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第八章 郷に入っては郷に従え
19 味くらべ 成人
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「んふふ。黄色い。綺麗」
「なんだ。ご機嫌直ってんな」
素早い村次は、あっという間にふわふわのだし巻き玉子を二つ作ってお皿に並べた。のんびりの壱臣と同じものができあがるの、不思議ね。丁寧な矢渡は、慎重に卵液を流しては巻いていく。手順は同じでも、卵を巻くのは全然違う速さに見えるのに、同じ見た目になっていくのが本当に不思議だ。そう見えるだけで、本当はおんなじことしてるのかな。
最後に、安次嶺がやった。慣れた様子で卵を巻いていく。ちゃんと上手だった。
最後に形を整えて、綺麗なだし巻き玉子が六つ並んだ。
そうして机に並べただし巻き玉子の見た目は、どれもそんなに変わらない。形が一番綺麗なのは安次嶺のかな。でも、どれか一つ好きなのを選べって言われたら、俺は村次のを選ぶ。出汁が卵に綺麗に絡んで、きらきらして見えるところが好き。
お皿をそれぞれで変えてあるから、作るのを見てた俺には、誰のかすぐに分かる。見てなかった人には分からないから、公平に判断できるんだって。俺は、黙ってたらいいのかな?
机の周りに、皆集まった。安次嶺と矢渡は、机から少し離れた場所に椅子を置いて座っている。声を出さないように約束して、常陸丸が横に立った。八代が、緋色と俺に頭を下げる。
「失礼致します、緋色殿下、成人殿下。村次の品を見本として、安次嶺と矢渡、どちらがより近い品となっているのかを判定しようと考えておりますが、それでよろしいでしょうか?」
「俺のことは気にするな。成人に、全て任せる」
「はっ」
「いいです。村次のは、壱臣のとそっくりです」
「はい。ありがとうございます」
八代は指示を出して、皆に紙と鉛筆を配り始めた。それを見てると、俺の座る席の横に立った村次が、ありがとって小声で言う。
「なに?」
「壱臣さんのとそっくり、って言ってもらって嬉しい」
「ふふ。だって、そっくり」
「そっか。へへ」
村次、頑張ったねえ。頑張ってるんだね。
「まずは質問だ。見本がどれか分かるか?」
白っぽいお皿に置いてあるのが村次の。濃い茶色のお皿が安次嶺。濃い緑のお皿が矢渡だ。
「白と思う者は手を挙げろ」
半分より多い人が手を挙げた。俺は手を挙げずに見てる。答えを知ってるからね。
「茶色」
誰も手を挙げなかった。茶色いお皿のは、きらきらが無いんだ。一番黄色いし、形も綺麗だけど、出汁が足りないのかな。きらきらしてない。
「緑」
半分より少ないけど、手が挙がった。うん。白いお皿のとよく似てるからね。矢渡、頑張ったなあ。
がたっと立ち上がりかけた安次嶺は、一瞬で常陸丸に、片手で押さえられている。
「正解は白だ」
ざわり、と空気が動いた。あちこちで、小声で何か話している。
「静まれ。では、白の皿の品を食べて後に、茶色と緑の皿の味見をする。より、白の皿に近い品だと思われる方の皿の色を書いて、私の所へ持ってきてくれ」
端っこに座っている人が二人、ばたばたと動いて卵を切って配っていった。だし巻き玉子を小さく切ってから乗せるお皿も、どれか分かるように白と茶色と緑にしてある。すごい。
しばらく、静かに食べる音が響いた。
「なんだ。ご機嫌直ってんな」
素早い村次は、あっという間にふわふわのだし巻き玉子を二つ作ってお皿に並べた。のんびりの壱臣と同じものができあがるの、不思議ね。丁寧な矢渡は、慎重に卵液を流しては巻いていく。手順は同じでも、卵を巻くのは全然違う速さに見えるのに、同じ見た目になっていくのが本当に不思議だ。そう見えるだけで、本当はおんなじことしてるのかな。
最後に、安次嶺がやった。慣れた様子で卵を巻いていく。ちゃんと上手だった。
最後に形を整えて、綺麗なだし巻き玉子が六つ並んだ。
そうして机に並べただし巻き玉子の見た目は、どれもそんなに変わらない。形が一番綺麗なのは安次嶺のかな。でも、どれか一つ好きなのを選べって言われたら、俺は村次のを選ぶ。出汁が卵に綺麗に絡んで、きらきらして見えるところが好き。
お皿をそれぞれで変えてあるから、作るのを見てた俺には、誰のかすぐに分かる。見てなかった人には分からないから、公平に判断できるんだって。俺は、黙ってたらいいのかな?
机の周りに、皆集まった。安次嶺と矢渡は、机から少し離れた場所に椅子を置いて座っている。声を出さないように約束して、常陸丸が横に立った。八代が、緋色と俺に頭を下げる。
「失礼致します、緋色殿下、成人殿下。村次の品を見本として、安次嶺と矢渡、どちらがより近い品となっているのかを判定しようと考えておりますが、それでよろしいでしょうか?」
「俺のことは気にするな。成人に、全て任せる」
「はっ」
「いいです。村次のは、壱臣のとそっくりです」
「はい。ありがとうございます」
八代は指示を出して、皆に紙と鉛筆を配り始めた。それを見てると、俺の座る席の横に立った村次が、ありがとって小声で言う。
「なに?」
「壱臣さんのとそっくり、って言ってもらって嬉しい」
「ふふ。だって、そっくり」
「そっか。へへ」
村次、頑張ったねえ。頑張ってるんだね。
「まずは質問だ。見本がどれか分かるか?」
白っぽいお皿に置いてあるのが村次の。濃い茶色のお皿が安次嶺。濃い緑のお皿が矢渡だ。
「白と思う者は手を挙げろ」
半分より多い人が手を挙げた。俺は手を挙げずに見てる。答えを知ってるからね。
「茶色」
誰も手を挙げなかった。茶色いお皿のは、きらきらが無いんだ。一番黄色いし、形も綺麗だけど、出汁が足りないのかな。きらきらしてない。
「緑」
半分より少ないけど、手が挙がった。うん。白いお皿のとよく似てるからね。矢渡、頑張ったなあ。
がたっと立ち上がりかけた安次嶺は、一瞬で常陸丸に、片手で押さえられている。
「正解は白だ」
ざわり、と空気が動いた。あちこちで、小声で何か話している。
「静まれ。では、白の皿の品を食べて後に、茶色と緑の皿の味見をする。より、白の皿に近い品だと思われる方の皿の色を書いて、私の所へ持ってきてくれ」
端っこに座っている人が二人、ばたばたと動いて卵を切って配っていった。だし巻き玉子を小さく切ってから乗せるお皿も、どれか分かるように白と茶色と緑にしてある。すごい。
しばらく、静かに食べる音が響いた。
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