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第九章 礼儀を知る人知らない人
57 客商売の達人? 成人
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張り切って歩く亀吉と手を繋いで、駄菓子屋まで歩いた。亀吉に合わせて歩くのは大変だった。危なくないように気にして、速さも合わせて。なかなか疲れる。いつも俺に合わせて歩いてくれてる緋色や半助やじいやは、もしかして大変なのかな、と気付いてしまった。俺は頭の手術をしてから、歩くのが遅くなってる。もっと、すたすた歩けるように少し気にしてみることにしよう。
合わせてくれてたことは、すごく嬉しかった。
源さんは、どうせ客は来ないからと、常陸丸と話しながら俺たちについてきた。
「つい最近、壱臣さんの親父さんを西国から連れてきたんだ。その人の呼び名が、源さんだったんだよ」
「ははあ。俺と一緒ですね」
「そうそれ。金物屋の呼び名と一緒だって成人が気付いた。その源さんの、呼び名でないちゃんとした名前が源之進だって聞いて、金物屋の名前も知りたくなったんじゃねえか」
「はあ、なるほど。ここに来る前に八百屋にも名前を聞いてきたから、八百屋の名前も例えで出たんすね」
「まあ、そういうこった」
「壱臣さんの親父さんかあ。会ってみたいっすね。同じ呼び名ってんなら尚更、親近感が湧きますねえ」
「親近感、ねえ? まあ、あまり壱臣さんに似た感じではないから、そんなに話しやすい雰囲気はねえけど。まあ、いいか。料理人だから、そのうち店に買い物にくるんじゃねえか」
「お! やっぱり料理人でしたか。そうじゃねえかと思ってました」
「そうなのか」
「壱臣さんはうちの店で、懐かしそうな顔で色んな道具を見るんです。育った家にこういった、専門の人が使うような道具が置いてあったんじゃねえかなって。んで、そういう懐かしそうな顔する人は大抵、もうその場所には帰れねえような事情があったりするもんなんですよ」
「へえ……。金物屋、お前、客のこと、意外とよく見てるんだな」
「当たり前でしょ。こちとら、生まれた時からあの店継ぐことが決まってた客商売の達人っすよ。俺のこと、なんだと思ってるんすか」
「うーん。いや、うん。すごいな?」
「何で疑問形なんすか。そこは素直に褒めてくださいよ。まあ、いいっすけど。とりあえず、壱臣さんが帰れなくても、親父さんが来てくれたんなら良かったっすねえ」
「そうだな」
「あ」
「なんだ」
「半助さんと親父さんって大丈夫っすか」
「大丈夫だと思うか?」
「ははは。いやあ、大変っすね。旦那も姫様の親とかと相性悪そ……」
ぱしん、と常陸丸が源さんの頭を軽く叩いた。
「余計なお世話だ」
「半助と源さんは仲良しだよ」
「それはないだろ」
俺が口を挟むと、常陸丸がすぐに言った。
んーん。本当に、すごく気が合ってる。壱臣のこと考える時の二人は、息がぴったり。
「なる坊にはまだ難しいかなー。色々あるんだよ、大人には」
源さんも、二人に会ったら分かるよ。本当に、喋らなくても分かりあってる時があるんだから。
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