【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第七章 冠婚葬祭

128 聞き逃せない  緋色

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「寝たのか」

 ご足労頂いた叔母上にご挨拶無しでは、後から何を言われるか分からん、と部屋を覗けば、大きなクッションにくたりと体を預ける成人なるひとが目に入った。

「今、寝入った所じゃ。腹がくちくなったからの。よい寝顔じゃ」
「叔母上、ご無沙汰しております」
「久しいな、緋色ひいろ。息災で何より」

 叔母上は、いつでもお元気そうで。
 よい寝顔、の言葉に成人なるひとを見れば、一昨日から、寝ている時に力の入りがちだった目元の力が抜けている。
 ほ、とその隣へ腰を下ろした。
 無理な体勢でなし、気持ち良く寝ているようなので急いでベッドへ移すこともないだろう。少し話してから、移動させるか。

緋色ひいろ殿下。お邪魔しております」
「ああ。よく来てくれた」

 灯可とうかが礼儀正しい挨拶をしてくるのへ、頷きを返す。今日は、成人なるひとが一条の屋敷へと出る予定であったが、この通りの体調なので外出を禁じた。どんな時もとりあえず、大丈夫と言うことは無くなったが、それでも成人なるひとの範囲が広い。少しでも動けるなら大丈夫、というのはどうなんだ?大丈夫と言わない時は、全く目が離せない状態だろうが。
 今日くらいの体調の時は、大丈夫じゃないと言えるようになって欲しいものだな。

「いえ。予定外にお訪ねしてご迷惑ではないかと悩んだのですが、共に菓子が頂けたので良かったです」
「食ったか?」
「はい。うちから持って参りましたゼリーと、こちらの本日の間食であるボーロも一つ、召し上がられていました」

 一つか。小さい丸い菓子は、何の腹の足しにもならなそうだ。ミックスジュースも半分も減っていないぞ。それは全部飲んでおけ。

緋色ひいろ、充分であろ。今日はほとんど食べられておらんかったと広末ひろすえが言うておったぞ。灯可とうかの持参したゼリーは、なかなかの大きさであった故、それで良しとせい」
「……何も言ってませんが」

 叔母上の笑い含みの声。そんなに表情かおに出ていたか?俺も一応、そういうことには気をつけて生きてきた種類の人間なんだが?

「ほ、ほほほ。可愛いなるの食事が気になって仕方ないとみえる。まる見えじゃ」

 見えているのは叔母上だけでしょう?

「殿下。先ほど荘重むらしげより話を聞きました。成人なるひとさまの殿下へのお気持ち、素晴らしかったです。少し、羨ましい……」

 何だ?何の話だ?
 お前にも何か見えてんのか、灯可とうか。生き急ぐなよ。もっと子どもらしく……。

「私も、成人なるひとさまと好き同士なのは嬉しいのですが、決して殿下には敵わないのが、残念でなりません……」

 好き同士ってなんだ?説明しろ、荘重むらしげ
 いや、その前に灯可とうか、デコ出せ。
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