【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第九章 礼儀を知る人知らない人

24 小さなお客様  成人

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かめ、こんにちは、は?」

 早速、鶴丸つるまる松吉まつきちを食堂に案内した。うちで仕事をしていた人たちが少しずつ食堂に集まってきて、二人と挨拶を交わしている。車から抱っこで降ろされた亀吉かめきちが目を覚まして、松吉まつきちの腕の中で、横にいる俺をじっと見ていた。
 
「はじめまして、亀吉かめきち。こんにちは」

 俺も亀吉かめきちをじっと見ながら言うと、ごそと身じろぎする。む、と口を閉じてこっちを見てるのが可愛い。松吉まつきちとよく似てて、きりりとした美人さんだった。あ、男の子は美人って言わないんだっけ?うーん。でも、鶴丸つるまるも綺麗だし、子どもってのは親に似るのだとしたら、どちらに似ても美人にしかならない気がする。だからまあ、亀吉かめきちは美人さんだ。
 松吉まつきちが下に下ろすと亀吉かめきちは、俺にぺこりと頭を下げてから両手を上げて包拳礼をした。え?すごい。小さいのに、すごい。

「ええっと。亀吉かめきち、すごい。上手!」

 褒めたら、亀吉かめきちの顔があひゃと緩む。包拳礼の手を解いて松吉まつきちを振り返った。うわあ、可愛い。背中で白うさぎの帽子が揺れている。うさぎの服、買うって言ってたね。よく似合ってる。俺は、今日はお仕事してたからお仕事の服だけど、明日はくまを着ようかな。くまの服。可愛いって言われるやつ。本当はね。本当は緋色ひいろとお揃いの服が格好良くて好きなんだけど。くまの服を着ると末良すえよしが喜んでくれるんだよなあ。末良すえよしが、なりゅしゃま、くま。かーいーって言ってくれる。亀吉かめきちも気に入ってくれるかな。気に入ってくれそうな気がする。明日は末良すえよしも来るから、くまを着よう。うん、そうしよう。

かめ、ようできたなあ。すごい」
亀吉かめきち、ほんまにすごい」

 松吉まつきちにも鶴丸つるまるにも褒められて、ふんふんと亀吉かめきちは頷いた。
 その後はもうにこにこで、皆にぺこり、ぺこりと頭を下げていた。たくさん褒められて、たまに手を持ち上げて包拳礼をしようとして、それはいいって止められて首を傾げていた。今日は、俺と緋色ひいろにだけするんだけど、難しいよね。分かる。

「あ、緋色ひいろ
「よく来たな」
緋色ひいろ殿下。この度はお招き頂き、ありがとうございます」

 鶴丸つるまる松吉まつきちが、ぴしりと揃った包拳礼をして頭を下げた。最初だけ、ちゃんと礼を交わす。これも大事なこと。
 亀吉かめきちがびくっと緋色ひいろを見上げて固まった。
 今だよ、亀吉かめきち。包拳礼は今するんだよ。
 俺が少しかがんで一生懸命亀吉かめきちを見てると、きょろと視線を動かした亀吉かめきちと目が合った。俺が右手と半分の左手を少し持ち上げて見せると、あ、と言ってからぺこりと頭を下げて両手を持ち上げる。あ、頭はまず下げるんだ。なるほど?
 
「できた! 亀吉かめきち、えらい! すごい!」

 亀吉かめきちは、真面目な顔でふんふんと頷いて俺に抱き着いた。

「できた」
「うん、できたね」

 あれ? 亀吉かめきちは、お話も上手だ!
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