【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第七章 冠婚葬祭

54 友人の来訪  弐角

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弐角にかく、来たよー」
「ようこそお越しくださいました、緋色ひいろ殿下。成人なるひとさまと皆様も」
「おう。一泊だけだし、気にするな」

 気にするわ、とは言えへんので、賢く口をつぐんで笑う。このお人に、友人やと言うて貰えるんは名誉なことやけど、ほんま色々と鍛えられるな。
 許しを得たので頭を上げると、緋色ひいろ殿下の斜め後ろに立つ常陸丸ひたちまると目が合った。申し訳なさそうに軽く会釈されて、ああ、一応止めたってことやな、と悟る。うん。お前は偉い。この方の、幼馴染みで友人で副官で護衛なんやから。俺は、友人ってだけでいっぱいいっぱいやのに、こんだけの役割りを持って殿下のお側近くに、二十年近くもおるんやから。

「急なことでごめんなあ、弐角にかく。忙しいやろ?」
おみ、久しぶりや。大丈夫やで。元気そうで良かった」

 おみは、すっかり健康そうな見かけになって、嬉しいばかり。髪の毛が整って、ええ男になったな。落ち着いている様子に安心する。発作を起こした場面は、未だに忘れられん。俺も父上も、一生忘れんと思う。戒めとして、心に刻んでおくべき事やから。
 緋色ひいろ殿下が連れて来なければ、里帰りもせえへん兄上。いや、里帰りなんて思ってへんかもなあ。この国に、おみのええ思い出はないから仕方ない。寂しいけど、こうして殿下の誘いにのって来てくれるだけで、嬉しいことや。
 殿下が買い上げてくれた町屋敷に上がり、気心の知れた者だけで机を囲む。相変わらず、伴の者の少ない皇子さまやな。人のことは言えんけど⋯⋯。

「結婚式の日付けの件を尋ねに来た」

 兄上が、勝手知ったる厨房で茶を淹れて戻ると、殿下方に付いてきた護衛も皆、のんびりと座った。相変わらず緊張感に溢れているうちの護衛の才蔵さいぞうも、手招いて座らせる。大丈夫や。何かあっても、俺の身もついでに守ってくれるやろから、諦めて座っとき。
 俺には感知もできんけど、見えんとこにも何人か護衛がおるんやろ?俺にも、おるし。もう、うちの護衛は、退けられとるかもしれんけどな。

「結婚式の日付けの件?」
「俺が貰った招待状と、壱臣いちおみが貰った招待状の日付けが違っただろ」
「ああー」

 緋色ひいろ殿下個人には送っとらんけど、陛下に送った招待の分は、緋色ひいろ殿下が来てくれはることになったんやな。素直に嬉しい。ほんまは、緋色ひいろ殿下宛てに送りたかったから。やっぱり、よう知らん人より友人に祝ってほしい。
 来て欲しい人宛てに招待状を送れないなんて、面倒臭い身分になってしもたなあ、とちょっと溜め息を吐いとった。ああ、でも、緋色ひいろ殿下なら身分なんて気にせず、したいようにしそうやな。ほんでまた、周りが苦労するんやろ。目に見えるようや。常陸丸ひたちまるが、仕方ないなあって苦笑するとこまで見えるな⋯⋯。

おみのは、まあ、顔合わせみたいな、そんなんしよかな、と思たんで」
「ああ、やっぱりか。一筆入れておけば良いものを。壱臣いちおみから、断りが届く所だったぞ?」
「うわ、そうか。ごめん、おみ。殿下も、お手数お掛け致しました」

 それは俺の失敗や。断られんくて良かった。
 でも、それ、わざわざ聞きに来るほどのことやろか?しかも、殿下が?おみが手紙で尋ねてくれたら、済んだような⋯⋯。
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