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第七章 冠婚葬祭
53 似たもの同士 緋色
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「ただいまー」
「ただいま戻りました」
「おう、早かったな」
予想より早く、成人と作治が城から戻ってきた。ちょうど、成人のおやつ休憩に入る頃を見計らって帰ったのだろう。気にせずとも、おやつも休憩も、成人には必ず取らせるように手配してあるのだが。
まあ、作治らしい有能さだ。
「作治が、もういいって」
「いいのか」
「はい、殿下。大体の希望は伝えて来ましたので、後はデザインが出来てから、細かい所を詰めていこうと思います」
爽やかな笑顔だな、おい。楽しそうで何より。
「作治、すごい。お洋服のこと、色々知っててすごい」
衣装部に付き合っていた成人が、機嫌良く作治を褒める。
「へえ?」
「そのように仰られる程のことは......。けれど、ありがとうごさいます、成人さま」
成人は、この男にやけに懐いている。何となく気付いてはいたが、大した関わりもなかったので放っておいたものが、ここにきて返ってくるとは。放っておくのでは無かった。
「あんまり他の男に懐くな」
そう言って手招きすると、成人は首を傾げつつ、ととっと近寄ってきた。抱き上げると体を預けてくる様子に、ほっとする。
「はは。成人さまに懐いて頂けるとは光栄です」
俺の言葉にも、慌てた様子なく笑う作治には大人の余裕が見え、少しムカついた。
「随分と上機嫌だな」
「先ほど、成人さまにも言われました。年甲斐もなく、はしゃいでいるようです」
「へえ?」
「緋色殿下。ありがとうございます」
作治は、突然、居住まいを正したかと思うと、綺麗な包拳礼をして頭を下げた。
「何だ、突然。離宮で、うちの者が包拳礼をする必要はない、と言ってあるはずだぞ」
「ええ、分かっています。それでも、礼を捧げたい時があるのですよ、殿下。どうか、お受け取りを。俺は、緋椀と結婚式ができることが、嬉しくてたまらぬようです。話を頂いた時から、どうにも、浮かれて仕方ない。落ち着け、落ち着けと自分に言い聞かせてはおるのですが、どうにも......」
顔を上げた作治は、締まらぬ顔で笑っている。
ああ、そうか。そうか、嬉しいか。
「喜んでもらえて、何より」
「男同士で籍を入れることができただけで、この上ない僥倖でしたが、まあ、人の欲望にはきりがないようで」
「はは。そんなにか」
「ええ、もう、自分でも驚くほどのはしゃぎようですよ。緋椀に逃げられぬ程度に気持ちを抑えるのが、大変ですとも」
「あれは照れているだけだから、逃げるなんてことはないぞ」
「よくご存知でいらっしゃる」
作治は、目を細めて笑う。先ほどの、俺が感じた感情と似たものを孕んで。
ああ、成人が何故、この男に懐くのか分かった気がする。
「離宮を出て尚、うちの者と言って頂けることもまた、大変に有り難く。そのことにも、尽きぬ感謝と敬愛を」
もう一度、包拳礼の形で頭を下げた作治は、それでは、仕事がありますので、と素早く七条の屋敷へ帰って行った。
「おやつ、食べていけばいいのに」
「緋椀んとこに、早く帰りたいんだろ」
「あ、そうか」
間違いない。俺も、きっとそうするだろうから。
「ただいま戻りました」
「おう、早かったな」
予想より早く、成人と作治が城から戻ってきた。ちょうど、成人のおやつ休憩に入る頃を見計らって帰ったのだろう。気にせずとも、おやつも休憩も、成人には必ず取らせるように手配してあるのだが。
まあ、作治らしい有能さだ。
「作治が、もういいって」
「いいのか」
「はい、殿下。大体の希望は伝えて来ましたので、後はデザインが出来てから、細かい所を詰めていこうと思います」
爽やかな笑顔だな、おい。楽しそうで何より。
「作治、すごい。お洋服のこと、色々知っててすごい」
衣装部に付き合っていた成人が、機嫌良く作治を褒める。
「へえ?」
「そのように仰られる程のことは......。けれど、ありがとうごさいます、成人さま」
成人は、この男にやけに懐いている。何となく気付いてはいたが、大した関わりもなかったので放っておいたものが、ここにきて返ってくるとは。放っておくのでは無かった。
「あんまり他の男に懐くな」
そう言って手招きすると、成人は首を傾げつつ、ととっと近寄ってきた。抱き上げると体を預けてくる様子に、ほっとする。
「はは。成人さまに懐いて頂けるとは光栄です」
俺の言葉にも、慌てた様子なく笑う作治には大人の余裕が見え、少しムカついた。
「随分と上機嫌だな」
「先ほど、成人さまにも言われました。年甲斐もなく、はしゃいでいるようです」
「へえ?」
「緋色殿下。ありがとうございます」
作治は、突然、居住まいを正したかと思うと、綺麗な包拳礼をして頭を下げた。
「何だ、突然。離宮で、うちの者が包拳礼をする必要はない、と言ってあるはずだぞ」
「ええ、分かっています。それでも、礼を捧げたい時があるのですよ、殿下。どうか、お受け取りを。俺は、緋椀と結婚式ができることが、嬉しくてたまらぬようです。話を頂いた時から、どうにも、浮かれて仕方ない。落ち着け、落ち着けと自分に言い聞かせてはおるのですが、どうにも......」
顔を上げた作治は、締まらぬ顔で笑っている。
ああ、そうか。そうか、嬉しいか。
「喜んでもらえて、何より」
「男同士で籍を入れることができただけで、この上ない僥倖でしたが、まあ、人の欲望にはきりがないようで」
「はは。そんなにか」
「ええ、もう、自分でも驚くほどのはしゃぎようですよ。緋椀に逃げられぬ程度に気持ちを抑えるのが、大変ですとも」
「あれは照れているだけだから、逃げるなんてことはないぞ」
「よくご存知でいらっしゃる」
作治は、目を細めて笑う。先ほどの、俺が感じた感情と似たものを孕んで。
ああ、成人が何故、この男に懐くのか分かった気がする。
「離宮を出て尚、うちの者と言って頂けることもまた、大変に有り難く。そのことにも、尽きぬ感謝と敬愛を」
もう一度、包拳礼の形で頭を下げた作治は、それでは、仕事がありますので、と素早く七条の屋敷へ帰って行った。
「おやつ、食べていけばいいのに」
「緋椀んとこに、早く帰りたいんだろ」
「あ、そうか」
間違いない。俺も、きっとそうするだろうから。
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