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第五章 それは日々の話
98 少しだけだ 緋色
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きゃ、きゃ、と末良のご機嫌な声が響き始めた。知らない場所で、知らない大人に囲まれて両親にしがみついていたが、ようやく慣れてきたかとそちらを見ると、青葉が、可愛らしいぞうの絵のついた手拭いで顔を隠しては、ばあ、と笑顔を覗かせて遊んでいる。プレゼントの手拭いも遊び道具になるとは、流石は青葉。子ども好きが高じて小学校の先生をしていた青葉を相手にしては、どんな泣き顔の子どもも最後には笑ってしまう。
訳もなく苛々していた子どもの頃、常陸丸の家に居座って、青葉と話しているうちに、すっきりして城へ帰っていたことが何度かあった。成人も、あっという間に懐いていたな。
「お、末良も母上にやられたな」
「やられたの?」
「そう。子どもは皆、母上のことが好きになっちゃうんだよなあ。俺、小さい頃は、母上に抱きつこうとする他所の子どもとか見て、俺の母上なのにって腹が立ってたよ。兄上と義姉上と緋色殿下はいいんだけどさ。他の子どもは駄目だって思って」
「何で三人はいいの?」
「家族だから」
「そっかー」
力丸と成人の会話が聞こえてくる。それぞれ末良へのプレゼントを手に持って、渡すタイミングを見計らっているようだ。
「力丸が小さい頃に、母上は俺の!って癇癪を起こす基準ってそういうことだったのかあ」
「義母上を独り占めしたい訳じゃ無かったのね」
机を元に戻して、団子を食べやすいように配置していた常陸丸と乙羽が俺の横に来て、力丸の話に頷いている。
俺は、いいのか。
そりゃそうか。いやいやとばかり言う反抗期に、俺の髪の毛を引っ張ったり、頬をつねったりしたことは忘れてないからな、力丸。
「末良、どうぞ」
「あい」
青葉とひとしきり遊んで、すっかりご機嫌になった末良に成人がプレゼントを差し出した。機嫌の良い所へ、顔見知りの成人が見えたので、更ににこにことした末良が、嬉しそうに桃色の紙袋を受け取る。他の者が渡した青や緑の包装紙に混じって、とても綺麗に見えた。くしゃ、と紙袋を握りながら受け取った末良が、ぺこりと頭を下げる。
可愛い、とあちらこちらで声が上がった。
「ありがとうってできるのね。すごい」
乙羽が感心している。ついこの間まで、寝た姿勢で手足をばたばたするだけだったのにな。
「あい」
頭を上げた末良が、握った袋を成人に差し出した。
ん?
「あ、えーと。ありがと」
受け取った成人が、ぺこりと頭を下げる。末良は満面の笑みで拍手した。
「末良、どうぞ」
「あーい」
ぺこり。
「おい。これはいつ受け取るんだ?」
「しばらく続きますね」
「青葉」
「無限どうぞ、ありがとうごっこです」
「何が楽しいんだ?」
「子どもは、同じことの繰り返しが好きですからねえ」
「…………」
「しかも、いつまでも付き合ってくれるなるちゃん相手ですから、いつまで続くことやら」
プレゼントを受け取って、ありがとうと頭を下げる。上手にできた、と褒めるところまでの一連の流れが、楽しそうに繰り返されている。成人はよく、根気よく付き合えるな。
いや。誰もが辿ってきた道筋を辿っていないから、今、末良と共に辿っているのかもしれない。
座ってのんびりと話しながら、団子を食べる者が増えてきた。
仕方無い。今日は主役だからな。末良に成人を少し、貸してやろう。
少しだけな。
訳もなく苛々していた子どもの頃、常陸丸の家に居座って、青葉と話しているうちに、すっきりして城へ帰っていたことが何度かあった。成人も、あっという間に懐いていたな。
「お、末良も母上にやられたな」
「やられたの?」
「そう。子どもは皆、母上のことが好きになっちゃうんだよなあ。俺、小さい頃は、母上に抱きつこうとする他所の子どもとか見て、俺の母上なのにって腹が立ってたよ。兄上と義姉上と緋色殿下はいいんだけどさ。他の子どもは駄目だって思って」
「何で三人はいいの?」
「家族だから」
「そっかー」
力丸と成人の会話が聞こえてくる。それぞれ末良へのプレゼントを手に持って、渡すタイミングを見計らっているようだ。
「力丸が小さい頃に、母上は俺の!って癇癪を起こす基準ってそういうことだったのかあ」
「義母上を独り占めしたい訳じゃ無かったのね」
机を元に戻して、団子を食べやすいように配置していた常陸丸と乙羽が俺の横に来て、力丸の話に頷いている。
俺は、いいのか。
そりゃそうか。いやいやとばかり言う反抗期に、俺の髪の毛を引っ張ったり、頬をつねったりしたことは忘れてないからな、力丸。
「末良、どうぞ」
「あい」
青葉とひとしきり遊んで、すっかりご機嫌になった末良に成人がプレゼントを差し出した。機嫌の良い所へ、顔見知りの成人が見えたので、更ににこにことした末良が、嬉しそうに桃色の紙袋を受け取る。他の者が渡した青や緑の包装紙に混じって、とても綺麗に見えた。くしゃ、と紙袋を握りながら受け取った末良が、ぺこりと頭を下げる。
可愛い、とあちらこちらで声が上がった。
「ありがとうってできるのね。すごい」
乙羽が感心している。ついこの間まで、寝た姿勢で手足をばたばたするだけだったのにな。
「あい」
頭を上げた末良が、握った袋を成人に差し出した。
ん?
「あ、えーと。ありがと」
受け取った成人が、ぺこりと頭を下げる。末良は満面の笑みで拍手した。
「末良、どうぞ」
「あーい」
ぺこり。
「おい。これはいつ受け取るんだ?」
「しばらく続きますね」
「青葉」
「無限どうぞ、ありがとうごっこです」
「何が楽しいんだ?」
「子どもは、同じことの繰り返しが好きですからねえ」
「…………」
「しかも、いつまでも付き合ってくれるなるちゃん相手ですから、いつまで続くことやら」
プレゼントを受け取って、ありがとうと頭を下げる。上手にできた、と褒めるところまでの一連の流れが、楽しそうに繰り返されている。成人はよく、根気よく付き合えるな。
いや。誰もが辿ってきた道筋を辿っていないから、今、末良と共に辿っているのかもしれない。
座ってのんびりと話しながら、団子を食べる者が増えてきた。
仕方無い。今日は主役だからな。末良に成人を少し、貸してやろう。
少しだけな。
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