りる。
おお。
いい気持ち。
何回もやりたくなるのが分かる。
いいよ、と言おうと思って振り返ったら、もっとしたいとぐずる子どもを抱いたお母さんが、俺のいるすべり台から距離を置こうとしている姿が見えた。
ああ。
そうか。
俺の見た目は、怖いのかもしれない。
いつも側にいる人達が気にしないでくれるから忘れがちだけど、商店街では、道行く人が距離をとって、それからじろじろと見られたりする。八百屋の清さんは、なる坊は戦争の被害者だろ、怖がるなんておかしい、と怒ってくれたりするけれど、俺の傷痕が、怖い人には怖いのだろうから仕方ない。
子どもが、いやいやと泣き出した。
申し訳ないことしたな、と少し悲しい気持ちで斑鹿乃の元へ向かう。ブランコに座って、膝の上に末良を抱いて、足でゆらゆらとブランコを揺らしていた。
「すべり台はもう、よろしいのですか?」
「うん……」
泣いていた子どもが、機嫌を直してすべり台の階段をのぼっている様子を見る。
斑鹿乃の隣のブランコにいた子どもと女の人も、すっと立ち上がって移動するところだった。
「帰りますか?」
「うん……」
砂の上に座り、一生懸命何かを制作している子どもも気になるけれど、俺が近寄ると逃げてしまうだろう。子どもじゃなく、大人が。
「いいお散歩になりましたねえ」
「うん……」
帰り道は、少し気分が落ち込んでいた。初めての遊具は、あんなに楽しかったのにな。
「公園は、あまり楽しくなかった?」
「んーん」
楽しかった。もっと滑りたかった。ブランコも、もっと大きく揺らしてみたかった。砂も、触ってみたかった。
でも、俺がいたら怖いみたいだから。
「末良が歩けるようになったら、一緒に公園で遊んでほしいのですが、付き合って頂けますか?」
「いいの?」
「成人さんは、ずっと末良のお兄ちゃんでしょう?」
「うん」
斑鹿乃の腕の中で、ご機嫌な末良が俺に手を伸ばす。にこにこ笑っている。
「ほらね。最近は、知らない人を見ると、いやーって泣くのに成人さんには、にこにこして遊ぼうって言ってます」
末良は、すぐ泣くからなあ。
「ふふ。いいよ」
俺が、すべり台の滑りかた、教えてあげる。
「お母さん」
女の人を呼びながら、にこにこして滑り下りる子どもは、本当に楽しそうだ。
子どもが滑り下りた後で、のぼってみた。上からの景色は、確かに気持ちいい。俺は、受け身をとれるから、落ちても怪我をするくらいだろうが、あの子どもは、落ちたらひとたまりもないだろう。こんな高い場所でうろうろしてるあの子どもは、勇者だな。
後ろからもう一度のぼろうとしている子どもを、お母さんと呼ばれた女の人が止めていた。一人ずつしかできない遊具なのかな?俺は急いで滑り下りる。
おお。
いい気持ち。
何回もやりたくなるのが分かる。
いいよ、と言おうと思って振り返ったら、もっとしたいとぐずる子どもを抱いたお母さんが、俺のいるすべり台から距離を置こうとしている姿が見えた。
ああ。
そうか。
俺の見た目は、怖いのかもしれない。
いつも側にいる人達が気にしないでくれるから忘れがちだけど、商店街では、道行く人が距離をとって、それからじろじろと見られたりする。八百屋の清さんは、なる坊は戦争の被害者だろ、怖がるなんておかしい、と怒ってくれたりするけれど、俺の傷痕が、怖い人には怖いのだろうから仕方ない。
子どもが、いやいやと泣き出した。
申し訳ないことしたな、と少し悲しい気持ちで斑鹿乃の元へ向かう。ブランコに座って、膝の上に末良を抱いて、足でゆらゆらとブランコを揺らしていた。
「すべり台はもう、よろしいのですか?」
「うん……」
泣いていた子どもが、機嫌を直してすべり台の階段をのぼっている様子を見る。
斑鹿乃の隣のブランコにいた子どもと女の人も、すっと立ち上がって移動するところだった。
「帰りますか?」
「うん……」
砂の上に座り、一生懸命何かを制作している子どもも気になるけれど、俺が近寄ると逃げてしまうだろう。子どもじゃなく、大人が。
「いいお散歩になりましたねえ」
「うん……」
帰り道は、少し気分が落ち込んでいた。初めての遊具は、あんなに楽しかったのにな。
「公園は、あまり楽しくなかった?」
「んーん」
楽しかった。もっと滑りたかった。ブランコも、もっと大きく揺らしてみたかった。砂も、触ってみたかった。
でも、俺がいたら怖いみたいだから。
「末良が歩けるようになったら、一緒に公園で遊んでほしいのですが、付き合って頂けますか?」
「いいの?」
「成人さんは、ずっと末良のお兄ちゃんでしょう?」
「うん」
斑鹿乃の腕の中で、ご機嫌な末良が俺に手を伸ばす。にこにこ笑っている。
「ほらね。最近は、知らない人を見ると、いやーって泣くのに成人さんには、にこにこして遊ぼうって言ってます」
末良は、すぐ泣くからなあ。
「ふふ。いいよ」
俺が、すべり台の滑りかた、教えてあげる。
1,487
あなたにおすすめの小説
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺
福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。
目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。
でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい…
……あれ…?
…やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ…
前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。
1万2000字前後です。
攻めのキャラがブレるし若干変態です。
無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形)
おまけ完結済み
新しい道を歩み始めた貴方へ
mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。
そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。
その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。
あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。
あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?
※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
【本編完結】才色兼備の幼馴染♂に振り回されるくらいなら、いっそ赤い糸で縛って欲しい。
ホマレ
BL
才色兼備で『氷の王子』と呼ばれる幼なじみ、藍と俺は気づけばいつも一緒にいた。
その関係が当たり前すぎて、壊れるなんて思ってなかった——藍が「彼女作ってもいい?」なんて言い出すまでは。
胸の奥がざわつき、藍が他の誰かに取られる想像だけで苦しくなる。
それでも「友達」のままでいられるならと思っていたのに、藍の言葉に行動に振り回されていく。
運命の赤い糸が見えていれば、この関係を紐解けるのに。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる