【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第六章 家族と暮らす

68 呼び方のお話  成人

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 緋色ひいろ朱実あけみ殿下の執務室で、いやだいやだと言いながらお仕事をし始めた。
 俺のお仕事は終わりだし、帰ろうかな、と小部屋で、持ってきたお茶とかまとめていると、使用人が一人、頭を下げて入ってきた。小部屋の中を元通りにするんだって。お手伝いするね、と言うと、ほんのちょっと笑って、ありがとうございますって言ってくれた。この人も、さっき部屋に居て朱実あけみ殿下に湯飲みを渡していた人と同じ服を着ている。細くて、背もあまり大きくない人で、そういうとこも似てる。

「私は朱実あけみ殿下の侍従で、本居もとい七伏ななふせと申します」
成人なるひとです」
「はい、成人なるひと殿下。よろしくお願い致します」
「殿下?」

 俺の呼び名は色々あるけど、そういえば最近そう呼ぶ人がいる。成人なるひと、とかなる、ってこっちを見て言ってたら俺のことだなって思って、成人なるひとさまでも、成人なるひとさんでも、成人なるひとちゃんでも、なるでもなる坊でも成人なるひとでも返事をしてたけど、殿下、も俺のこと?殿下、は緋色ひいろのことじゃない?
 朱実あけみ殿下も殿下だけど、殿下、だけで呼ばれているのはあまり聞いたことがない。朱実あけみ殿下、か皇太子殿下、だ。
 緋色ひいろと一緒にいると、どっちのことか分からなくなるからかな。それとも、朱実あけみ殿下を縮めて呼ぶのは駄目で、緋色ひいろはいいのかな。
 七伏ななふせは、首を傾げた俺と一緒に首を傾げた。

「殿下は緋色ひいろのこと?」

 あ、じゃあ緋色ひいろの嫁だから、成人なるひと緋色ひいろのってことで、成人なるひと殿下?
 ん?でも、そうしたら朱実あけみ殿下も緋色ひいろの嫁?

「殿下、というのは皇族の敬称でございます」
「けいしょう」
「敬って呼びかける時の呼び方です」
「ふーん」

 今日は帰ってから調べる言葉が多い。書いておいた方がいいかな。

成人なるひと殿下は緋色ひいろ殿下のご伴侶となられましたので、正式に皇族となられました。従って、呼びかける時には殿下と敬称を付けるのでございます」
「ふーん」

 だいぶ前から伴侶だし俺は俺のままだけど、呼び方が変わるってこと?
 人になって名前をもらって色々な呼び方されたけど、これが一番変な感じ。

成人なるひとでいいけど」
「私の立場上、そういうわけには参りません。どうかご容赦を」
「ふーん。俺は七伏ななふせに何を付ける?」

 考えたこと無かったなあ。名前の後ろに付けるもの、色々と意味があったんだな。俺は、何となくで付けてた。付けない時の方が多いけど。法則があるなら聞いておこう。
 七伏ななふせは、え?って顔で俺を見た。

成人なるひと殿下は、皇族の方々以外に呼びかける際、何も付ける必要はございませんよ」

 そうなの?皇族は、殿下とか付く人?じゃ、緋見呼ひみこさまにも何にも付けないの?
 あ、うーん。でも、緋見呼ひみこさまは緋見呼ひみこさまって感じがするからそのままにする。

「うーん?分かった」

 分かんないとこもあるけど、法則があることに気付けたのは良かったな。俺は、あんまり気にしなくていいってことだよね?
 分かんなかったらまた、七伏ななふせに教えてもらおう。
 
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