【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第六章 家族と暮らす

69 提案  成人

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「トイレ行ってから帰るねー」

 七伏ななふせと小部屋のお片付けをした後は、本当に俺のお仕事はおしまい。七伏ななふせは細いのに力持ちで、タイヤが付いていても重たいベッドを、一人でがらがらと運んでいってしまう。運び出されていたソファや机も、半助と二人で運んできてしまった。半助も、片手なのに運べちゃうんだな。すごいなあ。
 これで机を拭いてください、と渡された濡れた布巾は、真っ白で綺麗だった。拭いた机も何にも汚れてなくて、床を拭く手伝いもしたい、と言ったのだけど、それはご勘弁ください、と七伏ななふせに言われた。
 何で?俺、離宮ではよくお手伝いしてるから、下手くそじゃないと思うよ?
 でも、七伏ななふせにも色々あるらしいので床を拭くのはあきらめて、そのお仕事をしっかり見させてもらった。うん。勉強になりました。

成人なるひと殿下は、この後のご予定は……」

 トイレに行って、ご挨拶して帰ろうと思っていたら、朱実あけみ殿下の執務室で机に座ってお仕事をしていた人がトイレの前に来て、小さな声で聞いてきた。執務室を出た所にあるトイレ。その前の廊下には、今は他に誰もいない。
 もちろん護衛の半助は近くにいるけれど、止めないから、気にせずしゃべっていいってことだ。

「歩いておうちに帰る」
「あ、えーと、その後は……」

 今日は、青葉あおばとの朝のお勉強の時間が無しになった。青葉の知り合いの子どもが風邪を引いて、お母さんにもその風邪が移って寝込んでいて、兄弟を預けるところがなくて困っていたから、青葉が預かることにしたのだって。明日とその次くらいまで、お勉強の時間はお休みだ。
 そんなときに緋色ひいろもいなくて、寂しくてお城までお茶を届けに来た。
 帰ってからもお掃除とか手伝って、お昼御飯食べるくらいかな。お昼からの予定は、お昼から決める。眠たいときはちゃんと寝るよ。

「その後は、お掃除の手伝いと、お勉強」

 勉強は、後でちゃんとするつもり。一人だと寂しいから、緋色ひいろがいなくてもおうちの緋色ひいろの執務室でしようかな。さい三郎さぶろうはいつもいるし。睦峯むつみねもいることが多い。
 皆と一緒に字を書いたり辞書を調べたりしたら、寂しくないかもしれない。

「お勉強というのは、教師が離宮に来られて授業をお受けになられるのですか?」
「今日と明日とその次は、青葉あおばお休み」
「……青葉さま、と仰る方が教師でいらっしゃいますか?」

 そうそう。勉強を教えてくれる人。

「ならば今日は、離宮でなくてもお勉強はできますか?」

 うんうん。俺の勉強の道具があればどこでも。

「もしよろしければ、このままこちらでお勉強なさいませんか」
「ん?」

 文官さんは、深々と頭を下げた。

「執務室にいて頂きたいのです。私たちは、緋色ひいろ殿下のお怒りに触れた際の正しい対処法を、存じ上げておりませんので」

 んん?

「その、つまり……」
「俺が、朱実あけみ殿下のお部屋で勉強するの?」
「ええ。ええ、はい」

 あ、じゃあ緋色ひいろと一緒にいられる?
 嬉しい!
 そうする!
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