【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第八章 郷に入っては郷に従え

131 新しい家族  成人

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 忘れてた。大変、大変。
 急いで階段を降りていると、周りでいくつか心配している気配がした。
 あ、大丈夫だよ。俺、ちゃんと手すり掴んでるから。一緒に九鬼のお城に行ってた人は、もうお休みしていいから気にしないでね。
 心配かけてごめん。でも、着替えてたら遅くなったから、急がないといけない。
 俺と緋色ひいろの夜ご飯いらないって、壱臣いちおみに言わなくちゃいけないの忘れてたんだ。着替えてたら遅くなってしまった。外で正装してるのは格好良いけど、家の中で正装って動きにくいばかりだ。座っても寝転がっても緋色ひいろに抱きついてもシワになる。夜にはお城の晩餐に行くからまた正装をしなくちゃいけないんだけど、おうちに帰ってきたら、少しだけでもいつもの服に着替えたくなってしまった。おうちにいる時はくまの服がいいんだよなあ。柔らかくって楽だし、転がっても走っても緋色ひいろに抱きついてもシワにならない。緋色ひいろも、くっ付いたら気持ちいい楽な服に着替えてたから一緒だ。くまの服は、緋色ひいろは持ってないからお揃いじゃないんだけど。祈里いのり緋色ひいろのくまも作ってくれないかな。そしたらお揃いで着れるのになあ。
 緋色ひいろは、このままもう、城の晩餐行きたくねーって言いながら、ソファに転がっていた。俺も、もう一回着替えるの面倒くさいなーってちょっと思っちゃった。でも、父さまに約束したからね。仕方ない。
 そうして降りた厨房には、三人の人がいた。

「ああ、成人なるひとくん。おかえりなさい」
「ただいま、壱臣いちおみ

 さっきも玄関で、離宮にいた人で手が空いてた人は皆でお出迎えしてくれたけど、おかえりとただいまは何回やってもいい。
 ふふっと笑い合うと、壱臣いちおみの横にいた人が慌てて包拳礼をするのが見えた。あ、新しく離宮うちにきた人だ。

「あ、おうちでは包拳礼しなくていいよ。俺も緋色ひいろもいらない」

 おうちで会う度に包拳礼してたら、お仕事が進まないからね。

「え……」
「源さん。そういう決まりなんよ」
「は?は、いや、しかし」

 源さんと呼ばれた人は、ぽかんとして壱臣いちおみを見た。新しくきたのにもう仲良し?あ、そうか。壱臣いちおみの料理の師匠を連れて帰るって言ってたっけ。師匠と弟子は仲良しだもんね。広末ひろすえ村次むらつぐとか、壱臣いちおみ村次むらつぐとか、じいじと常陸丸ひたちまるとか。じいやと半助はあんまり仲良くないけど。あれは師匠と弟子じゃないのかな?

「あ、そや。成人なるひとくん。この人、源さん。あ、連れてきてくれたから知っとるか。あんな、うちのな」

 壱臣いちおみが、くふと笑う。知ってるよ、師匠でしょ?

「うちの家族」
「え?」

 あれ?家族?師匠じゃなく?あ、でも、師匠も、一緒に暮らしてる好きな人なら家族か。師匠で家族ね。
 これから一緒に暮らしたら、俺とも家族になるね。

「よろしくね、源さん」

 壱臣いちおみの好きな人だから、きっと俺も源さんを好きになるからさ。だからもう、家族みたいなものだね。
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