【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第九章 礼儀を知る人知らない人

31 上手なご挨拶  成人

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 亀吉かめきちは俺にしがみついたまま、ぺこりと頭を下げた。えらい!

「おお。頭下げた。すごい。こんにちは!」

 見可みかが嬉しそうに頭を下げる。動きが早くて大きいから、びっくりした亀吉かめきちは俺の裏に隠れてしまった。

「小さいのにすごい。兄上、見た? 可愛くて賢い」

 全然気にしていない見可みかが、灯可とうかを振り返る。

見可みか。小さい子の前ではもう少しゆっくり話してゆっくり動きなさい。ほら、怖がってる」
「え?」
「大きい人が目の前ですごい勢いで動いたら怖いだろう?」
「うーん? 怖い?」

 見可みかは怖くないのかな。ま、そういう人もいる。

「怖いものなんだ」
「そう?」
「そう」

 灯可とうかは、急に動いたりしないもんね。だから見可みかは、怖い思いをした事がないのかもしれない。灯可とうかは、いいお兄ちゃんだから。

「こんにちは。私は一条灯可とうかと言います」

 灯可とうかは、少しかがんで亀吉かめきちにご挨拶した。ゆっくり喋って、ゆっくり頭を下げる。やっぱり上手だなあ。亀吉かめきちが、また俺の後ろから横に出てきて頭を下げた。

「ご挨拶が上手ですね。お名前は?」
「かめきち」

 灯可とうかが、ちょっとびっくりしてる。亀吉かめきち、お話上手でしょ? ふふ。

「かめきちさん。お話も上手なんですね」

 うんうんと亀吉かめきちが頷くと、灯可とうかがにこにこ顔になった。

「はじめまして、こんにちは。息子の亀吉かめきちが粗相を致しておりませんでしょうか?父の各務かがみ鶴丸つるまるです」
「はじめまして、こんにちは。母の各務かがみ松吉まつきちです」

 あ、また灯可とうかがきりりと顔を引き締めた。

各務かがみさま、というと、西賀さいかの領主家の?」
「ええ、はい」

 灯可とうか、知ってるの? すごい。

「失礼致しました。こちらは、一条灯可と、弟の七条見可です。よろしくお願い致します」

 灯可とうかが、見可みかの頭を押さえて一緒に下げながら挨拶をした。

「ご丁寧な挨拶、ありがとうございます。しっかりした若様やなあ。一条さんは安泰や。末永うよろしくお願いいたします」
「嬉しいお言葉、有り難く頂戴致します。こちらこそ、よろしくお願い致します」

 灯可とうかって凄いな?

「俺! 俺は? 七条もあんたい?」
「ん? 七条?」
「俺、七条見可です」
「おや?」
「あ、同じ親から生まれた兄弟ですが、私は一条、弟は七条を受け継ぐ予定です」
「ああ、なるほど」

 鶴丸つるまるがにっこり笑う。

「もちろん、ご挨拶の上手な七条さまも安泰や」
「へへ。やった。ありがとう」
「見可!」

 灯可とうかが、見可みかをぐいっと自分の後ろに下がらせた。
 鶴丸つるまる松吉まつきちは、優しい顔でくすくす笑っている。

「兄上。あんたいって何?」
「見可!しっ」

 見可みか灯可とうかに聞いて、灯可とうかが口の前に指を立てて当てた。大丈夫だよ、灯可とうか見可みか、賢くなったよ。ちゃんと、七条見可です、って言ってたし、頭下げたし。
 それでさ。俺もあんたいの意味、知りたいんだけど、今聞いてもいいかな?

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