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第五章 それは日々の話
211 ツーカーの仲 力丸
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「うわっ」
覚醒する前に、体はその手を避けていた。
やるな、俺。
そして危ねえよ、殿下。寝てるときに攻撃しないでくれ。
ちっ、と舌打ちが聞こえる。
「城にいねえと思ったら、さぼりか」
頭を掴まれ、耳元で囁かれた。ちょっと痛い……。
そうやって声を押さえても無理だろ。成人も起きるよ、これは。
そう思って今まで頭を置いていた布団を見たが、成人は口を半開きにして寝息を立てている。鼻が詰まってるから、口開いちゃうよな。喉渇きそうだな。
…………。
「あれ?」
「静かにしろ。せっかく寝てるなら起こすな」
ずるずると引っ張られて、成人の布団から離される。膝に置いたままだった絵本が、とさりと落ちた。
「読んでやってたのか?ずいぶん、しんみりした絵本を選んだな」
ソファの前の机に昼食を並べていた兄上が笑う。
「あー。何か、俺の気分」
「はあ?お前の気分で選ぶな」
「なんかさ、明るい声が出せそうに無かったから、こういうのがいいかなって思ってさ」
「……こういうのも好きなのか?」
「へ?俺?」
「ばあか。誰がお前の好みなんか聞くか。成人に決まってるだろ」
ああ。はいはい。
「んー。別に話は何でもよかったみたい。俺の声が聞きたかったんじゃね?」
目の前に手が飛んできた。
「げ」
「避けるな、ばか」
「やめてくださいよ。危ないでしょ」
「とりあえず一発殴らせろ」
「嫌ですよ。何で殴られなきゃいけないんですか」
「腹立つから」
「理不尽」
ほんと、理不尽。避けるでしょ、そりゃ。
「ほら、殿下。遊んでないで昼ごはん食べてしまってください。休憩時間終わっちまいますよ」
御前会議の昼休憩の間に帰ってきたのか。いくら近くても大変だろうに。
「どんな感じだ?」
主語無しで誰でも分かると思わないでくださいよ。
「我が儘言う気力はありました」
「ああ。本?」
「本、読んでって言ってたから」
「そうか」
緋色殿下は、ご飯を食べながら、じっと寝ている成人を見ている。この人がこんな顔をするなんて、想像もできなかった。
「力丸。お前も食べてしまえ」
ぼけっと緋色殿下の顔を見ていると、兄上に声を掛けられる。よく見たら、俺の分の昼食も並んでいた。小さな雑炊の入れ物も、蓋を開けて冷ましてある。
成人、ひと眠りしたら、食えるかな?食えるといいな。
「朝は、ミックスジュースだけだったからな。起きたら食わせておいてくれ」
「起こさねえの?」
「お前がいるなら大丈夫だろ」
たぶん、緋色殿下の声を聞きたいと思うけど。寂しがってたような気がするけど。
教えるべきかどうか迷うなあ。
「にやにやすんな」
そんなことを考えながら昼ごはんを食べてたら、ぱん、と今度こそ頭を軽く張られた。
「痛え」
「そんなわけあるか、ばか」
うん。本当は痛くない。俺はこの人が好きだから、教えてあげよう。
「起こした方がいいよ。あいつ、寂しがってた」
そうか、と呟く口元が緩んでいる。
いいな、こういうの。
昨日落ち込んだ気分が、あっという間に浮上した。
覚醒する前に、体はその手を避けていた。
やるな、俺。
そして危ねえよ、殿下。寝てるときに攻撃しないでくれ。
ちっ、と舌打ちが聞こえる。
「城にいねえと思ったら、さぼりか」
頭を掴まれ、耳元で囁かれた。ちょっと痛い……。
そうやって声を押さえても無理だろ。成人も起きるよ、これは。
そう思って今まで頭を置いていた布団を見たが、成人は口を半開きにして寝息を立てている。鼻が詰まってるから、口開いちゃうよな。喉渇きそうだな。
…………。
「あれ?」
「静かにしろ。せっかく寝てるなら起こすな」
ずるずると引っ張られて、成人の布団から離される。膝に置いたままだった絵本が、とさりと落ちた。
「読んでやってたのか?ずいぶん、しんみりした絵本を選んだな」
ソファの前の机に昼食を並べていた兄上が笑う。
「あー。何か、俺の気分」
「はあ?お前の気分で選ぶな」
「なんかさ、明るい声が出せそうに無かったから、こういうのがいいかなって思ってさ」
「……こういうのも好きなのか?」
「へ?俺?」
「ばあか。誰がお前の好みなんか聞くか。成人に決まってるだろ」
ああ。はいはい。
「んー。別に話は何でもよかったみたい。俺の声が聞きたかったんじゃね?」
目の前に手が飛んできた。
「げ」
「避けるな、ばか」
「やめてくださいよ。危ないでしょ」
「とりあえず一発殴らせろ」
「嫌ですよ。何で殴られなきゃいけないんですか」
「腹立つから」
「理不尽」
ほんと、理不尽。避けるでしょ、そりゃ。
「ほら、殿下。遊んでないで昼ごはん食べてしまってください。休憩時間終わっちまいますよ」
御前会議の昼休憩の間に帰ってきたのか。いくら近くても大変だろうに。
「どんな感じだ?」
主語無しで誰でも分かると思わないでくださいよ。
「我が儘言う気力はありました」
「ああ。本?」
「本、読んでって言ってたから」
「そうか」
緋色殿下は、ご飯を食べながら、じっと寝ている成人を見ている。この人がこんな顔をするなんて、想像もできなかった。
「力丸。お前も食べてしまえ」
ぼけっと緋色殿下の顔を見ていると、兄上に声を掛けられる。よく見たら、俺の分の昼食も並んでいた。小さな雑炊の入れ物も、蓋を開けて冷ましてある。
成人、ひと眠りしたら、食えるかな?食えるといいな。
「朝は、ミックスジュースだけだったからな。起きたら食わせておいてくれ」
「起こさねえの?」
「お前がいるなら大丈夫だろ」
たぶん、緋色殿下の声を聞きたいと思うけど。寂しがってたような気がするけど。
教えるべきかどうか迷うなあ。
「にやにやすんな」
そんなことを考えながら昼ごはんを食べてたら、ぱん、と今度こそ頭を軽く張られた。
「痛え」
「そんなわけあるか、ばか」
うん。本当は痛くない。俺はこの人が好きだから、教えてあげよう。
「起こした方がいいよ。あいつ、寂しがってた」
そうか、と呟く口元が緩んでいる。
いいな、こういうの。
昨日落ち込んだ気分が、あっという間に浮上した。
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