【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第六章 家族と暮らす

56 成人の提案  緋色

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「んー。でも、俺も一緒にいたいから順番でいい?」
「は……?」
「なに……?」

 大人しく膝の上にいた成人なるひとが、俺の顔を見て朱実あけみの顔を見て口を開く。
 朱実あけみがぽかんとしているのは当然だ。俺にも話の流れが分からない。でもってなんだ、でもって。どこから話が繋がってなんだ?
 成人なるひとの説明を待ってみるが、どうやら成人なるひとは俺か朱実あけみの返事待ちらしい。朱実あけみだろうな……。俺に向けての言葉だったら分からないはずがない。こいつが口のきけないふりをしてた時だって、言いたいことはなんとなく分かったんだから。

「……何が順番なんだ?」

 朱実あけみを助けるつもりは微塵もないんだが、このままここに居てもらちが明かない。成人なるひとが来てくれたから、まあ、こうしてくっついているのも悪くはないが、不機嫌な朱実あけみの繰り言が聞こえてくるから、折角の良い気分が台無しだ。
 だいたい仕事が進まん。俺は、仕事を溜めるのは嫌いなんだ。やらなきゃいけないことはちゃっちゃっとやって、成人なるひとと一緒にいる時間を少しでも長く取りたい。
 別に何をしなくたっていい。成人なるひとがお絵描きしてる横で本を読んでるだけでいいんだ。こんなところで座って、仕事に何の関係もない話をくどくどと聞いているくらいなら、とっとと仕事を終わらせたい。

緋色ひいろと一緒にいるのが、順番」

 成人なるひとは、何を聞かれているのか、と少し悩んだらしい。ぱちぱちと右目が瞬いてから、ああ、と頷いて答えてくれた。が、余計に分からん。俺と一緒にいるのが、順番?

「順番に一緒にいるのか?誰と誰が?」
「あけ……皇太子殿下と俺が」

 別に、お前は朱実あけみと呼んでも構わないんだけどな。俺は、皇太子殿下と呼ぶことにしたけど。
 いや、まあそれはどうでもいい。

「何で俺が、皇太子殿下と一緒にいなきゃならないんだ?」
「一緒にいないとかなしくなるから」
「かなしい?ああ、寂しい、か?」
「そうそれ。寂しい」
成人なるひとが寂しいんだろ?だから俺は、今から離宮に帰って仕事するぞ?俺も成人なるひとがいないと寂しいからな」
「あ、うーん、うん。だから、皇太子殿下も寂しいから、順番にしようかと思って」
「は?」
「え?」

 ぽかんとしたまま俺たちのやり取りを聞いていた朱実あけみが、驚きの声を上げる。

「皇太子殿下も、緋色ひいろいないと寂しいから。俺とおんなじ。緋色ひいろ、いっぱいいなかったから、いっぱい寂しかったから、今日は帰ったら嫌なんだよね」
「はあ?」

 何で朱実あけみが、俺がいなくて寂しいんだよ。お前には分からないだろうけどな、兄弟は皆仲良しな訳じゃない。特に俺たちは、仲良くないからな?むしろ今、なるべく関わりたくないって思ってるからな?
 俺らの婚姻届を握りつぶすような嫌がらせをする奴だぞ。初めて成人なるひとに会った日に、いきなり銃を向けたことも一生忘れねえからな!
 どうでもよくなっていたことまでまた、むかっ腹が立ってくる。
 やっぱり一回文句は言っておこうかと朱実あけみを睨むと、見たこともないおかしな顔で成人なるひとと俺を交互に見ていた。

「さみしい?私は、緋色ひいろがいなくてさみしい……?」

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