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第七章 冠婚葬祭
71 命あっての物種 弐角
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「弐角。その女と、どんな柵があるんだ?切ってやろうか」
「え......?」
「うちの成人への不敬だけで、無礼討ちにできるぞ?」
切る......て、縁を切るんじゃなく?もしかして、物理で首が落ちる......?
まさか。いや、でも。
自然と包拳礼の姿勢を取っていた。
「申し訳ございません、殿下。お手を煩わせること申し訳なく、ただ今すぐにでも椿の処遇を決めたく思います」
椿の腕の一本でも差し出せば、命までは取らずにおってくれるやろか?臣を外に出したんは、血なまぐさいことを見せんため?
背筋に冷や汗が流れる。
「まあ、黙ってろ」
「は......い」
緋色殿下が動く前に、決着をつけなあかんかった。さっきの言葉。見透かされとる。椿は、九鬼の不遇の時代にもついてきてくれた数少ない家臣の中の、最も上位の家の娘。貧乏暮らしやった橙々よりも、裕福な育ちをしとるお姫さま。
親に嫁げと言われて反発し、私より強い男やないと認めない、と木刀で立ち会い、勝ったらしい。あそこの姫は大層強い、との噂だけ聞いた。その後も、結婚したいと申し込んできた男を数人倒した後に、もううんざりだと家を飛び出したらしい。橙々とは学生時代の同級生で、常に護衛を側に置け、と言われた橙々が、護衛に抜擢した。
それらの噂が本当なら、腕っぷしは間違いなく強いはず。けど、護衛いうんは、そういう腕っぷしの強さだけで勤まる仕事じゃない。そういうことを、成人さまは教えてくれはったんや。
責められ、否定されることに耐性がない椿は、いと尊き御方々相手に、失態を犯しすぎた。橙々の命を危険に晒したことへの反省も、あまり感じられない。
これは、俺が、婚約者の命を蔑ろにしていると言われても仕方ない状況や。影さえ付けとけば、いざという時には何とかなると慢心しとった。
「緋色。切ったら駄目だよ。人は殺しちゃいけません、だよ」
成人さま......!
「はは。まあ、そうだったな」
殿下の雰囲気が、ふと緩む。ああ、椿の命は助かった......!
「そうだな......。おいお前、護衛でいたいのか?」
「え......?」
「護衛の仕事を続けたいのか?」
「は、はい......」
「殿下......?」
俺に倣って、包拳礼の形で跪く椿に、直接のお声がけ。護衛は無理やと伝えるんではないのか?
「弐角。この女、しばらくうちで預かる」
「は?」
「離宮で、下働きをやれ」
「した、ばたらき......」
「明日の朝から預かる。明日は、猿回しを見て、動物園にも寄って帰るから出立は早いぞ。間に合うように屋敷へ来い」
「下働き......」
呆然と呟く椿。俺も、ただ呆然と緋色殿下の言葉を聞いていた。
「あ、あの。椿を鍛えてくれはる、いうことでしょうか」
同じく包拳礼の形のまま、橙々がおずおずと殿下に聞く。
「いや?」
「あの、ほな......」
「橙々、有り難く提案を受けよう。殿下、寛大な処置を頂き、ありがとうございます。椿、しっかり働くんやで」
深いお考えは分からん。けど、命あっての物種や。臣を外に出した時点で、何があってもおかしなかった。預ける程度で済んで良かったんや......。
俺たちは、深く深く頭を下げた。
「え......?」
「うちの成人への不敬だけで、無礼討ちにできるぞ?」
切る......て、縁を切るんじゃなく?もしかして、物理で首が落ちる......?
まさか。いや、でも。
自然と包拳礼の姿勢を取っていた。
「申し訳ございません、殿下。お手を煩わせること申し訳なく、ただ今すぐにでも椿の処遇を決めたく思います」
椿の腕の一本でも差し出せば、命までは取らずにおってくれるやろか?臣を外に出したんは、血なまぐさいことを見せんため?
背筋に冷や汗が流れる。
「まあ、黙ってろ」
「は......い」
緋色殿下が動く前に、決着をつけなあかんかった。さっきの言葉。見透かされとる。椿は、九鬼の不遇の時代にもついてきてくれた数少ない家臣の中の、最も上位の家の娘。貧乏暮らしやった橙々よりも、裕福な育ちをしとるお姫さま。
親に嫁げと言われて反発し、私より強い男やないと認めない、と木刀で立ち会い、勝ったらしい。あそこの姫は大層強い、との噂だけ聞いた。その後も、結婚したいと申し込んできた男を数人倒した後に、もううんざりだと家を飛び出したらしい。橙々とは学生時代の同級生で、常に護衛を側に置け、と言われた橙々が、護衛に抜擢した。
それらの噂が本当なら、腕っぷしは間違いなく強いはず。けど、護衛いうんは、そういう腕っぷしの強さだけで勤まる仕事じゃない。そういうことを、成人さまは教えてくれはったんや。
責められ、否定されることに耐性がない椿は、いと尊き御方々相手に、失態を犯しすぎた。橙々の命を危険に晒したことへの反省も、あまり感じられない。
これは、俺が、婚約者の命を蔑ろにしていると言われても仕方ない状況や。影さえ付けとけば、いざという時には何とかなると慢心しとった。
「緋色。切ったら駄目だよ。人は殺しちゃいけません、だよ」
成人さま......!
「はは。まあ、そうだったな」
殿下の雰囲気が、ふと緩む。ああ、椿の命は助かった......!
「そうだな......。おいお前、護衛でいたいのか?」
「え......?」
「護衛の仕事を続けたいのか?」
「は、はい......」
「殿下......?」
俺に倣って、包拳礼の形で跪く椿に、直接のお声がけ。護衛は無理やと伝えるんではないのか?
「弐角。この女、しばらくうちで預かる」
「は?」
「離宮で、下働きをやれ」
「した、ばたらき......」
「明日の朝から預かる。明日は、猿回しを見て、動物園にも寄って帰るから出立は早いぞ。間に合うように屋敷へ来い」
「下働き......」
呆然と呟く椿。俺も、ただ呆然と緋色殿下の言葉を聞いていた。
「あ、あの。椿を鍛えてくれはる、いうことでしょうか」
同じく包拳礼の形のまま、橙々がおずおずと殿下に聞く。
「いや?」
「あの、ほな......」
「橙々、有り難く提案を受けよう。殿下、寛大な処置を頂き、ありがとうございます。椿、しっかり働くんやで」
深いお考えは分からん。けど、命あっての物種や。臣を外に出した時点で、何があってもおかしなかった。預ける程度で済んで良かったんや......。
俺たちは、深く深く頭を下げた。
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