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第九章 礼儀を知る人知らない人
65 時計屋 成人
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カッチコッチカッチコッチ。パッポーパッポー。ボーン……ボーン……。
「お、おお……」
デパートの中にある時計屋さん。壁一面に掛けてある色んな時計が、色んな音を立てている。賑やかだけど、うるさくはない。時計の音に人の気配が消されるようで、感覚が狂いそうな怖さがある。なんだか不思議な所に迷い込んだ、みたいな。
時計屋さんは初めて来た。デパートはあんまり来ないし、買い物する店にしか行かないから来たことなかったよ。いつも行くのは、文房具の店と、櫛とかの雑貨や手拭いとかが置いてある店。たまに服屋。デパートへ来る時はだいたい緋色も一緒で、緋色はいつも、皆への誕生日プレゼントは本を買える図書券を買うだけだから本屋さんへ行くだけ。緋色は、用事が済んだらすぐ帰る人なので、デパートの中を商店街みたいに歩いたことがなかった。
「電池が切れたんだな。電池交換だけで済むから、すぐだよ。待つかい?」
「お願いします」
俺が店内を見てる間に、水瀬はちゃっちゃと店主に持ってきた腕時計を渡している。早い。慌てて側に寄った。店主が机代わりにしているガラスケースの中には、小さい時計が色々並んでいた。腕に巻ける物だけじゃなくて、首からぶら下げる鎖がついたものや、鞄にぶら下げるキーホルダーみたいなものもある。時計は丸いと思っていたけれど、四角いのもあった。どれも、俺の手持ちのお金では買えない値段のものばかりだ。時計って高いんだなー。
店主が、水瀬の時計の裏面の小さなねじを器用に外していくのをじっと見る。蓋を外すと中にたくさんの小さな部品。高いはずだ。電池もとても小さい。あれでずっと動いてるんだからすごい。
「そちらの腕の時計も、同じような時期に購入されたものだな」
「ひと月後です」
店主は、あっという間に水瀬の時計の電池を新しいのに替えて、時間を合わせると言った。
「ついでに電池を替えとくか?」
「お願いします」
水瀬は、腕から政巳の時計を外して店主に渡した。
「どちらも、綺麗に使ってくれてて嬉しいよ」
「大切なものですから」
二つ分の電池交換してもらった代金を払って店を出る。時計屋、楽しかった。買えそうにないけど。
「また、一緒に来てもいい?」
「また……」
直った自分の時計を腕に巻いて、政巳の時計が入った袋を手にした水瀬がぽつりと言う。
「そうですね。また来ますね」
電池が切れたら、電池を替えに来るよね。その時はまた、今日みたいに一緒に来ていいかな? 時計屋、用事がないと入りにくいし。
「そうですね。また来ましょう」
先日の代休を取れよって緋色に言われた水瀬が、とりあえず半日休みますといってやってきたデパート。楽しい!
「お、おお……」
デパートの中にある時計屋さん。壁一面に掛けてある色んな時計が、色んな音を立てている。賑やかだけど、うるさくはない。時計の音に人の気配が消されるようで、感覚が狂いそうな怖さがある。なんだか不思議な所に迷い込んだ、みたいな。
時計屋さんは初めて来た。デパートはあんまり来ないし、買い物する店にしか行かないから来たことなかったよ。いつも行くのは、文房具の店と、櫛とかの雑貨や手拭いとかが置いてある店。たまに服屋。デパートへ来る時はだいたい緋色も一緒で、緋色はいつも、皆への誕生日プレゼントは本を買える図書券を買うだけだから本屋さんへ行くだけ。緋色は、用事が済んだらすぐ帰る人なので、デパートの中を商店街みたいに歩いたことがなかった。
「電池が切れたんだな。電池交換だけで済むから、すぐだよ。待つかい?」
「お願いします」
俺が店内を見てる間に、水瀬はちゃっちゃと店主に持ってきた腕時計を渡している。早い。慌てて側に寄った。店主が机代わりにしているガラスケースの中には、小さい時計が色々並んでいた。腕に巻ける物だけじゃなくて、首からぶら下げる鎖がついたものや、鞄にぶら下げるキーホルダーみたいなものもある。時計は丸いと思っていたけれど、四角いのもあった。どれも、俺の手持ちのお金では買えない値段のものばかりだ。時計って高いんだなー。
店主が、水瀬の時計の裏面の小さなねじを器用に外していくのをじっと見る。蓋を外すと中にたくさんの小さな部品。高いはずだ。電池もとても小さい。あれでずっと動いてるんだからすごい。
「そちらの腕の時計も、同じような時期に購入されたものだな」
「ひと月後です」
店主は、あっという間に水瀬の時計の電池を新しいのに替えて、時間を合わせると言った。
「ついでに電池を替えとくか?」
「お願いします」
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「また……」
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「そうですね。また来ますね」
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