933 / 1,325
第八章 郷に入っては郷に従え
57 捜索開始…… 弐角
しおりを挟む
「成人。お茶を飲んだら、着替えて少し休んだらどうですか?もう今日のお仕事は終わりましたよ」
「んー。うーん。んんー」
医師かな。医師が成人さまの様子をみとるんかな。よし、一人発見や。いや、成人さまもおるから、緋色殿下と、お二人の護衛二人もおるってことや。よしよし、五人発見。いやあ、緋色殿下、指定の部屋におってくれて良かった。ていうか、緋色殿下と成人さまが部屋におってくれたら、もうそれでようないか。ええ気がしてきたな……。
「緋色殿下、失礼します。弐角です」
「おう。入れ」
正座して、障子を引く。女中や小姓をつけて動くのが面倒くさいからと一応覚えた技能が、役に立った。護衛の丹波が、少し後ろで緊張しつつ、同じように膝をついている。
「どうした?」
戸を開けて、頭を下げている間に声がかかる。これはあれか?面倒くさいことしとらんと、とっとと入ってこい言うことか?
「ちょっとお聞きしたいことがありまして」
ほならええか、とさっさと頭を上げて室内に入る。丹波が戸惑いつつ付いてきた。
「あれ?才蔵は?」
殿下の脇から声が上がる。ああ。この子は才蔵の友人の。……相変わらず自由やな。外ではあんなにきりりとしとんのに、部屋に入るともう仕事しとんのかどうか分からへん状態になる。まあ、だからと言うて緩んどる訳やない。攻撃的な何かを感じたら、誰より素早く動くんやろな。知っとるよ。最速の力丸。いつも楽しそうな、成人さまのお友だち。
「今日はもう暇を取らせた。ここんとこ、ずっと気を張っとったんで」
「そうなんですね!」
ぱっと輝いた力丸の顔が、緋色殿下の方を向く。
「おう。行ってこい」
「やった!いってきます。成人、昼寝しとけよ」
「んー。んんー」
瞬きの間に、力丸が消えた。
はっ?
「…………。いや、あかーん!」
思わず大きい声が出た。緋色殿下の隣に座っている成人さまの肩が、びくっと揺れる。あ、いや、すんません……。
「どうした?」
緋色殿下はいつも通り。どうしたもこうしたもないで。また一人見失ったやん……。
「あのー、殿下?力丸は?」
「才蔵の所だろ?後で挨拶に行くって言ってたからな」
「なるほど?」
才蔵がどこにおるか、分かるんすか?そうっすか。何でやろな。なんで分かるんやろな?
「ああ。いい所にきた、弐角。しばらくこの部屋近辺の影を下げろ。成人が、気配を気にして寝られない」
「へ?」
「うちのに排除される前に下げろ」
「は、ははっ」
気配を探るのが苦手な俺にはこれっぽっちも分からへんけど、まあ影はおるやろな……。できれば見張っときたいんやけど、駄目かあ。
「聞こえたか。下がれ」
どこにおるかよう分からんから、適当に斜め上を向いて声を掛ける。
これでええかな。それにしても、排除って何?
「成人。ほら、こい」
「ん」
成人さまが素直に殿下の膝に乗った。部屋に、ほっとした空気が流れる。眠たいけど寝られへんかったんか。そりゃ、悪かった……。これは、夜も人を近寄らせんように手配せなあかんな。
「それで、用件はなんだ?」
あ。
俺は、がっくりと肩を落とす。
今、また一人見失ったとこです……。
「んー。うーん。んんー」
医師かな。医師が成人さまの様子をみとるんかな。よし、一人発見や。いや、成人さまもおるから、緋色殿下と、お二人の護衛二人もおるってことや。よしよし、五人発見。いやあ、緋色殿下、指定の部屋におってくれて良かった。ていうか、緋色殿下と成人さまが部屋におってくれたら、もうそれでようないか。ええ気がしてきたな……。
「緋色殿下、失礼します。弐角です」
「おう。入れ」
正座して、障子を引く。女中や小姓をつけて動くのが面倒くさいからと一応覚えた技能が、役に立った。護衛の丹波が、少し後ろで緊張しつつ、同じように膝をついている。
「どうした?」
戸を開けて、頭を下げている間に声がかかる。これはあれか?面倒くさいことしとらんと、とっとと入ってこい言うことか?
「ちょっとお聞きしたいことがありまして」
ほならええか、とさっさと頭を上げて室内に入る。丹波が戸惑いつつ付いてきた。
「あれ?才蔵は?」
殿下の脇から声が上がる。ああ。この子は才蔵の友人の。……相変わらず自由やな。外ではあんなにきりりとしとんのに、部屋に入るともう仕事しとんのかどうか分からへん状態になる。まあ、だからと言うて緩んどる訳やない。攻撃的な何かを感じたら、誰より素早く動くんやろな。知っとるよ。最速の力丸。いつも楽しそうな、成人さまのお友だち。
「今日はもう暇を取らせた。ここんとこ、ずっと気を張っとったんで」
「そうなんですね!」
ぱっと輝いた力丸の顔が、緋色殿下の方を向く。
「おう。行ってこい」
「やった!いってきます。成人、昼寝しとけよ」
「んー。んんー」
瞬きの間に、力丸が消えた。
はっ?
「…………。いや、あかーん!」
思わず大きい声が出た。緋色殿下の隣に座っている成人さまの肩が、びくっと揺れる。あ、いや、すんません……。
「どうした?」
緋色殿下はいつも通り。どうしたもこうしたもないで。また一人見失ったやん……。
「あのー、殿下?力丸は?」
「才蔵の所だろ?後で挨拶に行くって言ってたからな」
「なるほど?」
才蔵がどこにおるか、分かるんすか?そうっすか。何でやろな。なんで分かるんやろな?
「ああ。いい所にきた、弐角。しばらくこの部屋近辺の影を下げろ。成人が、気配を気にして寝られない」
「へ?」
「うちのに排除される前に下げろ」
「は、ははっ」
気配を探るのが苦手な俺にはこれっぽっちも分からへんけど、まあ影はおるやろな……。できれば見張っときたいんやけど、駄目かあ。
「聞こえたか。下がれ」
どこにおるかよう分からんから、適当に斜め上を向いて声を掛ける。
これでええかな。それにしても、排除って何?
「成人。ほら、こい」
「ん」
成人さまが素直に殿下の膝に乗った。部屋に、ほっとした空気が流れる。眠たいけど寝られへんかったんか。そりゃ、悪かった……。これは、夜も人を近寄らせんように手配せなあかんな。
「それで、用件はなんだ?」
あ。
俺は、がっくりと肩を落とす。
今、また一人見失ったとこです……。
1,342
あなたにおすすめの小説
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*不定期連載です。
嫌われ者の長男
りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....
【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺
福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。
目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。
でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい…
……あれ…?
…やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ…
前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。
1万2000字前後です。
攻めのキャラがブレるし若干変態です。
無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形)
おまけ完結済み
そばかす糸目はのんびりしたい
楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。
母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。
ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。
ユージンは、のんびりするのが好きだった。
いつでも、のんびりしたいと思っている。
でも何故か忙しい。
ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。
いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。
果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。
懐かれ体質が好きな方向けです。
【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
* ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。
BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
本編完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
きーちゃんと皆の動画をつくりました!
もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます
プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら!
本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる