【本編完結】人形と皇子

かずえ

文字の大きさ
930 / 1,325
第八章 郷に入っては郷に従え

54 お出迎え  成人

しおりを挟む
 お城の門の前には、着物で正装をした九鬼くきの人たちがずらりと並んで待っていた。車を脇に停めて降りると、一斉に包拳礼をして跪く。
 ああ、着物が汚れちゃう。
 でも、誰も気にしていないみたいだった。包拳礼をして跪いた人たちは、その姿勢で俺たちが目の前まで歩くのを待っている。車から降りた緋色ひいろは、これが当たり前って顔で歩く。俺たちのななめ前に立って歩く常陸丸ひたちまる力丸りきまるも、当たり前って顔をしている。
 さっきまで、わあわあと聞こえていたお出迎えの人たちの声も止んで、俺たちの歩く音だけが聞こえていた。
 先頭でお出迎えをしてくれる人の側まで歩くと、常陸丸ひたちまる力丸りきまるが少し威圧を込めて、ぐるりと辺りを見渡した。それから二人で頷き合って、俺と緋色ひいろの斜め後ろに下がる。
 俺たちの後ろに、一緒に来た人たちが歩いてきて止まる気配がする。こちらも皆正装だから、きっと格好良いだろう。九鬼くきの人たちの揃った着物姿も格好良いけど、うちも今日は格好良い。
 あ、そうか。
 だから今日は、皆正装なのか。
 緋見呼ひみこさまは言っていた。緋色ひいろの格好良い姿を見せびらかしておいで、って。周りも格好良いと、緋色ひいろの格好良さはもっとすごく格好良くなる。すごい!
 ふふ。嬉しい。

「出迎え、ご苦労」

 緋色ひいろが言うと、一番前で跪いて頭を下げていた壱鷹いちたかが、そのまま口を開く。

「西国を預かります九鬼くき壱鷹いちたかが、緋色ひいろ殿下にご挨拶申し上げます。此度は、我が子、弐角にかくの婚儀にわざわざ足をお運びくださり、至極光栄にございます。婚儀のため、何かと忙しい様子をお見せすることになるかと思いますが、妃殿下共々お心安くお過ごしできるよう、心を砕く所存にございます。お寛ぎ頂ければ幸いです」
「ああ、世話になる。面を上げよ」

 緋色ひいろの言葉に、一斉に頭が上がった。うーん、すごい。皆、形は包拳礼のままだし、跪いたままだ。緋色ひいろが、もういいって言ってないからか。まだ、面を上げよ、だけだから。うーん。前にも思ったけど、難しいな。

「こちらへ寄せてもらうのは初めてではない。弐角にかくとは、気安い仲だ。何も心配しておらん。友を寿ことほげること、非常に嬉しく思う」

 少しだけ、ざわざわ……とした。今まで静かにしていたお出迎えの人たちが、思わず何かの声を出して、それがたくさんだった時の静かな音。

九鬼くき弐角にかくが、緋色ひいろ殿下にご挨拶申し上げます。此度は、わざわざ足をお運びくださり、ありがとうございます」

 弐角にかくは、一回そこで言葉を切って、緋色ひいろをしっかりと見てから、にっと笑った。いつもの顔だった。

緋色ひいろ殿下と成人なるひと殿下がお祝いに来てくださって、とても嬉しいです」
しおりを挟む
感想 2,500

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *不定期連載です。

嫌われ者の長男

りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

そばかす糸目はのんびりしたい

楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。 母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。 ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。 ユージンは、のんびりするのが好きだった。 いつでも、のんびりしたいと思っている。 でも何故か忙しい。 ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。 いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。 果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。 懐かれ体質が好きな方向けです。

【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。 BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑) 本編完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 きーちゃんと皆の動画をつくりました! もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。 インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら! 本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

処理中です...