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第七章 冠婚葬祭
32 分かってみれば簡単なことだった 朱実
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赤璃の後釜?
…………。
そんな者はいない。赤璃は、ごく小さな頃から、私の伴侶になるべく努力してきてくれたのだ。もともと美しい顔も髪もきちんと手入れをし、その辺の暴漢などなら軽く撃退できるくらいに己を鍛え上げ、学校では涼しい顔で良い成績をあげる。
母上のように皇族の重責に押しつぶされることも無く、まるで生まれた時からその地位にいたかのように振る舞うこともできる。すぐ近くに叔母上という見本があったとはいえ、並の女ではそうはいくまい。
私は、赤璃がまだ小さな頃に従妹だと顔を合わせた時から、これが私の伴侶だと決めていたのだ。血が近すぎるだとか、七条では身分が少々低いだとか、様々な横槍は入ったが、赤璃はその存在で全てを黙らせてきた。他の候補など、存在したことは知っていても、顔も名前も覚えてはいない。二条や三条辺りが、勝手に挙げていただけなのだろう。
父上には、一度だけ、本気なのか、と聞かれた。もちろん、と自信を持って答えた。私の伴侶は彼女だけ。そうか、と父は言った。あの時の父上は、どんな顔をしていたのだったか……。
「私の伴侶は赤璃だけ」
そう。今でもそれは変わらない。あれよりいい女などいない。しっかりと世継ぎも生んでくれた。ますます手放せない存在となって私の傍らにいる。
後釜?
誰にそれが勤まるというのか。
「そうであろ」
義母でもある叔母上が言う。何を当たり前のことを、と私は思う。これは一体、何の話を?
今。そう今は、緋色に。成人を生涯ただ一人の伴侶だなどと言う緋色に、成人がいなくなった後の話を……。
「緋色の伴侶も、成人だけじゃと言うておる」
「え……?」
同じな訳がない。私は、私たちはもう何年も共にいて、気持ちを……。
「お主が、伴侶を赤璃だけじゃと言うように、いや、それよりも強い気持ちで、緋色となるは互いをそうじゃと言うておるのだと理解せよ」
「わたし、よりも、強い気持ちで……」
違う。まさか。いや、でも。
「そうであろ。お主の一番は赤璃ではないのだろ?じゃが、この二人は互いが一番じゃ。お主の赤璃への気持ちなど、まだまだ足りぬ」
私の気持ち。
大切な弟。ただ一人、気兼ねなく話せた、私を分かってくれていた弟。いつだって、緋色のことを一番に考えて……。
目の前で、緋色が成人を膝の上に乗せている。成人は寛いでそこに座る。頬を寄せあって、話す。
当たり前の光景。だから、誰も何も言わない。子どもたちでさえ。
そうか。
そうだったのか。
私が赤璃の後釜など考えないのと同じくらい、いやそれ以上に、緋色はそれを考えてはいない。
そんなこと、考えたりしないのだ。
…………。
そんな者はいない。赤璃は、ごく小さな頃から、私の伴侶になるべく努力してきてくれたのだ。もともと美しい顔も髪もきちんと手入れをし、その辺の暴漢などなら軽く撃退できるくらいに己を鍛え上げ、学校では涼しい顔で良い成績をあげる。
母上のように皇族の重責に押しつぶされることも無く、まるで生まれた時からその地位にいたかのように振る舞うこともできる。すぐ近くに叔母上という見本があったとはいえ、並の女ではそうはいくまい。
私は、赤璃がまだ小さな頃に従妹だと顔を合わせた時から、これが私の伴侶だと決めていたのだ。血が近すぎるだとか、七条では身分が少々低いだとか、様々な横槍は入ったが、赤璃はその存在で全てを黙らせてきた。他の候補など、存在したことは知っていても、顔も名前も覚えてはいない。二条や三条辺りが、勝手に挙げていただけなのだろう。
父上には、一度だけ、本気なのか、と聞かれた。もちろん、と自信を持って答えた。私の伴侶は彼女だけ。そうか、と父は言った。あの時の父上は、どんな顔をしていたのだったか……。
「私の伴侶は赤璃だけ」
そう。今でもそれは変わらない。あれよりいい女などいない。しっかりと世継ぎも生んでくれた。ますます手放せない存在となって私の傍らにいる。
後釜?
誰にそれが勤まるというのか。
「そうであろ」
義母でもある叔母上が言う。何を当たり前のことを、と私は思う。これは一体、何の話を?
今。そう今は、緋色に。成人を生涯ただ一人の伴侶だなどと言う緋色に、成人がいなくなった後の話を……。
「緋色の伴侶も、成人だけじゃと言うておる」
「え……?」
同じな訳がない。私は、私たちはもう何年も共にいて、気持ちを……。
「お主が、伴侶を赤璃だけじゃと言うように、いや、それよりも強い気持ちで、緋色となるは互いをそうじゃと言うておるのだと理解せよ」
「わたし、よりも、強い気持ちで……」
違う。まさか。いや、でも。
「そうであろ。お主の一番は赤璃ではないのだろ?じゃが、この二人は互いが一番じゃ。お主の赤璃への気持ちなど、まだまだ足りぬ」
私の気持ち。
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当たり前の光景。だから、誰も何も言わない。子どもたちでさえ。
そうか。
そうだったのか。
私が赤璃の後釜など考えないのと同じくらい、いやそれ以上に、緋色はそれを考えてはいない。
そんなこと、考えたりしないのだ。
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