【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第五章 それは日々の話

195 真剣勝負  成人

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成人なるひとさま、じゃんけん」

 すっかり溶けてきたアイスクリームをちまちますくっていたら、灯可とうかがずいっと俺の席の近くに回ってきた。

「まだ食べ終わってない。待ってろ」
「アイスクリーム、溶けてるじゃないですか。遅いですよ。私、だいぶ待ちました」
「お前……」

 緋色ひいろがお返事をしたら、灯可とうかが言い返している。
 じゃんけんってさ、何か順番とか決めるためにするんだよね?灯可とうかは、何でそんなにじゃんけんしたいの?
 あ。
 俺もさっき、何にも決めないのにやってたな。あー、うん。そういうことか。うーん、でもあれ、何を出すか見えちゃうんだよなあ。見えたら、俺はそれに勝てる手を出すし、そしたら絶対勝てるんだけど、どうしたらいいんだろ。皆、何で負ける手を出すんだ?
 急いで、溶けたアイスクリームの残りをこくこく飲んで緋色ひいろの膝から下りようとしたけど、下りられない。
 ん?
 緋色ひいろは俺を抱っこしたまま向きを変えた。

「ほら。とっととじゃんけんしろ」

 このまま?
 まあ、いいけど。

「じゃんけん、ぽん」

 勝った。

「もう一回!じゃんけん、ぽん。うう。もう一回」

 いいけどさ。

「なんで?なんで、あいこにすらならないの?」

 十回ほど繰り返したところで、灯可とうかが崩れ落ちた。
 なんで、と言われましても……。

「面白いな。じゃんけんでそんなことするとは考えたことなかった」

 緋色ひいろがけらけら笑う。いつの間にか、お酒臭いよ?
 
「そんなこと?」
「相手の手の動きを見切ってるんだろ?」
「んー?見えてるだけ」
「じゃんけんってのは、そういう遊びじゃないんだがなあ」

 え?違うの?

「俺、目、つぶろうか?」
「うー。……本当に何か決めるときは、成人なるひとさまは目つぶって」
「分かった」

 考えていた灯可とうかが、俺の手を引っ張った。緋色ひいろの膝から下ろされる。
 なになに?
 後ろの方の席に、ずんずん歩いていく。
 
緋椀ひまり兄さま。成人なるひとさまとじゃんけんしてみてください」

 あ、緋椀ひまりだ。今日も三雲みくもは隣にいて、友達のたからと喋っている緋椀ひまりをにこにこ見てる。

「じゃんけん?」
作治さくじおじ様でもいいです。成人なるひとさまとじゃんけん」
「私がしようかな?」

 たからがひょいと手を挙げた。

「うーん。たから兄さまでは勝てないです」
「まあまあ。じゃんけんなんて運だよ。ほら、じゃんけんぽん」

 勝った。

「おや?」
「だから言ったじゃないですか」
「ふーむ。よし、おじさんもやってみるか」

 じゃんけんぽん。
 あ。三雲みくもの手は、少し分かりにくい。でも、間に合った。勝った。

「ははあ、成る程。見たか、緋椀ひまり
「ええ。分かりました。よし、成人なるひと。やろっか」

 緋椀ひまりが真剣な顔でこっちを向く。わ、何かこの緊張感久しぶり。

「待って待って。じゃんけんってこんな張り詰めた空気でするもんだっけ?」
たから兄さま、うるさい」

 いくよー。
 じゃんけん、ぽん。
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