【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第七章 冠婚葬祭

31 考えたくもないよ  成人

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「何があるか分からない、のだから、今のうちから、生涯ただ一人などと言って、その……決めつける必要は……」

 朱実あけみ殿下はそれでも、笑っているかのように口の端を持ち上げながら緋色ひいろに言った。緋色ひいろはもう、お返事をする気がないよね。俺の頬にちゅうをし始めたから、朱実あけみ殿下を見てもいない。

「分からぬか。分からぬのだろ、朱実あけみ。お主の一番大切な者は赤璃あかりではないからの」
「え?」

 思わず声が出てしまった。
 何で?
 一番大切な、一番好きな人とその先の人生を共に生きるために結婚をするでしょう?朱実あけみ殿下と赤璃あかりさまは結婚してるのに、朱実あけみ殿下の一番は赤璃あかりさまじゃないの?

赤璃あかりがそれで良いと言うから、止めはせなんだ。朱実あけみはいつか、一番近くに残るのは私しかいないと気付くから、その時まで待てば良いのだと。少なくとも二番手の自信はあると。私なら真っ平御免じゃがな」
「何を、仰っているのです?」
「お主の一番はいつでも緋色ひいろであろ?だから、分からぬのよ」
「何が、分からない、と言うのです?私が、何を分かっていない、と?」

 違う、って言わないんだね。朱実あけみ殿下の一番は緋色ひいろだって言われて、違うって言わない。
 違わないから。
 緋色ひいろが一番だから。
 そんなに驚かなかった。朱実あけみ殿下はいつだって、緋色ひいろのために動いているって分かってた。
 緋色ひいろのことが一番好き同士で、何となく分かりあっているのかな。だから俺たちは、お互いに読むのも大変な手紙を何度も送りあったのかもしれない。

「最も大切な伴侶が手元にいて、その者が儚くなった後のことを思い描く者がどこにおる?他から提案されて、どのように感じるのじゃ?」

 緋色ひいろがいなくなったら。もう会えなくなったら。
 そんなこと考えたくもない。思いたくない。きっと俺が先にいなくなる、と思うことはあったけれど、それも駄目だと気付いた。だって、俺なら耐えられない。緋色ひいろのいない世界に耐えられない。それなら、きっと緋色ひいろもそうだと、俺は思ったんだ。
 
「お主が赤璃あかりの後釜を勧められて、考えておく、と即答するような男だと言うなら、今すぐ赤璃あかりはかえしてもらう。赤璃あかりが良いと言うても聞かぬ。さあ、しかと考えよ」

 俺は、一番好きな人に一番好きと言ってもらえる幸せな時間を大切にしたい。緋色ひいろがいなくなったらどうする?って言われるだけで、悲しい。
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