【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第七章 冠婚葬祭

35 伝説のお菓子  成人

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 挨拶が終わると、お屋敷の中へと案内された。まずは厨房へ寄りたい、とお願いしたら、待ってくれていたおじいさんの使用人に首を傾げられたけど、内緒のおやつをうちの外に持ち出してしまったので、料理人にお話をしないといけない。
 これは、本当に俺の我儘で持ち出したので。
 茉璃まつりは笑って一緒に行ってくれた。茉璃まつりが、アイスクリームを手に持っているしね。うっかり使用人さんにも渡せないのが困る。しんどいのに、ごめんね。
 俺たちが厨房へ入ると、報せがいっていたみたいで五人の料理人が並んで待っていた。え、包拳礼?それは俺にはいらないよ?いや、いるんだったっけ?

「あの、えーと。もういいです」
「はっ」

 包拳礼を解いて頭を上げてくれたので助かった。
 包拳礼を受け取ったって言えばいいのだったかな。皆、何て言っていたっけ?俺にも包拳礼がいるのなら、何か格好良い言い方を考えておかなくちゃいけない。

「あの。いつもお土産のおやつをありがとう。美味しいです」
「はっ。ありがたき幸せにございます」

 灯可とうかは俺のおうちに遊びに来る時に、いつもおやつを持ってきてくれる。そのおやつを作っているのがこの人たちだね。一条家の料理人。俺はいつも美味しく食べてるし、広末ひろすえたちも味見を楽しみにしてる。灯可とうかにうちからお礼の食べ物を持たせるのも楽しいみたい。
 向かって左の端に並んでいた男の人が答えてくれた。他の四人よりちょっと年齢が上なのかな。この人が偉い人?広末ひろすえみたいな?そして五人って多いな。

「それで、えーと、今日のお土産なんだけど……」

 茉璃まつりが、アイスクリームを入れたバッグを差し出す。

「これね。冷凍庫に厳重に保管してちょうだい。成人なるひとさまからのお心遣いよ。くれぐれも内密に」
「内密……ですか ?」
「ええそう。大変な品なのよ」
「冷凍庫……。ま、まさか」

 五人が一斉に入れ物に釘付けになる。

「あれ、ですか……?」

 そ、そんな驚いた顔で全員で見られると、俺までどきどきしてきちゃう。

「あの。一口ずつどうぞって広末ひろすえが。でも、その、作るのは茉璃まつり悪阻つわりの間だけにしてくださいって」
「よ、よろしいのですか……?」
「もし世に出たら、俺が全部責任被る約束で持ってきたの。茉璃まつりにどうしても食べさせたくて」

 一条家で雇われるような料理人なら、皆お城の特別なデザートのことは知っていると思う、と広末ひろすえは言った。

「いつも味見させてくれる土産は、かなり繊細な味付けだ。あそこの料理人なら、実物を見て一口食べたら作れちまうかもしれねえ」
「うん」

 広末ひろすえと同じくらい凄い人がいるんだな、きっと。

「あそこへ持ってって内緒のデザートが広まっちまったら、なる坊の責任になるぞ。いいのか?」
「うん。だって茉璃まつりに元気になってもらいたい」
「……そうか、そうだな。よし」

 そして広末ひろすえはアイスクリームを作ってくれた。けど、一口ずつしか味見は駄目と必ず伝えろとか、作るのは茉璃まつりさまが悪阻つわりの間だけと約束させろとか、俺がたくさん広末ひろすえと約束してから持たされた。
 分かってる。心配してくれているんだよね。一口ずつも食べなければ、皆作れないまんまじゃないか、とかは思ったけど。

「それはほら。だってよ、伝説の菓子だぜ。一口くらい食いたいだろ」
「あーうん。そうか」

 そりゃそうだ。
 料理人じゃなくたって食べたいよね。
 だから、約束ね。

「はっ。誓います!」

 五人の料理人がまた、包拳礼をして深く頭を下げた。
 うん!

「管理をよろしくお願いします」

 上手くいって、喜んでもらえて良かった!
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