【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第六章 家族と暮らす

57 ねえ、教えて  成人

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 え?違った?俺、間違った?
 朱実あけみ殿下のびっくりした顔を見て、びっくりしてしまう。
 だってずっと、緋色ひいろにいてほしいって言ってるから、俺とおんなじだと思ったんだけどなあ。寂しいんだよね?

「ええっと。今日は、緋色ひいろいた方がいい?」
「あ、ああ。できれば……」

 いつもの朱実あけみ殿下の顔じゃない顔で、朱実あけみ殿下の声じゃないみたいな弱い声で朱実あけみ殿下は言う。
 うん。やっぱり寂しかったのかな。俺たち新婚旅行してたもんね。そしたら朱実あけみ殿下は緋色ひいろに会えなかったもんね。うん。今日は朱実あけみ殿下の順番かも。
 仕方ない、と緋色ひいろの顔を見た。
 あれ?すんごく甘いものを食べた後みたいな顔してる。俺が美味しいって思った食べ物を、美味しいよって緋色ひいろの口に入れたら、ああ、甘いなって呟いてお茶を飲むまでの間に見せる顔。あ、緋色ひいろ甘いの苦手だったーって、いつもそこで思い出すんだ。ごめんね。
 その、いつもちょっとの間だけ見せるしかめっ面が、今はずっと顔に張り付いている。
 緋色ひいろ朱実あけみ殿下がいなくても、寂しくないのかあ。そうかあ。

「俺は、今まで通り離宮いえの執務室で仕事がしたい」
「こちらにいた方が手間が少ないだろう?」
「少々手間をかけてでも、居心地の好い場所で仕事をしたい」

 緋色ひいろは、もうおうちに帰るって言ってるから、ここのお仕事は終わった?おうちでもできる?緋色ひいろはお仕事を勝手に休んだりしないし、自分のお仕事から逃げたりしないからきっとそう。
 そういうとこ、すごく好き。俺も、そういう格好いい男になりたいんだ。お仕事はちゃんとして、お休みの時はいっぱい楽しいことをするっていう格好いい男に!
 やっぱり今日は、俺の順番じゃないな。

「今日は、朱実あけみ殿下の順番にする」
「はああ?」

 あー、うーん。でも緋色ひいろが嫌なんだった……。

「いいか成人なるひと、よく聞け」
「うん」
「こいつは、あ、いや、皇太子殿下はな。俺とお前の結婚をなかったことにしようとしてたんだぞ」

 結婚を無かったことに?
 一番好き同士なのに?

「なんで?」
「知るか!」

 大きい声に、ひゃと首を竦めたら、ああ、すまんすまんとぎゅっと抱っこしてくれた。大丈夫。体が勝手に跳ねただけ。緋色ひいろが何をしたって絶対怖くないからね。

「理由とかどうでもいい。俺が、そんな奴と近くで仕事したくないってだけ」
「そっか」

 じゃあ、仕方ないなあ。
 でも、聞くだけ聞いてみてもいいんじゃない?

「なんで?」

 ソファにぐったり座って、ちょっとうつ向いている朱実あけみ殿下に聞く。
 知りたいな。
 朱実あけみ殿下の気持ちを聞いてみたい。
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