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第五章 それは日々の話
210 微熱 成人
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「お前、幸せか?」
たこ焼き屋さんの翌日、自分の布団の中で鼻水を拭いている俺のところへお見舞いに来た力丸が、ぽつりと言った。
変なの。
いつもなら、昨日寒かったのに外に出るからそんなことになるんじゃん、とか言いながら笑うとこなのに。
「幸せ」
鼻をすすりながら答えると、そっかって笑う。あんまり元気がないね。
「力丸は?」
「へ?」
「くしゅんっ」
あああ。鼻がむずむずするう。
「ああほら、拭いてやるから手を出すな」
部屋の中は暖かいし、今日はなんと微熱なので、大してしんどくもない。手を出しても寒い訳じゃない。微熱ってのは、ちょっとだけいつもより体の熱が高いだけだからね。いっぱい熱くて息が苦しいときと違って、ちょっと怠いだけなんだ。ほんとに、ちょっとだけだから。
「大丈夫」
「いいから」
ちり紙で優しく鼻を拭ってくれるから、甘えておいた。俺がやると、だんだん鼻の下が赤くなってくるけど、力丸はそーっと拭いてくれるから赤くならない。
「へへ。幸せ」
少し涙の浮かんだ目で笑ったら、ぽろりとしずくが落ちた。
俺の、背の低いベッドの横にペタンと座った力丸は、そのしずくもちり紙で丁寧に拭き取る。顔が近い。あんまり近くにいると、風邪がうつるかもよ?
「力丸。うつる」
「ああ。大丈夫。俺、丈夫だし。お前の風邪は基本的にうつるようなもんじゃないって、前に生松先生が言ってたから」
「ふーん?」
「お前が体調崩す原因のもんは、だいたい皆、子どもの時に免疫がついてるらしい」
「うん?」
「まあだからさ。うつらないってことだから、心配すんな」
「ん」
それなら、安心。
この間壱臣が風邪引いて、半助にうつしたらいけないからって別々に寝ようとしたら半助が、しんどいときに側にいられないんじゃ伴侶の意味がないって怒って大喧嘩してたから。風邪ってうつるのかとびっくりした。それなら俺だって、緋色にうつしたくないなって思ったけど、しんどいときほど側にいてほしいのも確かで。
これって難しい問題だよね。
「今日、休み?」
「うん。休みにしてもらった。集中できなくて」
「?」
「ああ、いや。休みだよ」
「ふーん。ここにいる?」
「殿下が戻ってくるまでいようかな」
ふふ。嬉しい。
「本、読んで」
起き上がるのはしんどいんだけど、朝ごはんを食べただけでもう一回眠るほどしんどい訳でもない。
朝ごはんは、まあ、その、ミックスジュース飲んだだけだけども。
緋色は御前会議が休めなくて、お城に行かなくちゃならなかった。微熱だし、皆いるから大丈夫って言ったけど、いなくなってみたら、あんまり大丈夫じゃなかった。
俺、お布団にいられたらそれで良かったはずなのに、変なの。
力丸は、俺の本棚から絵本を持ってきて読んでくれた。
「成人。赤鬼泣いてるのに、何笑ってんだよ。ちゃんと聞いてるか?」
「ん?」
ごめん。頭がぼんやりしてきて、お話はあんまり聞いてなかった。力丸が絵本を読んでくれるのが嬉しくて、声が聞こえるのがいいなって思って……だから……。
「寝たのか?早く元気になれよ」
「ん……」
ああ、安心する……。
「寝てもここにいるから。ああ、そうだ。俺もな、俺も幸せだからな」
うん……。
たこ焼き屋さんの翌日、自分の布団の中で鼻水を拭いている俺のところへお見舞いに来た力丸が、ぽつりと言った。
変なの。
いつもなら、昨日寒かったのに外に出るからそんなことになるんじゃん、とか言いながら笑うとこなのに。
「幸せ」
鼻をすすりながら答えると、そっかって笑う。あんまり元気がないね。
「力丸は?」
「へ?」
「くしゅんっ」
あああ。鼻がむずむずするう。
「ああほら、拭いてやるから手を出すな」
部屋の中は暖かいし、今日はなんと微熱なので、大してしんどくもない。手を出しても寒い訳じゃない。微熱ってのは、ちょっとだけいつもより体の熱が高いだけだからね。いっぱい熱くて息が苦しいときと違って、ちょっと怠いだけなんだ。ほんとに、ちょっとだけだから。
「大丈夫」
「いいから」
ちり紙で優しく鼻を拭ってくれるから、甘えておいた。俺がやると、だんだん鼻の下が赤くなってくるけど、力丸はそーっと拭いてくれるから赤くならない。
「へへ。幸せ」
少し涙の浮かんだ目で笑ったら、ぽろりとしずくが落ちた。
俺の、背の低いベッドの横にペタンと座った力丸は、そのしずくもちり紙で丁寧に拭き取る。顔が近い。あんまり近くにいると、風邪がうつるかもよ?
「力丸。うつる」
「ああ。大丈夫。俺、丈夫だし。お前の風邪は基本的にうつるようなもんじゃないって、前に生松先生が言ってたから」
「ふーん?」
「お前が体調崩す原因のもんは、だいたい皆、子どもの時に免疫がついてるらしい」
「うん?」
「まあだからさ。うつらないってことだから、心配すんな」
「ん」
それなら、安心。
この間壱臣が風邪引いて、半助にうつしたらいけないからって別々に寝ようとしたら半助が、しんどいときに側にいられないんじゃ伴侶の意味がないって怒って大喧嘩してたから。風邪ってうつるのかとびっくりした。それなら俺だって、緋色にうつしたくないなって思ったけど、しんどいときほど側にいてほしいのも確かで。
これって難しい問題だよね。
「今日、休み?」
「うん。休みにしてもらった。集中できなくて」
「?」
「ああ、いや。休みだよ」
「ふーん。ここにいる?」
「殿下が戻ってくるまでいようかな」
ふふ。嬉しい。
「本、読んで」
起き上がるのはしんどいんだけど、朝ごはんを食べただけでもう一回眠るほどしんどい訳でもない。
朝ごはんは、まあ、その、ミックスジュース飲んだだけだけども。
緋色は御前会議が休めなくて、お城に行かなくちゃならなかった。微熱だし、皆いるから大丈夫って言ったけど、いなくなってみたら、あんまり大丈夫じゃなかった。
俺、お布団にいられたらそれで良かったはずなのに、変なの。
力丸は、俺の本棚から絵本を持ってきて読んでくれた。
「成人。赤鬼泣いてるのに、何笑ってんだよ。ちゃんと聞いてるか?」
「ん?」
ごめん。頭がぼんやりしてきて、お話はあんまり聞いてなかった。力丸が絵本を読んでくれるのが嬉しくて、声が聞こえるのがいいなって思って……だから……。
「寝たのか?早く元気になれよ」
「ん……」
ああ、安心する……。
「寝てもここにいるから。ああ、そうだ。俺もな、俺も幸せだからな」
うん……。
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